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学校へ行きたい娘の新たな居場所

年末に児童精神科の先生に刺激的な言葉をくらってからのぴぃさん。

現状に打ちひしがれるどころか、自分なりに考えて、2月に入ってからは少し活動的になっている。


私たちが住んでいる地域には、「適応指導教室」というフリースクールの他に、主に引きこもりの子供たちに向けた「新しい居場所」づくりという教育支援活動を行なっている場所がある。

去年、「適応指導教室」へ見学に行くとこまで行ったが、紆余曲折あり通所失敗に終わっていた。(いまだに悔しすぎて悲しすぎて記事にもできない・・・)

「新しい居場所」では、教育委員会に在籍している元教師の職員と、教師を目指している大学生とが2人1組になって、学校へ行けない子供たちの相手をしてくれる。

家から出られない子の場合は、お家に訪問して同じ時間を一緒に過ごしてくれるという。

何をするかは、本人が決めてよくて、場合によっては学習支援もしてくれるとか。

またここも、通所した日が学校への出席という扱いとなる。

この選択肢は今のぴぃに必要か、拒絶されないかともたもたとタイミングを見計らっていた。

1月の終わり頃、ぴぃの担任の先生が訪問してくれたときに、ぴぃに言った。

先生「ぴぃさん、知ってる?なんかね?大学生が家に来て一緒に遊んでくれる活動が市の教育支援であるみたいなのよ。どう?興味ない??」

ぴぃ「え?何それ?気になります。」

先生の口からあまりにもカジュアルな響きでぴぃに伝えられた。

これこれ。
私がタイミングを見計らって恐る恐るぴぃに打診するよりも、ぴぃが信頼している先生が、いい意味でガサツに伝えてくれた方が、ぴぃの警戒心も低い。

ぴぃが興味を持ったことで、すぐに窓口に連絡して、まずは親だけでということで1人で見学に行った。

場所は、土日だけ一般開放されているという青少年会館で、グランドも体育館も音楽室もある。

受付をしている広めの部屋では、3,4年生ぐらいの男の子が大学生とSwitchをしながら盛り上がってたり、5,6年生ぐらいの男の子とお母さんが職員と大学生と4人でトランプをしていたり、また別の部屋からは楽しそうな卓球の音が聞こえた。

勉強はしてもしなくてもいい。
Switchもタブレットも持ち込んでくれていい。
とにかく自分達が子供たちのやりたいことを一緒に取り組むことで、この場所を家以外の安心できる居場所の一つと思ってほしい。

教師をとんと昔に終えたであろう職員の方が、優しく話してくれた。

小学生までは親が付き添い、中学生からは慣れるまで親が付き添い、少しずつ母子分離をはかっていきましょうとのことだった。

これは、今かもしれない。

ぴぃは少し前に、2年生からまた学校に行けるようになるために、残された1年生をなんとか頑張りたいと言っていた。

児童精神科の先生からの刺激が、少しいい方向に働いたのかもしれない。

一瞬だけ入院も考えたようだが、一瞬でかき消して、入院以外の方法を自分なりに考えているようだった。

もう一つの出席扱いになる、月に2回の教育支援センターへの面談は続けている。

ぴぃはきっと、そことは別に出席日数を増やせるならと思うだろう。

見学から帰ってすぐぴぃに「新しい居場所」についての話をする。


ぴぃが大きく興味を引いたのは、音楽室にあるグランドピアノの存在。

ぴぃが小学校低学年のころ、習いたいわけじゃないけどピアノがほしいと言って、誕生日に49鍵盤しかない電子ピアノをプレゼントしていた。

弾き方が分からず、すぐに使われなくなったピアノは、いつかリサイクルショップに持っていこうとずっとしまったままになっていた。

今年になって突然ぴぃが、ピアノで弾きたい曲があるから出してと言ってきた。

Switchのゲームをやらなくなった代わりに、YouTubeを使ってピアノの弾き方を独学で覚え、夢中で弾くようになったぴぃ。

アニメの主題歌などを恐るべき早さで何曲もマスターしたぴぃは、最近散歩に出ると必ず立ち寄るのがショッピングモールにある楽器屋さんだった。

楽器屋さんにある88鍵盤のかっこいいピアノたちに触れ、マスターした曲を楽しそうに弾いていた。

私「新しい居場所には素敵な音楽室と素敵なグランドピアノが置いてあるよ。」

ぴぃ「行くっきゃないね。」

私が見学した次の日に、さっそくぴぃを連れて再び見学に行った。

残念ながら音楽室は見せてもらえなかったが、前日とは違うシルバー職員が得意の手品を見せてくれたこともあり、その場でぴぃの通所が決まった。


通所初日に紹介されたぴぃ担当の職員は、ぴぃの担任の先生と長年の友人であったことと、大学生はぴぃと同じ大のコナン好きだったことに恵まれた。

2月からの毎週水曜の1時間半は、新たに増えたぴぃの登校日。

過去3回は音楽室でグランドピアノを弾きまくった。

大学生がリクエストしたコナンのテーマ曲も1週間で仕上げて先日披露した。

来週は、体育館で体を動かす予定にしたようだ。


「本当は学校に行きたいんだけどな、これでいいのかな・・・」

と切なそうに笑いながらぼやいたぴぃ。

これでも大きな一歩なんだということに気づいていないぴぃは、これで満足とはしていない。

「新しい居場所」を見つけたことに伴ってか、滞在時間は1時間程度だが、学校への登校頻度も少しだけ増えた。

「学校に行きたいのに体が動かなくなっちゃうから、行きたい日は途中まで迎えに来てほしい。」

教育センターでの面談でそう伝えていたぴぃ。

それが担任の先生にしっかり伝達され、ぴぃが行きたいと決めた日は、担任の先生や他にサポートしてくださる先生が、途中まで迎えに来てくれることになった。

今まで、ぴぃが学校へ行くとなった日は、いつも私が学校まで一緒に行っていた。

進んだり止まったりを繰り返しながら、5分程度で着く距離を何十分とかけて登校し、下駄箱まできて決まって泣きべそをかくぴぃに「よくきたね」と言って、「がんばれ」とは言わずに見送ってきた。

先生のお迎えという最強の味方を手に入れた私は、玄関でぴぃを見送ることになった。

「行ってらっしゃい」「行ってきます。」

玄関でのこのやりとりが、こんなに尊いものとは思わなかったと改めて感じる。

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