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化学産業とSotasには「日本を変革する」インパクトがある:ALL STAR SAAS FUNDパートナー陣 ✕ Sotas・吉元 座談会


Sotas(ソータス)では、「地球に長生きしてもらう」をパーパスに掲げ、素材のプラットフォームをつくりサプライチェーン全体を変革し、資源循環社会の実現に貢献するプロダクトの開発・提供を行っています。

現在は、化学業界向けの受発注・生産管理システム「Sotas工程管理」と、化学産業に特化したデータベース「Sotasデータベース」、化学産業のサプライチェーンにおける化学調査をシンプルにする「Sotas化学調査」を手掛けています。

2024年2月には、プレシリーズAラウンドによる第三者割当増資を行い、既存投資家のフォローオン投資に加え、新たにALL STAR SAAS FUND、三菱UFJキャピタル9号投資事業有限責任組合を引受先として、約3.4億円の資金調達を実施しました。

今回はそれを踏まえ、リード出資を務めたALL STAR SAAS FUNDのパートナー陣である前田ヒロさん、湊雅之さん、神前達哉さんをお招きして、Sotasへの出資理由や投資家目線での魅力について伺いました。

「Sotasには、日本のスタートアップ業界でも限られた企業にしか望めない、最先端のチャレンジができる環境がある」──SaaS企業を専門に投資する彼らは、Sotasにいかなる可能性を見出したのでしょうか。

日本の“ブラックボックス”、化学産業に挑むSotas

Sotas・吉元裕樹(以下、吉元):今回はリード投資を務めていただき、ありがとうございました。ご出資を踏まえて、本日はSotasの魅力や可能性を外部からの目線で伺えましたら幸いです。まずは率直に、Sotasへの投資に至った理由からお聞かせください。

ALL STAR SAAS FUND・前田ヒロ(以下、前田):Sotasに投資した理由は様々ですが、まずは経営者と経営陣です。スタート間もないフェーズでは「人」の優位性が非常に高いであると考えたとき、集っている人のバックグラウンドや共にする意志はとても大切です。吉元さんたちが抱く化学産業への深い思いやインサイト、課題解決への着眼点は魅力でした。

さらに、Sotasが狙う化学業界というマーケットにも大きな魅力を感じています。経済産業省の算出によれば、化学産業は製品出荷額で約46兆円、付加価値額も約18兆円あり、製造業全体の1割強を占める。自動車や電子機器といった分野にも必要不可欠な素材を供給する基盤産業です。それでいて、世の中に明確なソリューションがなく、需要は高いですから。

ALL STAR SAAS FUND・湊雅之(以下、湊):僕は、大学院を卒業して総合化学メーカーのBASFに勤めていたこともあり、自称「化学大好きキャピタリスト」なんです(笑)。僕が化学を好きな理由の一つは、現代に化学を用いない産業は無いと言えるいえるからです。

たとえば、ハーバー・ボッシュ法がなければ化学肥料はなく現代農業はできなかったでしょうし、化学のプロセスの塊である半導体がなければ世間を賑わす生成AIもありえない。さらに、製造業全体に変革期が訪れています。二酸化炭素の排出量をトラッキングするにしても、当然に化学の助けは欠かせません。

しかし、化学産業は小規模なプレイヤーも多く、商流が複雑で、全体がブラックボックスになっているのが実情です。そういった実情を理解し、紐解きながら、スピード感を持ってアプローチできる企業はいませんでした。Sotasはそれらを実現できる可能性があり、業界を変革する意気込みがある。産業に与えるインパクトの大きさも含めて、魅力がありますね。

Sotasが掲げる「化学産業データベース」構想の勝ち筋

吉元:確かに化学産業は、全ての産業の「縁の下の力持ち」というイメージがあります。関わる産業が多いからこそ、単一のプロダクトでは賄えないと考え、Sotasでは複数プロダクトを展開する、いわゆる「コンパウンドスタートアップ」を創業時から志向しています。
そこで、以前にもご自身のnoteでコンパウンドスタートアップについて論じていらっしゃった神前さんに、その観点から見た「Sotasの強みや可能性」をお聞きできると嬉しいです。

ALL STAR SAAS FUND・神前達哉(以下、神前):私が物流やECプラットフォームの企業に投資をしていて感じるのは、特定の業界や業種に特化した「バーティカルSaaS」の基本戦略は、データベースを押さえてから拡張するためのアプリケーションを作り上げることにあります。そして、バーティカルSaaSにおけるコンパウンドスタートアップ戦略は、業界を横断したバリューチェーンの統合と、それをやりきれる企業が勝つと考えています。

言い換えると、業種を問わず利用されるような「ホリゾンタルSaaS」で分断されていたアプリケーションを、一企業の中へ統合していくことが鍵になる。Sotasもそれに挑む一社だと思います。ブラックボックスな化学産業へ提供するSaaSを切り口に、いかなるデータベースを構築し、ステークホルダーとなる顧客へシームレスな体験を提供できるのか。

そこでは、業界全体を考えたシステム設計を基に、戦略を形作る企業が求められる、と私は考えています。吉元さんが構想されている「化学産業のデータベースになる」という構想は、まさにそのスタートラインに立つものであり、期待を寄せるところでもあります。

化学業界「外」のメンバーが活躍中。成長フェーズで広がるキャリア

吉元:前田さんから、スタートフェーズでは「人」の優位性が非常に高いというお話もありましたが、今回の資金調達を経て、Sotasもさらに成長していくべく、積極的に採用を進めていきます。Sotasにとって、どのような人材がいれば、さらに成長角度が高まるでしょうか?

神前:初期から複数のプロダクトを提供していくのは難易度が非常に高いですから、ビジネスサイドとしてはプロダクトマネージャーやマーケティング担当者は欠かせないでしょう。複数のプロダクトを提供することは、複数の事業を展開するのと同義です。それだけ、お客様もそれぞれのプロダクトで分かれてきます。

そういった環境では、お客様のフィードバックを回収し、マネジメントが優先順位をつけていかなくてはなりません。多くの企業は、たとえ単一のプロダクトを提供していても、ここでスタックしてしまうんですよね。また、SMBからエンタープライズへターゲットを変えていく際も、両者の切り分けが大切ですから、プロダクトマネージャーの役割は大事です。

もう一点、落とし穴になりやすいことは、複数の事業が走るほどに、吉元さんたち経営層は「足元の事業」にリソースを取られやすいのです。常に変化するマーケットニーズを捉え、各事業領域におけるプロモーションやプロダクトを考慮したマーケティング戦略が欠かせません。

セールスやカスタマーサクセスも必要ですが、そういった陥りがちな落とし穴から逆算して採用難易度が高そうな職種を考えると、プロダクトマネージャーやマーケティング担当者は筆頭ではないかと思います。

吉元:確かに、すでに3つのプロダクトを展開していると、日々のオペレーションや運営にリソースは割かれがちです。そこでマーケットを俯瞰しながら、共に戦略を立ててくれ、将来的にはCMOを担ってくれる方の必要性は実感しますね。

湊:プロダクトチームは間違いなく必要でしょうけれど、エンジニアチームの確保も肝心になるでしょう。というのも、化学産業は「全体的に」動きが遅いところがあり、その壁をSaaS企業としていかに破っていくのかを考えると、速いイテレーションが鍵になるのだとも思います。PDCAサイクルを高速回転させるためにも、カスタマーサクセスからのフィードバックも重要になってきます。

複数プロダクトにわたって、ユーザビリティの細かな話も相当な量が出てくるでしょうから、いかにそれを解きほぐして還流させる仕組みが作れるのか。その課題も前提とすると、一般的なSaaSスタートアップよりもレベルが高く、だからこそチャレンジングで面白いとも言えるのでしょうね。

前田:そういった、まさに「現状を理解する力」が重要である、と僕は考えます。現在のフェーズでマルチプロダクト戦略を取る支援先を見ていても感じるのが、どうしてもプロダクトごとのクオリティがバラバラになりがちです。同一企業でありながらプロダクトの体験や基準が異なることを回避するためには、現状の理解力が欠かせません。

そして、課題があったなら、すぐに行動に移すこともポイントになってくる。逆に、それらがしっかり取り組めたのであれば、他社ではなかなか再現も追随もできなくなるわけです。

スタートアップ業界の最先端なチャレンジができる、日本でも稀有な環境

吉元:とても参考になるお話をありがとうございます。そういう意味でも、現在のSotasでは化学産業に関する知見や経験よりも、「既存産業にインパクトを残したい」といったスタートアップマインドを持つ方が向いているフェーズなのでしょうね。

実際に、現在は正社員メンバーが7名いますが、私以外は化学業界の出身者はいません。それでも、メンバーそれぞれがキャッチアップをしてくれています。一部の領域で言えば、すでに私より詳しいと感じる人もいます。学ぶ姿勢があり、興味や関心を持っていただける方なら、全く問題ないと思っております。

前田:確かに、Sotasには魅力がたくさんありますね。個人的に最も面白いと思うのは、市場への大きなインパクトです。化学産業という日本の主要産業の一つに位置づけられる重要な市場に参入しており、関わる人物が多い。さらに、SaaS業界においてもユニークなポジショニングです。日本経済に与える影響が見込めるので、やりがいも大きいでしょうから。

吉元:国内外のSaaSに精通する前田さんから、ポジショニングがユニークと言っていただけるのは嬉しいですね。ぜひ、どういった点でお感じになるのか教えてください。

前田:アメリカのSaaS企業で、コンパウンドスタートアップの代表例に挙げられる「Rippling」のCOOと先日対談したのですが、彼らが言うところには「全てのSaaS企業が、コンパウンドスタートアップ戦略を取れるわけではない」と。成立させるにはいくつかの条件があります。

その一つであり重要なのが、市場でのポジショニングです。そして、ステークホルダーが多く、解決が望まれる課題が山積しているなど、拡張性があることも大切です。それらの条件が全てのプラットフォームでつながってくると、より大きな価値として還元できる。まさにSotasは全てが揃っており、ユニークなポジショニングにある、と僕は見ていますね。

神前:コンパウンドスタートアップにチャレンジできる企業は、日本でもLayerXやSmartHRなどが出てきてはいますが、やはり条件面でも限られるだけに、まだまだ貴重です。それだけに挑戦しがいのある環境が待っている、と言っても構わないでしょう。

湊:そうですね。これだけ巨大な日本の化学産業を、本質的に変えていくのは相当に難しいとは感じつつも、Sotasは製造業のプロセスやデータの持ち方といった根本を変革していくための基盤になれる可能性がある。それだけに「日本社会を良くしたい、変革したい」という意志のある方には、素晴らしくフィットする企業ではないかと思います。

これは一人のキャピタリストとして感じますが、今日みたいに真摯にお話を聞いてくださる吉元さんをはじめとして、Sotasには「人間力の塊」みたいなメンバーが多いですね!どれほど事業が優れていても、そこで働く人たちが連帯できなければ、超えられない壁も多いものです。そういう素敵な人たちと働ける環境では、得られるものも大きいはずです。

吉元:メンバーにも、そういった好感を寄せてくださるのはすごく嬉しいことです!

また、日本社会に与えるインパクトを考える上では、おっしゃる通りのところがありまして、業界をまたがる影響の連鎖性がとても大きいです。化学産業が関わるのは自動車、食品、電気、電子、半導体など、あらゆる産業だからこそ、Sotasにいただくお問い合わせ先も業界や業種がまちまちですから。

Sotasが直面しているチャレンジの大きさ、業界での我々のポジショニングの重要性、そして何よりも働く人々の質が、Sotasの強みとも言えるのだと改めて認識させられました。

化学産業が、日本を牽引する。グローバルな組織で、その未来像に挑みたい

神前:僕からもぜひ聞かせてください。Sotasが将来、スタートアップならではの苦しい場面や試練を迎えることは避けられないと思います。そんな時もALL STAR SAAS FUNDは全力で支援したいと考えていますが、困難な状況でも経営を続けるためのモチベーションの源泉は何でしょうか?
吉元:ご質問、ありがとうございます。私の経営者としてのモチベーションの源は、尊敬する亡き父にあります。父は経営者として生きた人でしたが、彼の夢や会社として達成したいことを、私は知る機会がありませんでした。だからこそ、私自身の人生をかけて、お世話になった人々に対して自分が成し遂げたいことを明言し、その道を全うしたい。これが私にとっての「生き様」なのです。

私がSotasを立ち上げた理由は、化学業界で私を支えてくれた多くの人々への感謝の気持ちからです。そういった方々との温かい関わりがあったからこそ、社会人として成長できました。今度は私が価値を提供し、還元していきたいと考えています。

化学業界はアナログながらも、ITとの融合によって巨大なポテンシャルを秘めていることを確信しています。それによって、最大の価値を還元できるはず。もし、つらい時期が訪れたとしても、この大きなビジョンと、私を支えてくれている全ての人々への感謝がモチベーションになりますね。

湊:吉元さんの目から見て、日本の産業が30年後にどうなっているか、どうあるべきかについて、お聞きできますか?

吉元:私論であることを踏まえた上でお話しますが、日本の強みである「素材領域」が、日本を牽引する存在になっていると思います。

私が日産自動車に入社した時、日本は自動車産業に匹敵するほどの巨大産業を新たに生み出さなければ、このまま衰退していくと感じました。化学産業から自動車産業に転職したときのインパクトは、それほど大きいものでした。EVや自動化の進展を目の当たりにしながらも、自動車産業が牽引していくことの限界を認識したところがあります。

今後の日本の産業について深く考えるようにもなっていくと、私の願望も含んではいるのですが、やはり日本の強みはマテリアルや素材の領域にある。この分野が、次世代の産業として引っ張っていくと確信しています。自分の人生をかけて、それに貢献していきたいです。

前田:吉元さんは大企業の新規事業担当やスタートアップの取締役など、多様な経験を積んできましたよね。それらを踏まえたうえで、Sotasを作る上で重要視したことはあったのでしょうか?たとえば、「組織のこだわり」や「5年後のありたい姿」といったことです。

吉元:Sotasを立ち上げた時、私は「バリューは自分だけで作るものではない」と明確に決めていました。パーパス、ビジョン、ミッションについては私自身で考えましたが、バリューは創業メンバーやチーム全体で共に考え抜くことが大切だと思っています。

現在掲げている「6つのバリュー」は、昨年3月に合宿を開催してたどり着いたものです。これらのバリューが組織の道しるべとなり、私たちの組織を強くする要だと信じています。

さらに、将来的にはグローバルな組織を目指しています。前職の日産自動車でもグローバルな組織の良さを感じていたのも影響を受けていますが、異なる文化からの視点やアイデアが得られるのは最大のメリットです。

最後に、Sotasを「就職人気企業ランキング」でトップ10に入るような会社にしたい、という夢があります。この結果は企業の通信簿である、と私は捉えているからです。若い方々が働きたいと思える企業になりたいですし、Sotasを起点に化学産業がより魅力的になり、優秀な人材がさらに集まるようにもしたい。それは創業時からの変わらない思いですね。

(構成・文/長谷川賢人)

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