無学の教育者 八重子おばさんの想い出 #6
お金を手にした八重子おばさんは、ベッドを下りると畳に正座した。それからしわくちゃになった500円札を丁寧に一枚一枚伸ばした。僕にはその時間がとても永く感じられた。実際、けっこう時間をかけていたんじゃないかと思う。
ひと通りお札を伸ばすと、きちんと揃えて両手で持って自分の額に当てるようにした。
そして僕にこう言ったのだ。
「ありがとう一郎くん。本当にありがとう。よかったあっ。一郎くんのおかげじゃっどおっ」
八重子おばさんはその姿勢のまま、深々と何度も何度も額を畳につけた。
僕はその場に突っ立ったまま、八重子おばさんをただ見ていた。
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