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音響効果ってどんな仕事?2(本編選曲〜笑い足し編)

こんにちは。サウンドブリックスの上野です。僕は音響効果(音効)という映像に音をつける仕事をしています。前回に引き続き音効さんのお仕事内容をご紹介したいと思います。超ざっくりとした説明になりますので具体的な内容は省きますが、なんとなくでも音効さんについてわかってもらえたらうれしいです。

前回の投稿もご一読いただけると流れが理解しやすいと思います。

本編選曲

サブ出しの作業が終わり、収録が終わった後は本編の選曲作業になります。
収録で収めた映像を編集する事になるので、収録から本編の作業まではしばらく時間がかかります。音効さん的には収録が終わったら一段落、という感じです。
テレビの場合本編に関しては放送の尺に内容を収める必要があります。またどのタイミングで面白い部分を持ってくるか、どの部分でCMを入れるかなど放送される最終段階の仕上げになり、番組のクオリティが編集で変わってくるので担当者も慎重になるところです。
本編の編集を担当する人は様々なパターンがあり、僕が見てきた中では一番多いのが総合演出ですが、ディレクターが分業で行う場合もあったりします。また放送用にはポストプロダクションと言われる編集所でVTRを制作することになりますが、その前にオフライン(パソコン上で作った映像)だけディレクターが作ってその後編集所でのディレクションは別の人が担当する、なんていう例もあります。

本編でも選曲をすることになりますが、考え方としては基本的にはサブだしと同じです。場面に合った音楽やSEをVTRにつけていきます。サブ出しでなかった大きな違う点と言えばCMが入ることなどが挙げられます。

<本編での構成例>
サブだししてないVTR→スタジオトーク→サブだしVTR→CM

みたいな構成だったとしたらスタジオ部分には音楽はついていないので改めて選曲をする必要があります。また本編ではサブ出ししていないVTRが初めて登場する場合もあります。これを「本編差し込み」などのように言います。これも当然ながら音楽はついていないので選曲をする必要があります。

サブ出し部分に関してはサブ出しでつけた音楽を付け直していく作業が基本になります。僕が仕事をし始めた頃はサブ出しは一度作ったものをそのまま本編で使うことが多かったのですが、昨今は細かく修正等が行うため本編でサブ出しがそのまま使われるケースは少ないです。基本的にはサブ出し時につけていた音楽やSEは全て本編で差し替えていきます。その際サブ出しで気に入らなかったり、時間がなくてやりきれなかった部分を本編の時に修正することもできます。またサブ出しの状態から本編で大きく内容が変わる場合もあれば、あまり変わらないケースもあるので、これも番組によりけりといった感じです。本編時に大きな変化があれば作業時間は増える事になります。
またサブ出しの構成自体は大きく変わっていないくても映像は編集されていることが多いのでその際に編集された映像の尺に収めるように音楽も編集し直します。

このように一つ一つ丁寧に作り込んでいって本編の選曲作業は終わりです。
バラエティーの世界は納品の前日に1時間分の本編VTRが送られてくることなどもあり、スピードを求められることも多いと感じています。

笑い足し

本編選曲が終わったら「笑い足し」の作業に入っていきます。
最近ではテレビ番組などで笑いやリアクションが足されていることは周知の事実かと思います。笑い足しに関しては「あざとい」「うるさい」などと否定的に考えられる風潮もあるようですが、僕は笑い足しに関しては肯定派です。そのあたりの理由は後述します。

僕も好きなさっきーさんという元テレビマンのyoutubeチャンネルで面白く笑い足しに関して解説してくださっているので、こちらを事前にご覧いただくと理解が深まると思います。僕はこれをみて「わかるー」と爆笑してしまいました。


笑いの他に「えー!」「お〜っ」などバラエティや通販などでお馴染みのリアクションも足していくわけですが、僕は全部ひっくるめて「笑い足し」と呼んでいます。また笑いやリアクションなどを「ノイズ」と総称で呼ぶこともあり「ノイズ足し」のように言う方もいます。
さっきーさんの説明では笑いはMAという最終工程を行う場所でサンプラーを使いながら作業するとおっしゃっていましたが、この情報は少し古く最近ではMAの前には音楽も笑いも仕込んでおく、と言うことが常識となっています。

笑いには大きく分けて2パターンあり、スタッフだけの笑いとお客さんの笑いです。皆さんの笑いというイメージはお客さんの方かもしれませんね。スタッフ笑いで構成される番組は深夜帯で見られることが多いのですがゴールデン番組などでは派手さが求められるのでお客さん笑いの方が多いと思います。最近では実際にはスタジオにお客さんはいないけど、いるように演出したいという理由でお客さんがいる程で笑いを足す、なんてことも多いです。そうしたケースはベースの笑いがなく、音効さんだけの笑いで全て作り込むので作業は時間がかかります。
またスタッフ笑いの場合、場面を盛り上げると言うよりかはどちらかと言うと雰囲気的に寂しいから味付けとしてスタッフ笑いを足す、みたいなニュアンスが多いような気もします。

スタッフ笑いで行くのか、お客さん笑いで行くのかは決まっているものではなく担当ディレクターや総合演出の方と相談の上、方向性を決めていきます。

ちなみに笑いは収録の時に録音したものを後で整理して実際の現場笑いのストックを用意して足す場合もあれば、元々持っている観客用の笑いを使う場合もあり様々です。


笑い足しにも意味がある

なぜ笑いを足すのか?

笑いを足す事には意味があってやっているのですが、
先述しましたさっきーさんの説明によると

1.盛り上がっているように見せるため
2.「ここが笑いどころですよ」と伝えるため

この2点の理由が語られています。2番目の方は松本人志さんも同様のコメントをされています。

上記2点については僕も同意です。詳しくはさっきーさんの動画をご覧ください。ただ、音効的にはこの他にも笑いを足す大きな意味があると思っています。

3.編集点を整理するため
4.同調効果を狙う

と言うものです。

編集点を整理することは笑い足しの中で重要な役割のひとつとなります。編集点というのは元々の映像に関して編集エディットが行われたポイントになるのですが、その時にブツっと音が途切れたりノイズが入ったりすることがあり、これはそのまま放送してしまうとすごく耳障りな音になってしまいます。たとえばお客さんが爆笑していた場面とそれほど笑っていない場面を編集でつなげる場合は笑いの落差が生まれてしまい、映像的には自然でも音声的には不自然になったりすることがあります。そのときに編集点をまたぐように大きな笑いを上からかぶせると自然に聞こえるようになります。

本編では様々なところで編集点が存在するため、音声的に自然に聞こえるように笑いを足す、というのは笑い足しの根本の役割でもあるのです。

同調効果に関しては無意識に自分の考えや行動を、周囲に合わせて同調してしまう心理効果 のことです。

詳しくはこちらをご覧ください

僕は同調効果を狙った笑いを「誘い笑い」と呼んでいます。例えば飲み会などであまり面白くない話題だったとしても、周囲の人が爆笑してたらなんとなく面白い雰囲気だと感じて自分も笑ってしまう、みたいなことってありませんか?
テレビの笑い足しも同様の効果があるわけです。もし視聴者が面白いと思ってない場面が笑いを足す事によって面白いと思ってもらえるのであればその効果は非常に大きいと言えるでしょう。

以上のように様々な意味合いが笑い足しにはあり、僕は音効さんの大切なお仕事の一つとして捉えています。笑い足しにも技術が必要で奥が深いとおもっているのですが、その辺りはまたいつか機会があれば投稿します。

次回は最終工程である「MA」に関するお話をしたいと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。



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