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第1回 オリジナルコンテンツをつくろう!

はじめまして。日本印刷株式会社と申します。
弊社は1969年創立の、東池袋にオフィスを構える総合印刷会社です。

近年、デジタル化にともない紙の需要は減少する一方で、
印刷業は非常に厳しい時代を迎えています。
団体様を中心とした数多くのお客様の印刷物を制作している弊社では、
コロナウイルスが猛威を振るい始めた頃に映像部署を立ち上げ、
お客様のオンラインのイベントの映像配信をお手伝いするなど、
新しい挑戦を始めました。

同じ頃に誕生したのが、「出版・メディア事業部」という、自分たちのメディアをつくる部署です。印刷会社オリジナルのコンテンツをつくって発表していこう、というこのプロジェクト。この部署が本連載のテーマとなります。

印刷業は基本的に受注産業なので、お客様が印刷物を作らなくなってしまうと、どれだけ素晴らしい技術や設備が揃っていても身動きが取れなくなってしまいます。
自分たちで商品をつくる力を、今こそ身に付けるべきだ! 
ということでメディアを立ちげることにしたのです。
立ち上がった当初はなにも分からない状況でしたが、
手探りで少しずつ進んでいき、2024年、ようやく書籍を世に送り出すことができそうです。

このnoteでは、「soyogo」というウェブメディアがどのように誕生し、出版レーベル「soyogo books」がどんな本を出版するのかを、ご紹介していきたいと思います。

ニッチをねらえ!

このプロジェクト誕生のきっかけは、弊社社長の何気ないひとことからでした。
当時、『アンサングシンデレラ  病院薬剤師 葵みどり』という漫画原作のドラマがスタートしており、弊社のお客様である日本病院薬剤師協会様のお仕事の関係で、社内にこのドラマのポスターが置いてあったのです。

「せっかくいろんなお客様がいるのに、こういう企画をうちは作れないのか?」

とある日の会議で社長がこんな発言をし、そのときはみんな苦笑いしてその場は終わってしまったのですが、ちょっと本気でそんなことに挑んでみるのも面白いのでは、と筆者は考えてみたのです。

とはいえ、何の実績もない印刷会社がエンタメ作品をいきなり作れるわけがありません。
まず、根幹となるコンセプトが必要です。
いろいろと紆余曲折があったのですが、あまり本筋と関係ないので割愛するとして、たどりついたのが「仕事・学問・研究をたのしむ」というキーワードでした。

弊社のお客様は主に社団法人・財団法人といった団体様で、
医学・工学から教育・福祉等々、業界の範囲は本当に幅広く、
弊社ではさまざまな専門誌や学会の論文誌の印刷を手がけています。

このような雑誌は会員のみに配布されることが多く、
一般の人の目に触れることはあまりありません。
せっかく面白い情報があふれているのに、
このまま一部の業界のみに流通させるのももったいない。

少しとっつきにくい分野でも、エッセイや小説といった器に移し替えれば、一般の人々も楽しめるコンテンツに出来るのではないか、と考えて、
あえてニッチな分野をテーマにしてみることにしました。

いわゆる「お仕事モノ」は、小説や漫画、ドラマの定番のテーマでもありますし、印刷会社が独自のコンテンツを作るのも面白いのでは、と考えたのです。

そこでできたコピーが「仕事・学問・研究をたのしむ」です。
ちょっとお堅い雰囲気ですが、日本印刷という会社が手がける業務内容には非常に親和性のあるテーマです。
コンテンツはライトノベルでも純文学でも、エッセイでも漫画でも、
そして、活字に限らず、音声でも動画でも、
どんな形でもいいから面白い作品をつくってみたい、
という気持ちでこのコピーを掲げました。
プロの作家さんや学者さんにご協力いただきながら、
専門分野をテーマとした面白い作品を作れる気がしたのです。

まずは、さまざまなジャンルの読み物がいつでも無料で読むことのできる、
雑誌のようなウェブサイトを作りたい、とこのときはぼんやりと
思い描いていました。
そこで連載される作品たちが、やがて書籍となって販売される、
あるいは音声や動画を使ったコンテンツへと変化していく、
そんな展開を想像しながら、この企画が走り始めたのです。

ウェブサイト公開の時点で集まっていただいたのは、
写真家の石塚元太良さん、翻訳家の大久保ゆうさん、
作家の喜多喜久さん、高山羽根子さん、西崎憲さん、二宮敦人さん、乗代雄介さん、星野智幸さん、
画家で絵本作家の堀川理万子さん。

イラストでご参加いただいたのは、
大前壽生さん、高 妍(Gao Yan/ガオ イェン)さん、塩川いづみさん、
西村ツチカさん、樋上公実子さん、もとき理川さん。

その後も、言語学者の川原繁人さん、YouTube番組「ゆる民俗学ラジオ」の黒川晝車さん、
イラストレーターの飯田研人さん、ryukuさん、
といった、素晴らしい方々にご参加いただくことができました。
何の実績もない印刷会社の新企画にご協力いただけて、
本当に心から感謝しております。

サイトのもうひとつのコピーとして、
「書を読んで、まちへ出よう」という一文を入れました。
これはもちろん、寺山修司の「書を捨てよ、町へ出よう」のもじりですが、
この企画を考えていた当時、メタバースの話題で世の中がかなり盛り上がっていたことも関係しています。
コロナもあいまってオンラインで何でもやってしまおう、という考えがかなり広まっていた時期ですが、あえて「もっと外に出よう!」という呼びかけをしてみたわけです。
仕事も学問も研究も、結局は人と人とのつながりで成立しており、
社会と接続することでその魅力が最大限に発揮されるはずだからです。

2024年現在、サイトの連載はだいたいひと段落しており、
書籍化に向けて本格的に動き始めている状況です。

これまでのエピソードや、これからつくる書籍について、
いろいろとご紹介しますので、よろしくお願い申し上げます!

(第1回 おわり)

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