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『連載 椅子のない部屋』vol.0 前夜

ひょんなことから彼氏でもなんでもない人と一緒に住むことになった。
1週間くらいの期間限定。今日決まったことなのに、何故こうなったかは思い出せない。

その人との出会いはマッチングアプリ。

昨日初めて出会い、おうちに招待してもらって、
一緒のベッドに寝て、気付けば決まっていた。

『何だか小説の主人公みたい』

久しぶりに私の好奇心がにょきにょき芽生えて、
楽しそう、やってみたいと思った。


私は『集団行動』なんてものが大の苦手。
気持ち悪いと思ってしまう。
新入社員研修の全員で大声で挨拶する場面でも、口パクで乗り切ったほど。

それに今は一人暮らし5年目。
その生活に慣れすぎたのかもしれない。
実家に帰省して、東京の家に戻るとやっぱり1人が落ち着く、と安堵する私がいる。


『私は誰かと住むのは向いていない』
『結婚を前提にした彼氏との同棲さえも無理なんじゃないか』

ずっとそう思ってたけれど、
それでも何だか、人と住んでみたいと思ったのだ。

誰かと一緒に住むことで新しい自分に気づくかもしれない。
私って案外、人と暮らせるんだっていう発見・安心。その人の素敵な考え方に出会うかも!なんてこれから始まる毎日に少しウキウキしている。

予期せぬ出来事で、感情がバラつくこともあるだろうけど、 きっと私の大切な感情のひとつになる。

楽しみにしているのは、自分を知りたいからだと思う。

今年、社会人2年目。
新卒で入った会社を3ヶ月で辞めて、やりたかった仕事に転職した。

充実しているはずなのに物足りない。
私は趣味もないし、実はつまんない人間なのかもと思い始めていた。
何が好きなんだろう、本当はどういう人間なんだろうと、気になるようになった。

この期間を過ごすことで、自分の『何か』に気づけるだろうか。

そんな期待に心躍らせて、そうは言っても平然を装って、明日からに備えている。

かなも。

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