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見上げると四角い青い空

【これは、2018年に高校演劇部の上演用に書いた演劇台本です】

ある夏の思い出。とある女子高校生が家出をした。友人が、教師が、親が思いを巡らす。戻って来た女子高校生が語った言葉とは?
センシティブな女子高校生の日常を切り取った作品。

  〈登場人物〉

   郁子  希美  美樹  優奈  桃花
   綾乃  少年  グリ  グラ
   教師  母  おっさん



  明かりがつく。
  緞帳の前に四人の女。白のトレパン、トレシャツ。
  歌い出す。(「ラジオ体操の歌」)

   ♩新しい朝が来た 希望の朝だ
   喜びに胸を開け 大空仰げ
   ラジオの声に すこやかな胸を
   この香る風に開けよ それ イチ ニ サン

オバハン  みなさんおはようございます。さわやかな朝ですね。適度な運動は、血圧や血糖値を下げたり、肥満の予防、改善につなげることができます。今日も元気に体操を行いましょう。今日、一緒に体操をするのは、
体操女1   田村啓子です。
体操女2   岸部聡美です。
体操女3   市原和恵です。
体操女達   リズムに合わせて気持ちよく、心と体をリフレッシュ!
オバハン   それでは、ラジオ体操第一です。

  ラジオ体操の音楽。四人が体操をする。
  やがて、緞帳が開いて行く。
  音楽が小さくなって行く。体操は続く。
  公園。
  ベンチに少年がギターを持って座っている。
  そこへ、ランドセルの小学生二人が駆け寄る。

グリ・グラ  お兄ちゃん、おはよう!
少年  ああ、おはよう。今日も早いね。
グリ  まあ、うちのモーニングはサクサクって済ますしな。
グラ  まあ、うちはシリアルやしな。
少年  シリアルって?
グラ  まあ、ベビースターラーメンとも言う。
グリ  こら。それ言うたらあかん。
グラ  あ、ごめん。お姉ちゃん。
グリ  もう! 以後、気をつけるべし。
グラ  ラジャー。了解。
少年  ベビースターラーメンって‥‥。お母さんにご飯作ってもらわないの?
グリ  ママはおらん。
少年  え。‥‥あ。
グリ  お仕事やねん。
少年  あ‥‥ああ。
グラ  夜のお仕事とも言う。
グリ  こら。いらんことは言わんでええ。
グラ  あ、ごめん。お姉ちゃん。
グリ  以後、気をつけるべし。
グラ  ラジャー。
少年  ‥‥ふーん。‥‥なかなか大変なんだ。
グリ  別に大変なことはない。
少年  え?
グリ  まあ、それぞれの家には、それぞれの事情ちゅうもんがある。
少年  へぇ。‥‥すごいな。
グリ  何が?
少年  いや‥‥別に。
グリ  そんなんええから、お兄ちゃん、歌うとてぇな。
グラ  そや。お兄ちゃん、歌うとて。
少年  歌‥‥か?
グリ・グラ  うん。
少年  そうだな。‥‥何がいい?
グリ  何でもええ。
グラ  うん。何でも。
少年  そっか。‥‥じゃあ、こんなの、どう?

  少年、ギターを弾き始める。
  歌。(「悲しくてやりきれない」)

少年  ♩胸にしみる雲の輝き 今日も遠く眺め 涙を流す
    悲しくて悲しくて とてもやりきれない
    このやるせないモヤモヤを 誰かに告げようか

グリ  何、その歌?
少年  「悲しくてやりきれない」。知らない?
グリ  知らん。
グラ  知らん。
少年  アニメでやってたじゃん。「この世界の片隅に」。知らない?
グリ  知らん。
グラ  知らん。
少年  そっか。小学生は見ないのかなあ?
グリ  悲しい、悲しいって、何がそんなに悲しいの?
少年  え?
グラ  お兄ちゃん、なんかつらいことでもあったん? よかったら、聞いてあげてもええで。
少年  え? ‥‥いや、そういう歌だから。
グリ  ほれ、そんな遠慮せんかてええから。
グラ  そや。言うたらすっきりするで。
少年  いや、だから。
グリ  なんやねん。水臭いな。わしとあんたの仲やないか。
グラ  そや。うちとあんたの仲やないの。
少年  いや‥‥。
グリ  ほれ。
グラ  ほれ。
少年  ええ‥‥?

  女子高生が二人やって来る。

郁子  おはよう。
希美  あ、おはよう。
郁子  今日も暑いなあ。
希美  うん、暑い。
郁子  朝からこんなに暑いとイヤになるわ。
希美  ほんま。ほんま。
郁子  ほれ、「勉強は朝の涼しい時間にやりましょう」って書いてあったやろ?
希美  え? 何、それ?
郁子  夏休みの心得。小学校の時の。
希美  ああ、そんなんあったな。
郁子  前々から思てるんやけど、朝の涼しい時間とか、そんなんあった?
希美  え?
郁子  朝からふつーにガンガンに暑なかった? 朝、起きて、ラジオ体操行こうと表出たら、もう太陽がギラギラしてて、セミがギャンギャン鳴いてて。
希美  セミがギャンギャンって。

  セミが鳴き出す。

郁子  ほれ、ギャンギャンやん。
希美  ギャンギャン‥‥かなあ?
郁子  とにかく、朝の涼しい時間というイメージはないわ。
希美  まあ‥‥そうかな? ‥‥でも、四時とか五時やったらまだ涼しいんとちゃう?
郁子  ええ! ほな、何か? うちら、四時とか五時に起きて勉強せなあかんのか?
希美  いや、そういうのとはちゃうやろうけど。
郁子  ちゃうやろうけど‥‥何やの?
希美  そやから、昔は涼しかったんちゃう?
郁子  昔って、いつの昔?
希美  そやから、センセーらの子供の頃かな? うちのママもそんなん言うてたで。昔はもっと涼しかったって。
郁子  地球温暖化ちゅうやつか?
希美  まあ、そういうやつや。
郁子  ほんま、そんなんばっかしやな。大人はすぐに子供に押しつけるんや。古き良き時代か何か知らんけど、そういう大人のロマンみたいなんを押しつけるんはやめてほしいわ。もう時代が違うんやわ。うちら、ええ迷惑やで。
希美  あんた、どないしたん? 朝から何怒ってんの?
郁子  まあ‥‥ちょっとな。
希美  ちょっと、何? ‥‥あ、わかった! ケンカしたんやろ? ママと。
郁子  うるさい!
希美  図星ー!
郁子  うるさい!

  女子高生達がやって来る。
  口々に「おはよう」「おはよう」

郁子  うわ、もうこんな時間やん。急がんと遅れるで。
希美  ほんまや。もう、あんたがしょーもないことしゃべってるから。
郁子  うるさいな。行くで。
希美  うん。

  郁子、希美、女子高生達と共に去る。




  チャイム。

  女子高生達が登場。
  教師、登場。

美樹  起立。
教師  おはようございます。
女子高生  おはようございます。
美樹  着席。

  女子高生、座る。

教師  えー。いよいよ、今日で一学期も終わりです。がんばった人、がんばれなかった人、それぞれだと思いますが、がんばった人はそれなりに、がんばれなかった人は汚名返上、捲土重来を期して夏休みに粉骨砕身、奮闘努力して下さい。
今更言うまでもありませんが、夏休みというのは、誘惑の多い、非常に危険の多い時期でもあります。休みだからと言って、決して気をゆるますことなく、朝な夕なに白鷺女学院生としての自覚と誇りを持って、清く正しく充実した夏休みを完遂して下さい。
以上です。
美樹  起立。礼。着席。

  教師、去る。

優奈  やったー! 夏休みや!
郁子・希美  夏休みやー!
桃花  なぁなぁ、どやった?
綾乃  まあまあ‥‥かな?
桃花  まあまあって、どういうまあまあ?
綾乃  まあまあは、まあまあやって。
優奈  まあまあではわからん。論より証拠。ケチケチしないで見せる! ハイ!(と、手を出す)
綾乃  えー。

  と、通知表を取り出す。

優奈  どれどれ。‥‥うわ、4と5ばっかしやん。
桃花  えー。3とかないの?(と、見る)うわ、ほんまや。これが、何でまあまあなん?
綾乃  いや‥‥だから。
郁子  私にも見せて。(と、見る)うっわー。‥‥えーなー。うちなんか、3と2ばっかしやで。
優奈  そんなんええやん。1がなかったら。
希美  えー。優奈、1あるん?
優奈  まあ‥‥な。数学だけやけどな。
希美  なあなあ、それ、ちょっと、見せて。
優奈  え?
希美  いや、まあ、後学のために。
優奈  えー。‥‥しゃあないなあ。ほれ。(と渡す)
希美  (と、見る)うわ。ほんまに赤い字で書いてあるんや。知らんかったー。
優奈  なんや、そんなんも知らんの? 常識やで。常識。
郁子・桃花・綾乃 なあなあ、うちらも見ていい?
優奈  ええよ。

  群がって通知表を見る。

郁子・桃花・綾乃 おおー。(尊敬の眼差しで優奈を見る)
優奈  もう、これやからイマドキの若いもんは。

  美樹が帰ろうとしている。

郁子  あれ。美樹帰るん?
美樹  ああ‥‥うん。
希美  帰り、みんなでカラオケ行かへん?
美樹  ‥‥ちょっと、用事があるねん。ごめん。
希美  ふーん。そうなん。
美樹  ああ、うん。
優奈  ちょっと、ちょっと、美樹さん。
美樹  え?
優奈  帰る前に、ちょっと見せてぇな。
美樹  え? 何を?
優奈  何をって‥‥。あんた、ひょっとして、オール5とかとちゃうん?
希美  えー。美樹、オール5なん?
美樹  いや、違うし。
郁子  えー。あんた知らんの?
桃花  さすが、学級委員長はちゃうなー。
美樹  いや、だから、ちゃうし。
優奈  違ごても、それに近い辺なんちゃうん? ほとんど5なんやろ? なあ、見せてぇな。目の保養にするし。
希美  そやなあ。それは後学のために見たいなあ。
美樹  いや、だから‥‥。
優奈  えー。あかんの?
美樹  ‥‥‥。

  しばしの間。
  美樹、通知表を取り出す。

美樹  はい。(差し出す)
女子高生達  おおー。(群がる)
優奈  はいはい。順番、順番。‥‥どれどれ。
希美  どれどれ。

  みんなで回し見る。
  しばしの間。

美樹  ‥‥もう、ええ?
優奈  ‥‥ああ‥‥うん。‥‥ありがとう。(と、返す)
美樹  (受け取って)ほな、帰るわ。‥‥バイバイ。
優奈  バイバイ。
女子高生達  (バラバラと)バイバイ。

  美樹、去る。

郁子  ‥‥わりとふつーやったな。
桃花  うん。‥‥3とかあったし。
希美  ほんまやな。
綾乃  ‥‥美樹。

  音楽。
  暗転。




  美樹と教師が机をはさんで座る。(サス)

教師  延期ってどういうこと?
美樹  いや‥‥だから‥‥ちょっと親が来れなくて。
教師  お仕事の都合とかあるんやったら、夜とか、休みの日にしてもええのよ?
美樹  ‥‥いや‥‥それも‥‥たぶん、ちょっと無理なんです。
教師  そうなの。‥‥美樹さん。
美樹  あ、はい。
教師  ちょっと聞きにくいんやけど、何かあるんやったら、先生に話してくれへんかな?
美樹  え?
教師  成績のこともあるしね。
美樹  成績‥‥。
教師  あなた、一年生の時は、ほとんど5だったでしょ?
美樹  ‥‥‥。
教師  それが、今回は‥‥。何か理由とかあるんとちゃうかなあって、先生、心配してるんやけどね。
美樹  ‥‥はあ。
教師  どうなん? ‥‥ひょっとして、おうちで何かあったのかな?
美樹  ‥‥‥。
教師  まあ、無理に言えとは言わへんけど、言うてくれたら、先生、力になれるかもしれんと思うんやけど‥‥。
美樹  ‥‥‥。
教師  ‥‥‥。やっぱり、言いたくないかな?
美樹  あの。
教師  え? 何?
美樹  うちの親、離婚するんです。
教師  ‥‥‥。ああ‥‥そうなんだ。
美樹  はい。
教師  ふーん。
美樹  それで、ひょっとしたら、学校変わらなあかんかも‥‥。
教師  変わる?
美樹  ‥‥お金のこともあるし‥‥もしかしたら、お母さんの実家に引っ越すかもしれなくて。
教師  ‥‥実家は‥‥どこなん?
美樹  福岡です。
教師  ‥‥福岡‥‥か。
美樹  あ‥‥はい。
教師  ‥‥ちょっと遠いねぇ。
美樹  はい。
教師  ‥‥それって、もう決まってるの?
美樹  いや‥‥まだはっきりとは‥‥。
教師  そっか。
美樹  はい。
教師  ‥‥いつ頃決まるか、わかる?
美樹  ‥‥さあ?
教師  そっか。
美樹  すみません。
教師  いやいや、あなたが謝らなくていいから。
美樹  あ、はい。
教師  ‥‥それやったら、ちょっと三者面談どころやないよねぇ。
美樹  すみません。
教師  いや、だから‥‥。ほなら、ええわ。わかりました。面談は落ち着いてからにしましょ。
美樹  あ、はい。ありがとうございます。
教師  で、どうなんかな? 夏休み。
美樹  え?
教師  そやから、おうち、バタバタしてたりせーへん? 落ち着いて過ごせるの?
美樹  ‥‥それは、たぶん、大丈夫やと思います。
教師  それやったら、ええけど。
美樹  あ、はい。
教師  ほなら、いろいろ大変やと思うけど、何かあったら、遠慮せんと学校に来てね。
美樹  あ、はい。ありがとうございます。
教師  それじゃ、そういうことで。
美樹  はい。‥‥どうもありがとうございました。

  美樹お辞儀。
  音楽。
  暗転。




  明かりがつくと、公園。
  少年と小学生達がいる。

  少年、ギターを弾き始める。
  歌。(「若者たち」)

少年  ♩君の行く道は果てしなく遠い
    だのになぜ歯をくいしばり
    君は行くのか そんなにしてまで

グリ  何、その歌?
少年  若者たち。
グリ  知らん。
グラ  うん。知らん。
少年  ドラマで森山直太朗が歌ってたよ。元々は、すごく昔の歌らしいけど。
グリ  もりやまなおたろう?
少年  うん。
グリ  知らん。
グラ  知らん。
少年  え? そうなの? 森山直太朗も知らないの? 「さくら?さくら?今咲き誇る?」の人。
グリ  ん?
グラ  聞いたこと‥‥あるみたいな‥‥。
少年  だろ?
グリ  やっぱり、知らん。
グラ  うん。知らん。
少年  もう!
グリ  ‥‥その、若者がどっかに行くの?
グラ  行くの?
少年  だろうね。
グリ  どこに行くの?
少年  さあ、どこだろう?
グラ  電車で行くの? バスで行くの? 飛行機で行くの?
少年  いや、そういう旅行じゃなくってさ、人生の旅?みたいなんじゃないかな? たぶん。
グリ  人生の旅?
グラ  何それ?
少年  昔から、人生はよく旅に例えられててさ、それで、若者なんかは、冒険の旅とか出かけるんだよ。
グリ  お兄ちゃんも出かけるの?
少年  え?
グリ  若者やろ? お兄ちゃんも。
少年  ああ。ああ、そうだな。‥‥どうなんだろうね? ひょっとしたら、もう出かけてるのかもしれないね。
グリ  うそこけ。
少年  え?
グリ  旅なんか出かけてへんやん。公園で座ってるだけやん。
グラ  そや。そや。
少年  いや、だから、それは例えだよ。こうして公園でギターを弾いたり、君たちとおしゃべりしてるのも、もしかしたら人生の旅の一部分なのかもしれないってこと。
グリ  えー! ほならわしらも旅に出てるんか?
少年  まあ、そういうことになるかな?
グラ  えー! うちら拉致られてしもたん? えーん。
グリ  えーん。
少年  いやいや、泣かなくてもいいんだよ。例えだよ。例えだから。
グリ  えーん。
グラ  えーん。ママー。
少年  おいおい。

  桃花・綾乃がやって来る。

桃花  あ、どうしたん?
綾乃  この人にいじめられたん?
グリ  うん。そう。
グラ  うん。この人がいじめるの。
少年  いやいや、違う。違うから。
グリ  えーん。ママー。
グラ  えーん。ママー。
少年  おいおい。
桃花  スナフキン、何やってんの?
綾乃  スナフキン、そういう趣味なん?
少年  いやいやいや。そういうのとは違うから。
グリ  え? お兄ちゃん、スナフキンって名前なん?
グラ  スナフキンって、外人なん?
少年  いやいや、それも違うから。
グリ  ほな、何でスナフキンなん?
グラ  そやそや。何でなん?
桃花  あー、それはねぇ。‥‥まあ、いわゆる一つのあだ名やな。ニックネーム。
小学生達  え?
綾乃  いや、そやから、この人いつもこの公園でギター弾いてるやろ?
小学生達  うん。
綾乃  そやから、スナフキン。
小学生達  え?
桃花  あんたら、スナフキン知らんの?
グリ  知らん。
グラ  知らん。
桃花  へぇ、そうなんや。
綾乃  ジェネレーション・ギャップ感じるなあ。
桃花  あのな、スナフキンちゅうのんはな‥‥

  桃花、棒切れを持って来て、地面に絵を描く。

桃花  こーんな帽子をかぶっててやな‥‥こーんな顔をしてて‥‥
綾乃  あーあー、そんな感じ、そんな感じ。あんた、絵うまいな。
桃花  やろ? で、こんな目ぇで‥‥と、こういうのんや! わかった?
グリ  ‥‥‥。わからん!
グラ  うん。さっぱりわからん!
桃花  もう! このクソガキが!(棒切れを叩きつける)
グリ  うわー。こわいよー!
グラ  おばちゃんがいじめるー。
桃花  誰がおばちゃんや! こらー!
小学生達  うわー。

  小学生、逃げる。

綾乃  桃花、桃花。あんたがいじめてどないすんの?
桃花  ‥‥あ、そやったな。‥‥ワタクシとしたことが。‥‥ごめんあそばせ。オホホ。
少年・綾乃  ‥‥‥。
桃花  ‥‥暑いなあ。
少年  うん、暑いね。
桃花  夏やしな。
少年  うん。‥‥もう、夏休み?
桃花  うん。今日、終業式やってん。明日から夏休み。
少年  そっか。いいね。
綾乃  そんなええこともないよ。補習とかもあるし。
少年  補習?
綾乃  補習ちゅう名前やねんけど、授業の続きみたいなやつやねん。出席とかも取りよるし。
少年  へぇ、そんなのがあるんだ。
桃花  もう、詐欺みたいやわ。宿題とかもいっぱいあるし。
綾乃  夏休みくらい、パーっと遊ばせてくれたらええのに。
桃花  言うまでもありませんが、夏休みというのは、誘惑の多い、非常に危険の多い時期でもあります。
綾乃  うわ、やめて。そーゆーの。
桃花  ハハハハ。‥‥似てた?
綾乃  うーん。あんまし。
桃花  えー!
少年  何、それ?
綾乃  担任の先生のマネ。‥‥あの人ら、結局うちらのことあんまし信頼してへんのやな。野放しにしたら悪いことするとか、非行に走るとか‥‥。
桃花  清く正しく充実した夏休みを完遂して下さい。
綾乃  だから、それはもうええし!
桃花  アハハハハ。
少年  ‥‥女子高生も、なかなか大変なんだねぇ。
桃花  そら、大変やって。悩み多きお年頃やし。
綾乃  え? 桃花、悩みとかあんの?
桃花  そら、あるわな。悩みの一つや二つ。
綾乃  ‥‥もしかして、恋の悩み? 例のバイトのタカハシ君?
桃花  ちゃうて! あれはほんまに関係ないし。
綾乃  ほんま?
桃花  ほんまのほんま。
綾乃  ふーん。そっかあ。‥‥まあ、ええけど。‥‥あーあ、私も、スナフキンみたいに暮らしたいなあ。
少年  え?
綾乃  毎日、ギター弾いて、歌うとて‥‥。スナフキン、学校とか行ってへんのやろ?
少年  え?
綾乃  ええなあ。毎日が夏休みみたいで。私もスナフキンみたいに家出て自由に生活したいわあ。
少年  ‥‥‥。
桃花  ‥‥綾乃。
綾乃  え? 何?
桃花  そやから、そういうのは言うたらあかん。‥‥そういう約束やろ?
綾乃  あ。
桃花  うちら、これからもスナフキンと仲良くしたいやんか。
綾乃  ‥‥‥。ごめんなさい。かんにん。
少年  ‥‥うん。
綾乃  ほんま、ごめん。‥‥そういうつもりやなかってん。
少年  ‥‥うん。
桃花  ‥‥‥。なあなあ、スナフキン。何かうとてぇな。
少年  ああ‥‥いいよ。‥‥何がいい?
桃花  何でもええよ。スナフキンの好きなやつ。
少年  じゃあ、「若者たち」でいい?
桃花  それって、森山直太朗のやつ?
少年  うん。そう。

  少年、ギターを弾き始める。
  歌。(「若者たち」)
  途中から、桃花、綾乃も一緒に歌う。

少年  ♩君のあの人は今はもういない
    だのになぜ何を探して
    君は行くのか あてもないのに

    君の行く道は希望へと続く
    空にまた陽が昇る時
    若者はまた歩き始める

  暗転。



  美樹の母が現れる。電話をかけている。(サス)

母  あ、もしもし。大沢さんのお宅ですか? あの、私、綾乃さんの同級生の小川美樹の母親なんですけど‥‥。‥‥ああ、どうも。‥‥いえいえ、こちらこそ。‥‥あの、ちょっと綾乃さんとお話ししたいことがありまして。綾乃さん、いやはりますか? ‥‥あ、どうも、すみません。

  綾乃が現れて、電話を取る。(サス)

綾乃  あ、もしもし。代わりました。
母  ああ、綾乃ちゃん? 美樹の母です。
綾乃  ああ、美樹ちゃんとこの。こんばんは。
母  こんばんは。‥‥あの、ちょっと聞きたいことがあるんやけど。
綾乃  はあ‥‥。何ですか?
母  美樹、あんたんとこに行ってへん?
綾乃  え? ‥‥いや、来てませんけど。
母  ああ、そうなんや。
綾乃  ああ‥‥はい。
母  ‥‥何か聞いてへん? 今晩、誰かのとこにお泊まりするとか?
綾乃  え? ‥‥そんなん聞いてませんけど。‥‥あの、美樹がどうかしたんですか?
母  いや、どうもしてへん。別にどうもしてへんのやけどね、ちょっと連絡しようと思ったら、電話がつながらへんのやわ。‥‥あの子、時々そういうことがあるねん。電源切ったままとか。そういうおっちょこちょいのとこがあるねんか。‥‥それでな‥‥そやなあ‥‥ああ、綾乃ちゃん、悪いんやけど、ラインとかで連絡してみてくれへんかな? ちょっと急ぐ用事があるねんか。
綾乃  ああ、いいですけど。‥‥何て言うたらええんですか?
母  家に‥‥ああ、ママのスマホに電話してって。
綾乃  はい。わかりました。
母  ごめんね。頼みます。
綾乃  いえいえ。
母  ほならね。お願いね。
綾乃  はい。

  電話を切る。
  綾乃、去る。
  母、再び、電話。

母  あ、もしもし。石田さんのお宅ですか? 私、真由美さんの友達の小川美樹の母親なんですけど。‥‥あ、真由美ちゃん? ‥‥はい、こんばんは。‥‥真由美ちゃん、ちょっと聞きたいことがあるねんけど、美樹、あんたのとこに行ってへん? ‥‥ああ、そっか。‥‥何か言うてへんかった? 今晩、どこかにお泊まりに行くとか。‥‥いや、別に、何でもないんやけど、ちょっと連絡しようと思たら、美樹、スマホの電源切ってるみたいやねんか。あの子、そういううっかりとか時々あんねん。‥‥いやいや、しっかりしてるように見えるだけで、ほんまはけっこうドジっ子なんやわ。アハハハ。‥‥それでな、悪いんやけど、ラインとかで連絡できひんかな? ‥‥ああ、何かな、教えてくれへんのよ。まあ、そういう年頃なんかな? 真由美ちゃんは、ママとラインとかしてるの? ‥‥へぇ、そうなんや。

  母、消える。

  郁子と希美、現れる(サス)。電話をしている。

郁子  そっか、あんたんとこにも電話あったんや。
希美  うん。
郁子  何か、あったんかな?
希美  美樹?
郁子  うん。
希美  美樹のママ、急ぎの連絡とか言うてたやん?
郁子  ほんまかな?
希美  え? どういうこと?
郁子  ちょっと変やと思わへん?
希美  え? 何が?
郁子  私ら、美樹とそんなに仲がええわけとちゃうし。つるんでたりしてへんし。‥‥まあ、ただのクラスメイトやん。
希美  まあ、そやな。
郁子  そやから、お泊まりとか来るわけないし。
希美  そやな。
郁子  そのぐらい美樹のママかてわかってんのちゃう?
希美  そうかな?
郁子  そらそやろ? 友達の話とか、あんたせーへん? 家で。
希美  そんなにせーへんけどな。
郁子  それでも、ちょっとはするやろ?
希美  まあ‥‥ちょっとぐらいはな。
郁子  そやからや。美樹とママの会話の中でうちらの名前が出て来る可能性はほぼゼロや。
希美  まあ‥‥そうかもしれんな。
郁子  美樹がママに話すんやったら、綾乃とか桃花とか、三組の石田さんとか、そのへんやろ?
希美  ああ‥‥なるほど。そうかもしれんな。
郁子  それでや。そんな外様のうちらにまで電話して来るということはやな。
希美  え? とざまって何?
郁子  え? 日本史で出て来たやん。外様大名。
希美  そやから、それ何なん?
郁子  もう! ‥‥まあ、何ちゅうかな、一般ピープル、その他大勢みたいなん?
希美  それやったら、初めからそう言いな。
郁子  うるさいな。それぐらい知っとけ。‥‥そやからや、その、一般ピープルのうちらにまで電話して来るということは、たぶん、クラスの子全員にかけてるな。‥‥間違いない。
希美  えー。そんなめんどいことする?
郁子  それが、してるんやな。たぶん。
希美  なんで?
郁子  そやからや。これは何かあったんやな。‥‥間違いない。
希美  何かって‥‥何があったん?
郁子  それやねんけど、うちが推理するところでは‥‥。
希美  うん。

  桃花、綾乃が現れる(サス)。電話をしている。

桃花  やっぱり電源が入ってへんの?
綾乃  うん。みたい。
桃花  で、ラインは?
綾乃  したで。ツイッターもした。
桃花  そーか。‥‥それで、返事は?
綾乃  全然。しょっちゅう見てるんやけど。
桃花  そーかー。
綾乃  うん。
桃花  あんたにも連絡せーへんって、どういうことやろな?
綾乃  うーん。
桃花  ケンカしたんかな?
綾乃  かもねぇ。
桃花  ママは、何か言うてへんかった?
綾乃  そら、言わんて。
桃花  そら、そやな。
綾乃  うん。
桃花  なんか、雰囲気とかでわからんかった?
綾乃  雰囲気? ママの?
桃花  うん。
綾乃  なんかねぇ、めっちゃふつーの感じ。とにかく知られたくないていうか、感づかれたくないみたいな。
桃花  まあ、そやろなあ。
綾乃  うん。
桃花  ‥‥‥。家出かあ。
綾乃  うん。‥‥たぶん。
桃花  でも、それやったら、余計に変やな。家出やったら、綾乃に何か相談とかするやろ? ふつー。
綾乃  うーん。
桃花  ほんまに何にも聞いてへんの?
綾乃  ‥‥まあ、家のことは前からいろいろ聞いてるけど。
桃花  離婚の話?
綾乃  うん。
桃花  パパかママにめっちゃ切れてたとか?
綾乃  いや、そういうのはないな。どっちか言うたら、醒めてるって感じ? 距離を置いてるって感じ?
桃花  パパとママに?
綾乃  うん、それもやけど、今回の話全部にかなあ?
桃花  まあ、美樹、そういうとこあるしな。親とか教師とか‥‥私らに対してもそういうとこない?
綾乃  ああ‥‥かもしれんな。
桃花  ほんまのところでは心を開かへんみたいな。
綾乃  ‥‥うん。‥‥でもな。
桃花  ‥‥‥。ん? でも、何?
綾乃  何かな、わかるような気もするんやわ。
桃花  わかるって、何? 美樹の気持ち?
綾乃  美樹の気持ちっていうか、‥‥そういうのあったりせーへん?
桃花  え? そういうのって何?
綾乃  いや、そやから、あれや。‥‥人間って、たぶん、わかり合えへんのやろなとか、どーせ無理やろなって。そういうあきらめみたいな気持ち?
桃花  ええ? 何それ?
綾乃  そやから、パパでもママでも、それから友達でも、結局他人やし、わかり合えへんって。‥‥そういうの思たりせーへん?
桃花  ええ? あんた、そんなこと考えてんの?
綾乃  いや、別にいつも思ってるわけやないよ。‥‥でも、たまにそんなことを考えて、フーッとさみしくなったりする。
桃花  それって、もしかして美樹の影響ちゃう? あんたら、そんなこと話したりすんの?
綾乃  いや、せーへんよ。ふつーに、テレビの話とか、音楽の話とか。‥‥でも、何かね、ひょっとした拍子にわかるねん。わかるっていうか、感じるねん。‥‥ああ、この子も私と似たような子やなあって。さびしい子やなあって。
桃花  ‥‥さびしい子って。‥‥そしたら、綾乃、私のこともそんな風に思ってるの? こいつ、ほんまもんの友達やないって。
綾乃  いやいや、そんなことないって。桃花はほんまもんの友達やって。
桃花  でも、さっき言うてたやん。わかり合えへんって。
綾乃  うん。それは、そう。
桃花  ええ? それ、どういうことなん? 何か言うてることがわけわかめや。
綾乃  そやから、私とあんたとは友達やねん。ごっつ友達やねん。ごっつ友達やねんけど、やっぱしわかり合えへんねん。
桃花  はあ?
綾乃  そんなら、桃花、私のこと一〇〇%わかってる? 私が今思てることとか、うれしいこととか、悲しいこととか、腹立つこととか、むかつくこととか、感動することとか、それから、好きな色とか、空見てる時の気分とか、悩んでる時の心のもやもやとか、そんなんいろいろ全部。
桃花  え? そんなん急に言われても‥‥。
綾乃  な、そやろ? あんたと私は、友達やけど、おんなし人やない。絶対おんなしにはなれへん。顔も違うし、名前も違う。心も違うし、考えてることも違う。それって当たり前やろ?
桃花  うん。‥‥まあ、それは、そうやけど。
綾乃  そやから、わかり合えへんのやな。
桃花  えー、何でそうなんの? そこがわからんわ。‥‥そんなん考えてたら、しんどならへん?
綾乃  いや、そんな、いっつもいっつも考えてるわけやないし。‥‥ただ、世の中ってそういうもんやなあって。それが当たり前やなあって。朝、太陽が昇るんとか、空が青いのが当たり前みたいな感じで、当たり前やなあって。空気吸うみたいに当たり前やなあって。‥‥それって、特別悲しいことでも、悲劇でもないねん。‥‥ただ、そういうもんやって、受け入れるしかないねん。
桃花  へぇ。綾乃、いろいろ考えてるんやなあ。‥‥私、そんな難しいこと考えたことないわ。
綾乃  まあ、悩み多きお年頃やしな。
桃花  え? それ、どっかで聞いたな?
綾乃  桃花が言うてたやんか。あそこの公園で。
桃花  あれ、そうやったっけ?
綾乃  そやって。
桃花  そっかー。アハハハハ。
綾乃  アハハハハ。

  音楽。
  暗転。




  明かりがつくと、公園。
  少年と小学生達がいる。

グリ  あーあ。毎日、毎日、暑いなあ。
グラ  ほんまに暑いなあ。
少年  まあ、夏だからね。
グリ  こんなに暑いと、熱中症になってまうで。
グラ  なってまうで。
グリ  お兄ちゃん、知ってる? 子供は大人より温度が五度高いんや。
少年  え?
グリ  地面に近い方が温度が高いんやで。
グラ  そやで。
少年  へぇ。何で?
グリ  えーとなあ。地面に近いと、何とかが何とかしてまうんや。テレビで天気予報のねぇちゃんが言うとったわ。
グラ  うん。言うとった。
少年  へぇ。そうなんだ。
グリ  そやからな、わしらはヤバイ。
グラ  うん、ヤバイ。
少年  そうだね。気をつけないとね。
グリ  お兄ちゃんかて、けっこうヤバイで。
少年  え? 何で?
グリ  そら、そやろ? 毎日、毎日、座ってギター弾いとるんやから。高さがわしらとあんまし変わらへんやん?
グラ  変わらへんやん。
少年  ああ。そう言えば、そうだ。
グリ  あのなあ、いっぺん聞いといたるけど、何が悲しゅうて、毎日こんなとこに座ってギター弾いてんの?
グラ  そや、何が悲しいんや?
少年  え? そうだな? ‥‥何でかな?
グリ  自分でわからんのか?
グラ  わからんのか?
少年  じゃあさ、君たちに聞くけど、君たちはさ、何が悲しくて、毎日こんなとこに来るわけ?
グリ  ん?
グラ  ん?
グリ  んー、何でかな? まあ、何となくやな。
グラ  何となくやな。
少年  だろ? だから、僕もそういう感じ?
グリ  おっと、こいつは一本取られたな。
グラ  取られたな。
三人  アハハハハ。

  怪しいおっさん(ホームレス風)がやって来る。
  ポケットウイスキーを手にしている。

おっさん  やあやあやあ。
少年・小学生達  ?
おっさん  やあやあ。レディース、アンド、ジェントルメン。今日も暑っついねぇ。
少年・小学生達  ?
おっさん  やあやあやあ。ビートルズがやって来る、ヤアヤアヤア。知っとる? おっちゃんはビートルズやないでぇ。これまたびっくりー。
少年・小学生達  ?
おっさん  おっと、自己紹介が遅れたな。悪い悪い。
レディース、アンド、ジェントルメン。ハローハロー。マイネーム、イズ、ポール・マッカートニー。
少年・小学生達  ?
おっさん  とか言うて、うそこけ、とか思てるやろ? そやねん。おっちゃん、うそついてもーたわー。ごめんなー。ほんまは、ジョン・レノンやねん。ラブ、アンド、ピース。知っとる?ラブ、アンド、ピースや。
少年・小学生達  ?
おっさん  あれー? 今日はJKがおらんのかいな? JKって知っとる? 女子高校生のことをJKって言うんやで。女子中学生はJC。‥‥おっかしいなあ。ここに来たらJKがおるって聞いたんやけどなあ。
少年・小学生達  ?
おっさん  こんなジャリしかおらへんやないけ。
グリ  おっさん。
おっさん  ん?
グラ  お姉ちゃん!
グリ  おっさん。ジャリやない。JSや。
おっさん  はあ?
グリ  わしらJSや。女子小学生。
グラ  お姉ちゃん、相手にしたらあかん。
おっさん  ん? ‥‥ほー、おもろいこと言うジャリやな。
グリ  そやから、ジャリやない! JSや!
おっさん  ほー、JSって言うんか? 女子小学生はJSか‥‥。なーるほどなー。アハハハハ。
グリ  ‥‥‥。
おっさん  それで、そこのギター持ってる兄ちゃん。お前は何や?
少年  え?
おっさん  ひょっとして、お前らあれか? 兄ちゃんとそのJSはできとるんか? 愛人か? アハハハ。兄ちゃん、えーのー。ハーレムやのー。
グリ  おっさん‥‥。ええかげにしとけよ。この酔っ払いが。
グラ  お姉ちゃん!
おっさん  その通り! そのJSの言う通りや! おっちゃんは酔っ払いや。酔っ払って気分がええんや。あほほど暑いけど、気分はええ。わかるか? 酒はなあ、友達や。酒は、うまいで。(と飲む)んー、うまい! ‥‥どや、そこの元気な女子小学生、飲んでみるか?(と、ビンを差し出す)
グリ  いらんわ!
おっさん  ほー、いらんのか? ‥‥まあ、ジャリには、この味はまだわからんやろなあ。
グリ  そやから、ジャリやないって!
グラ  お姉ちゃん!
おっさん  おい、ギターの兄ちゃん! せっかくギター持ってるんや。何か歌え!
少年  え?
おっさん  そやから、歌えって。
少年  え?
おっさん  そやから、歌ぐらい歌えるんやろ? 景気づけに何か歌ってくれや。
少年  え? はあ‥‥。でも‥‥何を?
おっさん  そやなあ? 何がええかなあ? うーん‥‥。よっしゃ!「なみだの操」! 「なみだの操」歌てくれ!
少年  え? 「なみだの操」?
おっさん  そや、「なみだの操」や。ほれ。
少年  ‥‥すみません。‥‥それ、知らないです。
おっさん  え? 知らんの? 「なみだの操」やで?
少年  あ‥‥はい。
おっさん  ごっつ有名な曲やで? ‥‥女子小学生、知っとるやんな?
グリ  知らん。
グラ  知らん。
おっさん  何や、何や‥‥これやからイマドキの若いもんは!
少年・小学生達  ‥‥‥。
おっさん  ほなら、もうええわ。もうギターはいらん。ギターはいらんから。おっちゃんが歌う。
少年・小学生達  ‥‥‥。
おっさん  はい、手拍子!(手をたたく)
少年・小学生達  ‥‥‥。
おっさん  手拍子!

  少年、小学生達、しぶしぶ手をたたく。

おっさん  ♩あなたのために守り通した女の操
      今さら人に捧げられないわ
      あなたの
小学生達  あなたの
おっさん  決してお邪魔はしないから
      おそばに
小学生達  おそばに
おっさん  置いてほしいのよ
      お別れするより死にたいわ 女だから

  少年、小学生達、拍手。

おっさん  さんきゅー。ありがとう。ありがとう。‥‥うーん。今日は気分がええ。実に気分がええな。‥‥ほなら、兄ちゃん、女子小学生。名残は尽きひんけど、これでお別れや。また逢おう。‥‥そや、JKが来たら、伝えておいてくれ。マイケル・ジャクソンがよろしくって、な。‥‥それじゃ、あばよ。
小学生達  バイバイ。
おっさん  ♪ジョニーが来たなら伝えてよ 百年待ってたと?

  おっさん、去る。

グリ  ‥‥なんや、あのおっさん?
少年  さあ?
グラ  さあ?
グリ  へーんなの!

  音楽。
  暗転。




  チャイム。
  教師と女子高生たちが立ってる。

教師  はい、それじゃ座って。

  女子高生達、座る。

教師  みんな、残らせてごめんね。この後、用事がある人もいるだろうから、なるべくパパッと終わらせます。
初めに言っておきますが、これだけは約束して下さい。
今から話すことは、学校外の人に言ったり知らせたりは絶対にしないこと。ラインとかツイッターもダメですよ。よろしいですか?
‥‥‥。よろしいですね?

  パラパラと「はーい」の声。

教師  あの、もう知ってる人もいるかもしれないけど、実は、小川さんが、火曜日の夜から家に帰ってません。
昨日、小川さんのお母さんから連絡がありました。
それで、みなさんにお願いなのですが、小川さんの行き先などについて、心当たりのある人、何か知っている人は、先生に連絡して下さい。伝え聞いた話とか、うわさ話みたいなのでもかまいません。どんな小さな情報でもかまいません。
小川さんのお母さんは、今、必死に捜しておられます。でも、このままの状態だと、一両日中には警察に正式に捜索願いを出さなければならないということでした。
ですから、できれば、それまでに見つけたいのです。学校としても小川さんの御両親としても、そのことを強く強く願っています。みなさんの協力をお願いします。
先生からは以上です。‥‥何かありますか?

優奈  はい!
教師  はい、山田さん。
優奈  それって、誘拐事件とちゃうんですか?
教師  うーん。その線はないだろうって、お母さんはおっしゃってました。
優奈  そんなん、なんでわかるんですか?
教師  まあ、総合的な判断です。詳しいことは言えませんが。
優奈  はい!
教師  はい。
優奈  美樹ちゃん、一学期の成績が悪かったんです。一年の時はオール5やったのに、今回のはふつーでした。それで、怒られるのがかなんから家出したんとちゃいますか?
教師  はい、ありがとう。成績のことは先生も気になってました。‥‥他には?
郁子  はい。
教師  はい。木下さん。
郁子  あの、小川さん、ブランド物をけっこう持ってたんです。グッチの財布とか、エルメスのバッグとか‥‥。それで、これはうわさなんですけど、何か繁華街でバイトをしてるみたいとか、派手な化粧をしてたのを見たとか、そういうのを聞いたことがあります。
教師  ああ‥‥そう‥‥なの? ‥‥木下さん、貴重な情報をありがとう。‥‥他に、ありますか?
優奈  はい!
教師  はい。山田さん。
優奈  美樹ちゃんっぽい子が、ヤンキーみたいなプー太郎みたいなオヤジみたいな男の人と歩いてる写真を見たというツイッターを友達の友達が上げてました。
教師  ああ、そうですか。他には?
優奈  はい!
教師  はい。
優奈  美樹ちゃんとこのネコが、五月に死んだそうです。確かエミリーちゃんという名前で、真っ白なネコでした。確か十歳って言ってました。
教師  他には?
優奈  はい! はい!
教師  もうないみたいですね。‥‥もし、思い出したり、ここでは言いにくいこととかあったら、職員室でも、電話でもいいから、お願いします。
それでは、終わります。
優奈  はい!

  教師、去る。

優奈  郁子、郁子、今の話、ほんま?
郁子  ああ‥‥うん。
優奈  何でそんなん知ってるん?
郁子  クラブの子が言うてたんやわ。
優奈  美樹って、何部やったっけ?
希美  テニス部。
郁子  何かなあ、三学期ぐらいから、あんまり部活に来んようになって、その頃から何か様子がおかしいねんて。何となく感じが変わったって。
優奈  それは、あれやな。JKなんちゃらやな。
希美  JKお散歩! JKビジネス!
優奈  それや、それ!
希美  へぇ、あの子がねぇ。
優奈  まあ、人は見かけによらんって言うしな。‥‥なあ、綾乃。
綾乃  え? 何?
優奈  あんた、その辺のこと知らんの? あんた美樹の親友やろ?
綾乃  うーん。あんまし。‥‥まあ、何かあるんかなあって気はしてたけど。
優奈  それだけ?
綾乃  ‥‥うん。
優奈  親友が非行に走ってるのに、それだけ?
綾乃  ‥‥‥。
郁子  まあ、女の友情はあてにならんって言うしな。
希美  ああ、それは言えてる。心当たりがあるあるやな。
郁子  何やの、それ? ひょっとして、それ、うちへの当てつけか?
希美  え? さあ? 何のことでしょう?
郁子  もう! むかつくな、この女!
希美  キャー! およしになって。およしになって。
郁子  許さん! 打ち首じゃ!
希美  あーれー。
郁子・優奈  アハハハハ。
桃花  もう、あんたら!
郁子・希美・優奈  え?
桃花  ‥‥もう、ええかげんにしてよ。
郁子・希美・優奈  ‥‥‥。
桃花  美樹ちゃん、家でいろいろあって、大変やったんよ。それを、JKビジネスやとか、非行やとか‥‥。知らんくせに適当なこと言わんといて。
郁子  ‥‥いろいろって‥‥何?
桃花  それは‥‥。

  綾乃、口に指を立てる。

桃花  ‥‥まあ、いろいろあんねんか。‥‥家の事情が。
郁子  ‥‥そんなんわからんやん。
優奈  そやわ。‥‥うちら、ほんまに知らんのやから、しゃあないやん。
希美  ‥‥そんなん、怒られてもなあ。‥‥うちら、別に美樹の悪口言うてるんやないんやし。
優奈  うわさでも何でもええって、先生が言わはったんやで。なあ?
郁子・希美  うん。
桃花  ‥‥‥。

  気まずい沈黙。

優奈  ‥‥ほな、帰ろか。
郁子  うん。帰ろ。
希美  かき氷食べへん?
優奈  あ、それええなあ。‥‥でも、今日、あんましお金持ってへんねん。
希美  クーポン持ってるでー。ちょうど三枚。(と、クーポン券を見せる)
郁子・優奈  おおー。
希美  と言うことで! 
郁子・優奈  ラジャー!
希美  では、おのおの抜かりなく。
郁子・優奈  おおー!

  郁子・希美・優奈、去る。
  桃花と綾乃が教室に残る。
  しばしの沈黙。

綾乃  ‥‥桃花。
桃花  ‥‥‥。
綾乃  ‥‥ごめんな。
桃花  ‥‥別に、あんたが謝ることないやん。
綾乃  ‥‥そら‥‥そうやけど。
桃花  ‥‥そやろ?
綾乃  ‥‥うん。

  しばしの間。

桃花  あーあ。‥‥美樹、どこ行きよったんかなあ?
綾乃  ‥‥‥。
桃花  もう! さっさと出て来いよー! あほ!ぼけ!かす!
綾乃  ‥‥‥。(少し笑う)
桃花  ‥‥‥。(少し笑う)

  音楽。
  暗転。




  明かりがつくと、公園。
  少年と小学生達。桃花と綾乃もいる。

少年  ふーん。家出ねぇ。
綾乃  うん。
桃花  それで、その離婚の話が絡んでるのは、確かなんやろけど。
少年  うん。
桃花  でも、それだけではちょっとわからん気もするんやわ。
少年  ああ‥‥その、JKビジネスの話?
桃花  まあ、それはあくまでウワサやけどね。‥‥そんなことする感じの子ではないし。
綾乃  でも、確かに、二月頃から、ちょっと変かな?って感じがせんでもなかったわ。‥‥言われてみれば、やけど。
少年  うん?
綾乃  何か隠してるっていうか、秘密があるっていうか。‥‥一緒にアホな話をして笑ってる時でも、目が笑ろてへんかったような気がする。それに、たまにひどく疲れたみたいな顔してたような気もする。‥‥まあ、それも今から思えばやけどね。
少年  ふーん。
桃花  それで、スナフキンはどう思うかなあ?って思って。
少年  え? 何で僕?
桃花  そら、スナフキンやし。こういう時はやっぱりスナフキンやろ?
少年  え?
綾乃  何か私らなんかよりずっと人生経験が豊富そうやし。何か哲学みたいなん持ってるみたいやし。
少年  いやいや。
桃花  謙遜せんでもえーから。
少年  いや、謙遜じゃなくってさ。
グリ  よっしゃ。わかった。
桃花・綾乃  ん?
グリ  わしが代わりに相談に乗ったろ。
桃花・綾乃  はあ?
桃花  何言うてんの? この子?
綾乃  さあ?
グリ  JK諸君。JSを見くびったらあかんぜよ。
グラ  あかんぜよ。
桃花  JS‥‥って何?
少年  女子小学生。
桃花  あ、ああ。
グリ  で、何や? 離婚の話か? まっかせなさい。
グラ  まっかせなさい。
桃花・綾乃・少年 ‥‥‥。
グリ  わしら、専門家やしな。
グラ  うちら、専門家やしな。
グリ  何を隠そう。わしら、生まれつきの母子家庭や。
グラ  お父ちゃんの顔も知らん。
桃花  ほう。
グリ  それに、ママはお水やってる。
グラ  夜のお仕事とも言う。
綾乃  ほう。
グリ  どや?
グラ  参ったか?
桃花  いや、参ったかと言われてもな。‥‥それにしても、小さいのに苦労してるんやな。
グリ  別に苦労はしてへん。
グラ  苦労はしてへん。
グリ  自分のことをかわいそうとか思ったことはない。こんなんは、今の世の中、ようある話や。
グラ  ようある話や。
グリ  それぞれの家には、それぞれの事情ちゅうもんがある。ただそれだけや。
グラ  それだけや。
グリ  わかったか?
グラ  わかったか?
桃花・綾乃・少年  おおー。(拍手)
桃花  すごいな。この子ら。
少年  すごいだろ?
綾乃  うん。すごい。
グリ  ほめても何も出ーへんよ。
グラ  出ーへんよ。

  桃花、綾乃、少年、笑う。
  そこへ、変なおっさんがやって来る。

おっさん  やあやあやあ。レディース・アンド・ジェントルメン。
グリ  うわ。また来よった。
グラ  お姉ちゃん!
おっさん  おおおー。今日はマジもんのピチピチのJKがおるやないか?
桃花  な、何? この人?
綾乃  さあ?
おっさん  大丈夫。大丈夫。おっちゃんは、こう見えても、決して怪しい者ではない! ‥‥ただ、あれや。ピチピチのJKの皆さんと、友好を深めたいといつも心から願っている心優しい通りすがりのおっちゃんや。
桃花  十分怪しいって。
綾乃  う、うん。
おっさん  親愛なる女子高校生諸君! こうして巡り会えた幸せに感謝して、大いに親睦を深め合おうではあーりませんか!
桃花  悪い。ちょっと用事を思い出した。
綾乃  ほな、またね。

  桃花、綾乃、逃げようとする。

おっさん  待てい!
桃花・綾乃  ひっ。
おっさん  待たれよ、さらば与えられん。何もおっちゃんも、タダでJKにお付き合いしてもらおうとは思っとらんで。ちゃんと、この出会いの佳き日を記念して、スペシャルなプレゼントを用意してあるんや!
桃花  スペシャルなプレゼント?
綾乃  何、それ?
おっさん  出でよ! スペシャル・エグゼクティブ・ゲスト!
桃花・綾乃  ?

  美樹が現れる。

桃花  あ。
綾乃  美樹!
美樹  ‥‥桃花、綾乃。‥‥こんにちは。
綾乃  こ、こんにちはやないって!

  桃花、綾乃、美樹に駆け寄る。

桃花  あんた、どこ行ってたん?
綾乃  あんた、何してたん?
美樹  ‥‥このおっちゃんと、一緒にいててん。
桃花・綾乃  え!(おっさんを見る)
おっさん  イエス・アイ・ドゥー! ドゥー・ユー・アンダスタン?
桃花・綾乃  え?
桃花  そ、それ、どういうこと?
美樹  ‥‥そやから、一緒にいててん。ずーっと一緒にいててん。
綾乃  ずーっとって?
美樹  ‥‥ずっと、ずっと前から。‥‥こんなおっちゃんやけど、ほんまにええ人なんよ。優しい人やねん。
桃花・綾乃  え?
おっさん  イエス・アイ・ドゥー! ドゥー・ユー・アンダスタン?

  少年、ギターを弾き始める。
  歌。(ザ・ブルー・ハーツ「青空」)

少年  ♩ブラウン管の向こう側 かっこつけた騎兵隊が
    インディアンを撃ち倒した
    ピカピカに光った銃で できれば僕の憂鬱を
    撃ち倒してくれればよかったのに

美樹以外 ♩神様にワイロを送り 天国へのパスポートを
     ねだるなんて本気なのか
     誠実さのかけらもなく 笑っているヤツがいるよ
     隠しているその手を見せてみろよ

     生まれた所や皮膚や目の色で
     いったいこの僕の何がわかると言うのだろう

     運転手さんそのバスに 僕も乗っけてくれないか
     行き先ならどこでもいい
     こんなはずじゃなかっただろ? 歴史が僕を問い詰める
     まぶしいほど青い空の真下で

  歌のハミングが続く。

美樹  一月二十六日、晴れ。私の十六回目の誕生日。もう十六年も生きたのだと思う。まだ十六年とも言えるけど。この国では、十六歳になると女性は結婚できるらしい。まあ、とりあえず私には関係ないけど。
家に帰ると、ママが大きなケーキを買って待っていた。私のバースデイ・ケーキらしい。二人で食べるのには大きすぎるケーキだ。
母  お誕生日おめでとう。ママはね、一年中で今日が一番うれしいの。あなたがそばにいてくれて、こうしてあなたの成長を見られることが、ママの一番の幸せなのよ。
美樹  最近、うちではおこづかいという制度がなくなった。私がねだると、ママはいくらでもお金をくれる。意地になって何万円も要求したこともあったけど、何だか馬鹿らしくなったのでやめた。
ありがとう。あなたは、私にとって最高の母親です。
それにしても、大きすぎるケーキ。テーブルの上に無残に残ったケーキの残骸。こうやって我が家は朽ちて行くのだなと思った。こうやって私も朽ちて行くのだろうか? あんまり考えたくないけど。
週末の夜に街に出かけるようになった。親の離婚のせいで非行に走る娘。そんな野望を持たないわけでもなかったけど、あまりにステレオタイプすぎて恥ずかしくなってしまった。
レイトショーの帰りに、映画館の前でホームレスのおじさんに声をかけられた。「こんな時間に遊んでいるとあぶないよ。」と言ったけど、自分の方が危ないことに、どうして気がつかないのだろう?
おっさん  美樹ちゃん見てるとなあ、おっちゃんは田舎に残して来た子供のことを思い出すんや。ほんまにええ子やったんやで。もう結婚したんかなあ? 生きてるか、死んでるかもわからへんけどな。
美樹  五月五日、こどもの日。エミリーが死んだ。彼女がうちに来たのは、確か、私が小学校に入学した頃だった。一つの時代が終わったなと思った。人は、こうして一つ一つの時代を終わらせながら、自分自身のエンドマークを確認して行くのだろう。少しずつ確実に死んで行くのだろう。変な話だが、エミリーが死んで、何かが吹っ切れた。気持ちが軽くなったような気がする。
母  美樹、起きて。そろそろごはんにするわよ。
美樹  ママが食事を作る包丁の音がする。コツコツコツ。私もこの人と同じように生きるのだろうと思った。コツコツコツ。あなたは生きる。そして死ぬ。私も生きよう。そして、死ぬのだ。
窓を見ると、青い空。いつもより透明で、そして深い青。何だか吸い込まれそうな空だ。
もうすぐ、夏がやって来る。

全員  ♩生まれた所や皮膚や目の色で
    いったいこの僕の何がわかると言うのだろう

    運転手さんそのバスに 僕も乗っけてくれないか
    行き先ならどこでもいい
    こんなはずじゃなかっただろ? 歴史が僕を問い詰める
    まぶしいほど青い空の真下で 青い空の真下で
    青い空の

  強烈な光。
  セミの声。
  青空が浮かび上がる。
  暗転。




  明かりがつく。
  公園。
  ラジオ体操の音楽。体操をしている人たち。
  女子高生が二人歩いてくる。

郁子  こんなあほほど暑いのに夏休み終わりとか、こんなん詐欺やん。
希美  ほんまほんま。
郁子  まだ全然遊び足りてへんし。
希美  ほんまほんま。
郁子  希美、宿題できた?
希美  まあ、一応。‥‥今日の分はな。
郁子  今日の分って、どういうこと?
希美  そやから、今日提出せなあかんやつ。
郁子  え? ほな、明日とか、あさってのやつは?
希美  それは、今日と明日やん。
郁子  えー、あんた、案外頭ええな。
希美  そんなん、常識。
郁子  そやけど、読書感想文とか、どうすんの?
希美  それは、今日、帰りしなに、レンタルショップで映画のビデオを借りる。
郁子  えー、そんなん、ばれへん?
希美  ばれるかいな。うち、毎年、それで乗り切ってるし。
郁子  へー。ほんま、案外、頭ええんやな。
希美  そやから、案外は余計。

  女子高生達がやって来る。美樹もいる。
  口々に「おはよう」「おはよう」

郁子  うわ、もうこんな時間やん。急がんと遅れるで。
希美  ほんまや。もう、あんたがしょーもないことしゃべってるから。
郁子  うるさいな。行くで。
希美  うん。

    郁子、希美、女子高生達と共に去る。

    セミの声、大きくなる。

                            おわり

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