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ストーリー性が大切にされている「茶道具の取り合わせ」を知る

いま時代、コトづくりが重要とビジネスシーンで聞くようになりました。
モノがあふれている昨今、機能が優れているだけではモノは売れず、コンセプトやストーリーに付加価値を求められる時代になっています。
茶道でお客様をもてなす時には、茶道具のセッティングを、取り合わせ、しつらえ、などと言い、ストーリー性を持たせる組み合わせを考えています

今回は、道具のデザインや、物につけられた名前の「銘」を組み合わせることで興味深いストーリーがつくられていく「茶道具の取り合わせ」について説明します。

茶道具のデザインは千差万別

お茶の点前には、釜(お湯を沸かす)、水指(水をいれる)、茶器(茶を入れる入れ物)、茶杓(茶をとるスプーン)、茶碗、建水(すすいだ湯を捨てる入れ物)といった道具がつかわれます。
そのほか、湯をくむ柄杓、茶を攪拌する茶筅、布巾として使う茶巾が消耗品として用いられます。

この道具ひとつひとつに、ものすごくたくさんのデザインがあります。水を入れる道具の水指を例にあげると、ガラスでできたもの、どっしりとした陶器でできているのも、磁器に絵がかかれているもの、細長いもの、平たいものなど。
例えば、小ぶりの釜にガラスの水指を組み合わせると、涼を感じてもらいたい取り合わせになります。

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「銘」とは何か

茶道具につけられた名前を「銘」といいます。
花入を紹介したときに、ものの様子からネーミングし、ブランディングにつなげていることを説明しています。

https://note.com/soukyo/n/n19ccd3ce70d2

銘にまつわる逸話があります。
千利休が茶碗をいくつか長次郎につくらせ、茶会にあつまった客人に次々と好きなものを選んでもらい、お土産にしました。一つ残ってしまったものを利休は、これに「木守」と銘をつけて自分が持ち帰ることにしたところ、客人は皆その「木守」に魅力を感じ、自分が選ばなかった残り物にもかかわらず、皆、木守の茶碗を羨ましがったという逸話です。
同じ品でも、“残り物”ではなくて“木守”と名付けることで意味が生まれます。これが「銘」の面白さと思います。
そして茶道具の取り合わせに、銘があるとストーリーが膨らんできます。

お客様に合わせた取り合わせ

茶道は、亭主がお客様をお招きして、お茶を召し上がっていただく一連のもてなしと見たとき、そのお客様がどんなストーリーがお好きか想像して取り合わせを考えます。
あるいは、亭主がどんなストーリーを発信したいかによって取り合わせることもあります。

華やかな雰囲気にしたいのか、侘びた感じにしたいのかによって、同じ晩秋の時期でも、「錦秋」にするか「時雨」を取り合わせるかによって、全体のイメージが変わってきます。
上級者ですと、能や源氏物語に紐づけ、紅葉と言わず「龍田」の銘がついたものを取り合わせたりします。

源氏物語に詳しい方のお供でお客様になった時、瓢箪でつくられた茶器に、茶杓の銘が、“玉かずら”という取り合わせでもてなされました。
私には、さっぱりわかりませんでしたが、源氏物語のなかの夕顔の話に出てくる女性の名前が”玉かずら”なのだそうです。

さいごに

道具のデザインや、「銘」を組み合わせることでストーリーがつくられていく「茶道具の取り合わせ」についておわかりいただけましたでしょうか。
季節の取り合わせ、行事の取り合わせなど、具体的なお話を盛り込めていないので、わかりにくかったかもしれません。

ただ茶道の世界で、ストーリーが大切にされていることをお伝えしました。
D to Cビジネスではないですが、直接的にお客様の好みにささるメッセージを、「茶道具の取り合わせ」として亭主が発信することも、茶道のもてなしの考え方のひとつと私は思っています。


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