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北陸旅行続き。能登半島のオーベルジュに。

 一晩開けた翌日はこの旅行のメイン的ポジションである、能登半島は和倉温泉からほど近いオーベルジュ、Villa della Pace(ヴィラ・デラ・パーチェ)

http://villadellapace-nanao.com

に向かいます。とはいえチェックイン4時と遅いのでどこかで時間を潰さなければならないのですが、金沢はもう何度も来ていて特に観光しようという気にならないのと、和倉温泉の近辺もあまり魅力的な場所も見当たらなかったこと、さらに当日きれいに晴れたということもあり、ルート的にはやや遠回りとなるものの、能登半島の富山サイドの風光明媚な海岸線を上がって行くことに。

 金沢駅の充実したお土産街で、弁当を物色したところ、昨日お寿司やさんに向かう際に前を通った立派な料亭、大友楼のお弁当部門のそれが美味しそうだったのでそちらを仕込み、まずは電車で40分ほど富山の方に戻り高岡に行き、そこから能登半島を氷見まで行く氷見線に乗り換えて、雨晴駅まで移動。


 途中からまじで海すれすれに轢かれた線路を走る車内からの風景が既に絶景でした。

 雨晴駅についてからは海沿いの道路を道の駅まで10分程歩き、そこの3階の展望台的になっているスペースでお昼を。

 食後は次の電車まで1時間ちょいくらいの間があったので雨晴海岸を散歩。水が澄んだ浜辺を歩きつつ奇岩と水平線越しに見える立山連峰の姿は北陸の冬にあって、空が澄んだわずかなチャンスに強力な望遠レンズを用いて写した観光ポスターに見られるようなくっきりとしたそれには遠く及ばないぼんやりとしたものであるとはいえ、やはり見惚れるような景色であり、10月ながらも夏に戻ったような陽射しに照りつけられながらも小一時間ばかりの散歩を存分に楽しみました。

 雨晴で再び電車に乗り、寒鰤で有名な氷見に移動、駅前から魚市場近くのお土産店街の氷見番屋街にバスで移動、水産物店がいくつも並ぶ中で再び干物などの海産物を求めて東京に送った後、和倉温泉行きの高速バスに乗って七尾まで移動します。ちなみにこの高速バスも最初15分くらいは海辺の道を走り、気持ちのいい景色が楽しめたのは予想外のボーナスでした。

 高速バスには40分程乗って七尾駅前で下車、駅前ロータリーでタクシーを拾って移動。途中からは海辺の道を走ってVilla Della Pace /ヴィラ・デラ・パーチェに移動します。七尾駅からはタクシーで約40分くらい、小型車で五千円くらいの距離でしたが、これは若干イレギュラーな行き方であり、公式だと金沢から通常の公共交通機関を使ったアクセスであれば特急も停車する和倉温泉駅で下車してタクシーを拾う(七尾駅からよりかはやや近くなるので小型車なら4000円切るくらいか?)、あるいは第三セクターののと鉄道に乗り換えて笠師保駅で下車、そこから徒歩15分くらいで行くのがサジェストされていますね。なお笠師保駅は駅前に一軒食堂があるだけの無人駅なのでここからタクシーを拾うという手が使えず、またローカルの第三セクター線ということで本数が少なく、21年10月の時刻表だとチェックインの時間に頃合いな電車かなかったなど使いやすくはなさそう。

 こちらオーベルジュということで宿泊も可能なのですが、宿泊施設は一部屋のみとなっており、どちらかといえばモダン・イタリアン・レストランとしての営業が主になっており、そちらは2021年のミシュラン・ガイド北陸版で一つ星を獲得しています。
 なお、チェックインが4時と遅いのはレストランでランチ営業をしている上、メニューが夜と共通のフルコース一本である関係でしょうか。

 駐車場にタクシーが着くとレストランからソムリエの方が出てこられて、手前にある宿泊棟に案内され、部屋でチェックイン。といっても鍵を渡され、宿帳用紙を夕食時に記入したものを持って来てくださいと渡されるのみ。後、なにかドリンクはいかがでしょうか?と聞かれ、暑い中の移動でいい感じに喉が渇いていたのでおすすめのシードルのハーフボトルを注文。客室は二階建てのこちらの一階部を使用しており、二階はオーナーご夫妻の住居とのことでしたが、入り口から動線は完全に分離されており、滞在の間は気配すら感じることもなかったです。
 なお注文したシードルを運び込むのと、レストランでの食事を別にすると滞在中、チェックアウトまでの間で従業員の方と接したのはこの時だけでしたので、完全に放置型の宿ですね。一日一組、レストラン兼業で従業員の方はシェフ、マダム、ソムリエの三名のみなので、それ以外にやりようはないでしょうし、またそれで全く問題はなかったです。

  部屋は55平方メートルくらいかな?センスある家具を配しつつ、シンプルで豪華さはないけれどきれいに整えられて居心地のいい空間でした。多少室内に無駄スペースが目立つかなとも思いましたが、これはより多人数にも対応するための余白的なものでしょうから仕方がないところですね。まあ基本的にはワンルーム構造なので何人であれど気がおけない間柄でないと使いづらいでしょうし、外泊さきでも一人になれる空間を必要とする人には不向きな宿であるかもしれません。
 ベッドフレームも移動の便も考慮したような簡素なものでしたが、載せてあるマットレスと寝具は充分に寝心地の良いもので実用上の不満は全くなし。写真はありませんが、バスルームも広めで熱がこもらないスペースに大きめのバスタブに固定式のレインシャワーと手持ちも可能な通常のシャワーの二種があり、心地よくも使い勝手がいいものでした。なおアメニティ類はオーガニックの意識高そうなそれっぽいものでしたが、そっち方面は全く疎いのでものについてはどうもこうも言えずです。

 窓越しに海を見つつシードルで喉を潤した後は夕食まで多少の間があるので宿の前から海岸沿いの散歩に出ます。

 かつては海水浴場だったという海は湾となっている地形の深く内側ということもあり湖かと思うくらいに穏やか。波打ち際近くまで膝くらいまで伸びた植物が生えていますが、海辺までのルートが確保されているほか、コンクリの防波堤?の上を伝って歩けるので散歩には苦労せず。天気のいい日だったこともあり、とくにこれといったものはない浜辺を岬の先にある神社や原生林を覗きなから夕暮れに向けて小一時間くらいのんびりと散歩するのは日頃から密集した都会に住み馴染んだ身としても羽を伸ばせるような落ち着きと共にとても心地がよいものでした。そして散歩を終え、いい感じに日が落ちてきた中レストランに移動します。なお、夕食スタートは宿泊でもレストランのみの利用でも18時で固定なので、来るまでの食事量はそれを計算に入れておいた方がよさそう。

 モダン系レストランにはわりとあるようにメニューは材料が並べられるのみで、どういう調理法になるかはお楽しみという形式。食材もシェフが近隣の原始林で採取してくる山菜を筆頭に徹底して能登のものにこだわります。曰く料理する自分の表現ではなく能登の土地をいかにダイレクトに皿にするか(大意)とのこと。このアプローチが調理技法には技巧を凝らしつつ素材の味をストレートに表現しやすいシンプルさが残るイタリアンの特性と結びついて、この日のこの場所でなければならないコースに結実しているのはお見事で、なるほど旅して訪れたいレストランであり宿ですね。
 口開けはまずそばがき、とはいえ季節を迎えたきのこをたっぷりと使ったスープが際立つイントロとして引き込み、そこからやはりモダンらしい装飾をこらしたアミューズ、アオリイカにラルド(豚の背脂)を和えてねっとり感と味わいを強化した前菜、さらには香ばしく焼き上げたマコモダケにカポナータを添えた皿が続きます。ここまでは地の豊かな素材を効果的に活かした直球の皿が続いて、イタリアン?となりつつもその素直さがとにかく美味しい。
 以降はようやく季節に入ったという松茸をふんだんに使ったロング・パスタ、これまで淡白寄りの素材が多かった中にようやくの動物性の濃厚さを鮮烈に叩きこむ熊と栗のラザーニャ、極端なまでに多種の野菜とエディブルフラワーを用い、瑞々しさと食感の重なりを味わせる”畑”と題されたサラダが続き、メインは黒ムツと茄子を合わせた皿と、自然豚にやはり季節のキノコ類を添えた皿のダブルで。まあ正直豚はいい豚とはいえどこで頂いても豚かなとは思いましたが、それも含めて本日の素材からなるコース、最初に書きましたように自分で採取や自家栽培も含めて能登のものに徹した構成で、いわゆる高級食材もあまり使われない中、この日、この場所で頂けるものということをはっきりとさせたもので、味、プレゼンテーション双方共に見事でした。ちなみにインスタでタグを見ると、”畑”のようにレギュラー(とはいえ内容は日々季節で変わるのでしょうが)メニューはともかく、オープニングのそばがきのスープやパスタの具などは数日違いでも結構入れ替わっていて、一期一会のコースなのだなと。

 一晩明けて朝からまたもや海辺の散歩をした後に朝食に向かいます。

 明るい中で見るレストランの雰囲気はこんな感じ。窓越しに広がる海景色を見ながらの朝食は格別ですね。朝食はオーソドックスかつシンプル寄りながらも素材の良さをうかがわせる味わい深くも美味しいものでした。

 朝食後は飽きもせずに三度の散歩などしてから10時にチェックアウト。
 食事だけであれば昼夜共通のコース一本で、税込13,200- + サービス料10%。ドリンクは別でボトルからグラス、また車での利用も多い場所ゆえノンアルコール飲料もありますが、ペアリングは9千円で、少量多皿のコースに合わせ、食前のシャンパーニュから8杯くらい、分量としては500ミリリットルくらい出てきたような(記憶不鮮明)。宿泊ですとドリンクは別で、一泊二食で一人35,000-なので宿泊と朝食で一人二万ちょいくらいの見当になりますか。部屋の設備自体は上質であれど豪華というわけではないので、CP的には和倉温泉で温泉旅館の朝食のみプランを探すか、金沢に戻って適当なホテルで寝るだけの方が優れているかも。とはいえ静かでゆるやかに時間が流れるような海辺至近で昼夜朝とうろうろ好きに歩き回れる環境と合わせたステイにはそれだけの価値があったように思います。まあ一日一組のみの宿泊であり、ミシュランの星以外でもここのところ媒体の露出が著しいだけに、中々週末の予約は厳しいというのはあるのですけれど。

 チェックアウトに合わせてタクシーを呼んでいただいて笠師保駅に。ローカル線を乗り継いで金沢に戻ります。こちらの路線は海際を走るでもなく、特に見るべき景色もなかったので昨日富山側から回るルートで来たのは正解だったかなと感じました。

 金沢に着いてから、東京行きの新幹線に乗る前に北陸の海鮮を堪能するぞとまたもやお寿司をいただきます。
 今日のお店は小桜。街の中心部が新幹線駅から離れている関係で駅からは遠いお寿司屋さんが多い金沢にあって、駅徒歩5分の場所にあるのでこうした乗り換え通過の際にも利用しやすいお店です。

https://hitosara.com/0006118215/

 こちらも2021年度ミシュラン一つ星獲得店ですが、なんとランチは五千円という金沢/北陸としても星付き店では破格のお値段。千葉出身、銀座で修行なさった陽気でいなせな大将が富山湾の地のものに北海道や大間からの贅沢な素材に繊細な包丁細工などの手間をかけて供するコースは圧倒的なCPなのでした。なにせ都内でいうとまんてん鮨を予約して行くより安いというのはこのクラスではあり得ないですね。なお、夜のコースは12か13だった筈なのでこちらは金沢標準と思いますが、それであっても東京基準だとまだまだ大分割安に思います。
 とまあ、最後まで北陸/日本海の豊かな食材を堪能させていただいた旅行もこれにて終了で、後はビールを飲みつつ新幹線にて東京に戻りました。

#旅行 #北陸 #ミシュラン #イタリアン #金沢 #寿司

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