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「空気を読みすぎる長男はリセットしたい」

井上陽水の歌に「人生が二度あれば」というのがあったが、
まだ長男が十歳の頃である。彼が突然、
「あ~~、俺さあ、人生やり直しが効くならやり直してえ~!」
などと言うではないか!

彼の人生と言ったって、たかだか十年だ。
まだこれからどんなことが待ち受けているかもわからないし、これまでの過去ったってそんなたいしたことやってないだろう?
全く!何を言っているんだか!!

長男にそこまで言わしめるもの。
何かが彼を悩ませているものがきっとある。
その『一番気になって仕方ないこと』が何かは、おそらくだがわかっている。

かれこれ長男八歳、次男六歳くらいの頃だろうか。
私が当時所属していたサークルのメンバーと会議後、昼食を取りにラーメン屋さんへと出かけた。
そのときはどういうわけだったか覚えてないけど、長男と次男を同伴していたのだ。

そのラーメン屋さんでラーメンが来るのを待っていると、座席と座席の間のついたてから、長男と次男が他のお客さんをのぞいていた。

小さい子どもって思ったことを何も考えず口に出しちゃうものだ。

つい長男がぼそっと、
「あ…あっちにカップルがいるよ」
と私に話しかけてきたのが運のつき。
それを聞いた次男が、
「あ~、カップル!!」(声がでかい!)
と大きな声を発したものだからたまらない。

私は「こら!そんな大きな声で!!静かにしてなさい」と注意しただけだったが、もうその頃にはちょっとは『はずかしい』という感情が芽生えていた長男がたまりかねて腹を立てた。

「もう!おまえはなんでそんな大きな声で言うんだよ!!恥ずかしい!あの人たちだって恥ずかしいだろうが!!」

その怒りはその後もずっとおさまらず、そして長男の記憶にずっとこびりつき、忘れられない一件となったのだった。

大きな声を出した次男も恥ずかしい。
たぶんそのカップルに聞こえてしまっただろうことも恥ずかしい。
母親の友人たちに聞こえてしまったことも恥ずかしい。

次男本人よりも、先につい口走ってしまった自分が恥ずかしくて、穴があったら入りたかったのだろう。

それから数年たっても、以来何かというとその記憶が呼び覚まされるようで、
「あ~~…また俺、頭くること思い出した!」
といってはこの話を蒸し返される。

次男にとっては、もうそんな過ぎたことをくどくど言われるのもあまりにかわいそうな話で。

「いまさらどうしようもない、過ぎてしまったことをあまりくどくど言っていたら先になかなか進めないよ。いい加減で忘れてあげないとかわいそうじゃない。『ああ、こんなこともあったなあ』っていう笑い話くらいに考えられないの?」
と私が言ってもなかなか忘れることができないようだ

それを言うのなら、私こそ人生をリセット・初期化したいわ。
そう思える事柄が、長男よりいっぱい生きてきた人生の中でたまりにたまっているんだからね!


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