【読みもの】 1万円で買える幸せ〜ご飯土鍋とおひつのこと
炊飯器ではなく、直火でご飯を炊く。
日本人の歴史からすれば、その生活様式の方が長いはずです。最近またそういうご家庭も増えていると聞きます。
たしかに炊飯器は便利です。タイマー機能もあるし、今は各メーカーが入念に研究・開発をし、直火に近いような美味しさのご飯が炊ける高性能の炊飯器も市場に出回っています。
私も物は試しに、「土鍋内釜」を推しにしている、そのメーカーで最高の性能の炊飯器を購入してみたことがあります。
けれども、今ではほとんど使っていません。
今回は、日々の白ごはんについて、優れた道具を通して考えていきたいと思います。
1万円で買える幸せ
私の講演の中で、必ずお話しすることがあります。
この質問に対する回答はなかなか面白いです。年齢層や性別によって様々な答えが返ってきます。
「美味しいものを食べる」「欲しかった洋服を買う」といったものや、高校生の中には「ゲームに課金をする」といったものもありました。
これは正解のない問いなので、私は「なるほどなるほど」と相槌を打ちます。
その上で私が考える「1万円で買えるしあわせ」を提案します。
私が日頃お世話になっている京都の「職人.com」さんを通じて知った、このTOJIKI TONYAさんの「古伊賀ご飯鍋」。
白ごはんだと4合まで炊けて、どんな炊飯器よりも美味しくそして素早く炊ける優れものなんです。
私は日頃、2合炊くので、蒸らし時間を含めてもせいぜい30分あれば最高のご飯が出来ます。
このお値段が1万円(税抜き)です。
毎日食べる白ごはんが最高に美味しい。これって小さな幸せのように見えて、実はとても大きな日々の満足感に繋がってくるのではないでしょうか。
ご飯土鍋の秘密と美味しいご飯の炊き方
伊賀というのは今の三重県ですが、この地は古くから土鍋の生産が盛んでした。
焼き物というのは、土で作るものですから、食材と同じようにその用途に適した土がある場所でしか生産できません。
伊賀の土は、土鍋を作るのに適していたのでしょう。
「土楽」さんや「松山陶工場」さんのような有名な窯元さんも、伊賀で素晴らしい土鍋を作られています。
ここで紹介する「古伊賀ご飯鍋」はぽってりとした愛らしい形も私が気に入った要素の一つです。
蓋を開けると、まずは内蓋があります。この内蓋の存在が、普通の土鍋とは違っていて、よりご飯を炊くことに特化した作りとなっているのです。
さて、ここからは美味しいご飯を炊くために、「洗い米」についても併せて書いていきたいと思います。
土井善晴さんが分かりやすく「洗い米」について教えて下さっている動画があるので、よければご覧になってください。すごく分かりやすいです。
私も土井先生に直接この「洗い米」のことを教えて頂き、すごく腑に落ちましたし、実際に試すと本当に綺麗に美味しく炊き上がりました。
さらにこのご飯土鍋があれば、炊飯器よりもさらに早く炊き上がるので、前夜に「洗い米」をして冷蔵庫に入れておけば、朝の時間でもそこまで負担なく美味しいご飯を頂くことができます。
土井さんの仰るようにお米が白くなっているのがわかります。そしたら土鍋に入れて、水を入れて内蓋をして炊いていきます。
ここで驚かされるのが火加減です。普通の土鍋でご飯を炊くと、火加減を調整しながら炊かなければいけませんが、このご飯土鍋はその必要がありません。
最初から強火にかければいいのです。(潔くて素敵!)
写真では少し分かりにくいですが、2合ぐらいの量だと10分もしないうちに、ボコボコと音がして、上蓋の穴から蒸気が出てきます。
そしたら火を消して20分ほど放置。それで炊き上がります。
すごくないですか?炊飯器だと「早炊きモード」でももう少しかかるような気がしますし、なにより炊き上がりの美味しさが違います。
お米、つやつやです。
このご飯土鍋を生活に取り入れてから、私の日々の食事のメインディッシュが「白ごはん」になりました。
もちもちで甘い白ごはん、最高です。
1万円でこのご飯が毎日食べられるのなら、私は決して高い買い物とは思いません。
実際に、私の周りにもこの美味しさに感動して、同じ土鍋を購入した方が何人もいます。
ちなみに、土鍋でも炊飯器でも、炊き上がったご飯の一番美味しい場所はどこでしょう?
それは周りの縁の部分です。お米を炊く時に一番対流が起こっているからです。
炊き立てを頂くときは、この部分だけを粧って頂くのが最高ですし、大切な人に食べさせたいときは、ここだけ粧ってあげることもできます。
「冷ご飯」の方が美味しくなる?「おひつ」のこと
ご飯にまつわる美味しい道具として「土鍋」のことを書いてきましたので、もうひとつ、その美味しいご飯を保存する「おひつ」のことを書きます。
ご飯は炊き立てが美味しいのか。
この問いに対して、首を横に振る人は今の世の中そんなにいないのではないでしょうか。
しかし、土井さんはこれを「炊き立て神話」と呼んでいます。今は炊飯器に「保温機能」がついていますが、炊飯器の中でずっと保温し続けたご飯を「おいしい!」と感じるでしょうか。
これは土井さんの『おいしいもののまわり』という本に書かれた一節です。
土井さんは「冷ご飯」も甘さが増して美味しいものだと言います。しかしそれはきちんと保存された「冷ご飯」です。
今はプラスチック製のタッパーやラップに小分けにして、冷蔵や冷凍保存をする人が多いと思います。
しかし、それではご飯から余分な水分が出て、せっかく土鍋で炊いたとしても味は落ちてしまうのです。
そんな時に大活躍するのが、昔からある「おひつ」という道具です。
おひつの良さについては、土井さんの言葉を引用した講演のスライドがあるのでご覧ください。
私も土井さんに教えて頂いて、土井さんが使っておられる京都の「おけ庄」さんでおひつを購入して使っていますが、本当に優れものです。
夏場でも朝炊いたご飯を入れておけば、夜も十分美味しく頂けますし、ほんのりと木の香りが移ったご飯はそれはそれで優しく美味しい風味になるのです。
つまり炊き立てのご飯とは違った食感や美味しさが楽しめるということで、「冷ご飯」がそれはそれでまた美味しいというのは「おひつ」のおかげだと感じます。
ちなみに、先ほど紹介した「職人.com」さんでは、小さめのおひつが1万円程度で購入できますし、土鍋と併せても2万円です。
土鍋にさらに1万円足せば、日々のご飯環境が最高を通り越して極上になるといえます。2万円で極上のご飯環境が整えられるような炊飯器はおそらく売っていないのではないかと思うのです。
一人暮らしの方で、おひつに手を出すのは、、、と躊躇される方は、曲げわっぱでもいいでしょう。
福岡の博多曲物の名工・「柴田徳商店」さんの曲物などは、比較的安価で高品質の曲げわっぱを作られています。
1万円という単位を通して、美味しいご飯のまわりの道具を考えるお話、いかがだったでしょうか。
とにかくまずは、このご飯土鍋で炊いた白ごはんを読んで下さった方に食べて欲しい気持ちで書きました。
気になった方は、ぜひご購入されてみてください。
間違いなく、お家でのご飯が何倍も楽しくなるはずです。
※「ピースご飯」のレシピも併せてどうぞ。
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