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創作『君は知らないから教えてあげる』

やたら寄ってくる女の子がいる。
なんか人懐っこい女の子っているでしょ?
そんな感じ。その子の印象は、カバンに変なモンスターのキーホルダーをつけてる悪趣味なやつしかなかった。

「知らないだろうから教えてあげる!」
それが口癖なのか、俺が知ってるようなことでも説明してくる。
あと、そいつが雰囲気変えた話とか。(そんなの知るわけない)

正直悪い気はしない。めちゃくちゃ美人というわけではないが、美人と可愛いを混合したような女の子。だからブサイクでもないけど、、、って感じ。分類できない良さがある。

じっと見ていると、
「え?怒ってる?」
俺があまりに無言で返事をしなかったのか、そう伺ってきた。
「え?」
お互い、何を考えているのか、詮索するかのように見つめ合う。この数秒も悪くない。
クスクスッ。
そうして笑い合うのだ。
「あ、実験開始しなきゃ。」
卒業研究も半ば。ひらりとスカートをひるがえして、タタタッと去る。
ちらりと見届け、自分もデータ整理に向かう。


実験の合間に、彼と話すことがとても楽しいの。
絶妙な間のときに見つめ合うのがすごく好き。それでお互い笑い出すの。
そんなことしてるの、大学では私だけな気がして。
彼が何が好きで、どんな子が好きなのか。
まだ知らないから、たくさん探す。こーゆーのって生きてるって感じ。
付き合ってはない。
この両片思いが切ないような甘い関係が好きなのだ。
…この関係もあとわずか。さよならの期限がくるまで。

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