記事一覧
【小説】『消えたモノ』
「天谷先輩、これは何ですか?」
目の前の机にどさっとおかれた紙束を見ておれは訊いた。相手は二年の天谷みやこ先輩。うちの部活の部長だ。
「見ればわかるだろう。三条くん。文化祭の収支表企画説明図その他資料だよ。先日の文化祭で何をしたか記録するためのものだ」
「うちの部はもう全部提出したはずじゃ……」
「ああ、だがそれだけじゃ終わらないぞ。全クラス・部活の収支を計算して資料にまとめて会議に提出しないと
【小説】聖夜、誕生と滅亡――23:59
『初めまして。この世界を救いたいですか?』
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満天の星が厭に煌めいている。それはクリスマスイヴの夜のことだった。街中がイルミネーションに彩られる中、俺は一人Lのつくコンビニで買ったスパイシーチキンを食べていた。
「あのコンビニはもう行けないな……」
別に俺がもうすぐ引っ越すわけでもなければ、あのLO-損が経営難で潰れるわけでもない、単純に、「ファミチキください」って言ったせい
【小説】水性花火 ~雨が降ったら~
序章:積雨『別れる男に、花の名を1つ教えておきなさい。花は毎年必ず咲きます』
村上春樹だったか川端康成だったかの小説に出てきた言葉。この一節をあのヒトに、本でこれこれこんなことを読んだよ、みたいなノリでそれとなく伝えたことがあった。別段僕は当時あのヒトと別れるつもりなんてなかったし、あのヒトだって別れる前提で僕と付き合っていたということはなかったように思う。でも僕がその一節を漏らしたとき、あのヒ