スクワットは深い方が良い?-可動域から考える競技動作の向上について-
エクササイズにおける適切な可動域は目的によって変化します。
スクワットは深い方が良い?
スクワットは深い方が良いか?SNSにはスクワット警察がはびこっています。これはフルだ、フルじゃない。正直トレーニングそのものが自己満足に近いんだからどっちでもいいじゃねえかとも思いますが、、
私はこんな本を出しているくらいなので、スクワットは深い方が良いという立場。基本的にYES。効率的に筋力向上を狙ったり、身体の機能性を鍛えるということを目的とするのであればスクワットはフルレンジで深く行うべきです。
ですが、骨の長さや形状などは個体差が非常に大きいです。人によってはフルで行うことが難しい場合もあります。柔軟性の問題で深くしゃがむと姿勢を保持できない場合や姿勢を保てる範囲の中で深くしゃがみましょう。
なぜフルレンジが推奨されるのか
トレーニングはトレーニングしている能力しか向上しません。
つまり、動かしている範囲でしか鍛えられないのです。筋力も柔軟性もその±5%前後の範囲でしか向上しません。なので目一杯可動域を使うことが推奨されています。
可動域によって使う筋肉が変わっていく種目もあります。この辺りが多関節種目のメリットでもあります。全身を効率よく鍛えられます。
人間の骨格筋は約400あります。平滑筋、心筋も合わせると全身で約600。これらは関節を大きく使うことで多くの筋肉を鍛える事ができます。
全面性の原則
偏りのある鍛え方でなく全身のバランスを考えてトレーニングを行いましょうというものです。
トレーニングでは競技特異的な能力を伸ばす前として基礎を養う事が大切です。基礎作りにはフルレンジを推奨します。
競技動作は必ずしもフルレンジではない
競技の動作はフルレンジで行われるとは限りません。例えばジャンプ動作。
高く飛ぼうとして、スクワットでのフルまでしゃがむことは少ないはずです。だから、ジャンプ力向上のためにはトレーニングでのスクワットもジャンプと同様のレンジで良い。
とはなりません。
ジャンプ力の向上にも屈曲の浅いスクワットよりフルスクワットの方が効果的だったという実験結果もあります。身体操作のスキルの向上なのか、筋力強化なのか目的を明確にして取り組むとよいかもしれません。
フルレンジで動くわけじゃないからフルスクワットでトレーニングをしなくても良いということにはならないのです。
適切なトレーニングを行う事で解消する諸問題
フルレンジでトレーニングを行う事で鍛え漏れを減らせるかもしれません。
ジャンプの中で臀筋が弱く股関節が上手く使えない事が問題であったとします。筋力が問題で動作にエラーが生じる。
フルスクワットやブルガリアンスクワットを行い臀部を強化することでジャンプのフォームも変化して跳躍力が上昇したケースもあります。取り組みによっては膝関節主体の動作が改善されないであろうケースも想定されます。
動作を変えるためには筋肉へのアプローチが必要な事もあります。トレーニングのフォームもトレーニングしていく中で変化する事も多くあります。四頭筋を強化する事で床を押す感覚が掴めてスクワットのフォームが変わったクライアントもいました。
全身性を踏まえた上で競技で貢献度の高い筋肉を鍛えるのがセオリー。アスリートといっても競技によって体型は大きく異なります。必要とされる筋肉量も部位も違うわけです。
陸上短距離でも走動作で膝関節の屈曲はそんなにないからとグッドモーニングのようなスクワットが流行した時期がありました。
一方で、ウサインボルトはフルスクワットに取り組んでいたんですよね。
〇〇がやっていたから、みたいなのは例として良くないですが。ボルトなんかはスクワットしなくても世界新更新しそうですし。〇〇がトレーニングやってないからトレーニングは不要!みたいなのも定期的に沸く話題。
ターゲットの筋肉を鍛えるための可動域とは
関節のフルレンジと筋肉のフルレンジは異なる
種目の中で負荷の抜けを感じませんか?トレーニングでは筋の緊張時間も大切です。(TUTは関係なく総量に依存するなどの説もあり意見が分かれるところですが)
大腿四頭筋狙いでスクワットを行う際、必ずしもフルボトムでのスクワットが適切とは限りません。スクワットでは大腿四頭筋も鍛えられます。が、スクワットでしゃがみ切った位置では四頭筋の緊張は抜けませんか?
筋肉から緊張が抜けないビルダーの上手なトレーニング
筋肥大を目的としてトレーニングするボディビルダーはターゲット部位のテンションを抜かずセットの最初から最後まで動作します。これは見方によってはレンジが狭く見えることもあるでしょう。
目的が違えば手段も変わります。
トレーニングでは関節を痛めつけたいわけではなく筋肉を強化するために取り組んでいるはずなので、負荷をしっかり筋肉で受け止める(関節に負荷を載せないようにする)事が大切です。
トレーニーの怪我予防のためのレンジ
前述の理由から収縮ポジションからスタートして筋肉のテンションが抜けない可動域で行う事をおすすめします。重量が重ければ可動域は狭くなりやすい。
なので適切な重量設定がトレーニング効果のためにも怪我予防のためにも大切です。
この辺を手軽に行うテクニックとしてノンロック法をおすすめします。セットアップとフォームが適切なら誰でも簡単に効かせやすく効果を出しやすいテクニックです。
漠然とフルレンジで行ったとて筋力が全域で強化されない場合もある事は頭の片隅に置いておきましょう。
動作を鍛える
動きの質を高める
動きに負荷をかける
動きの中で問題となる筋肉、その関与を高める&過剰な筋肉の関与を減らす
筋肉を鍛える
ここを繋げる必要があります。
スポーツでは緊張と弛緩のタイミングとコントロールが重要です。
トレーニングはベースアップが目的なのかスキルの向上が目的なのか?
オールインワン的なトレーニングより特異的なトレーニングの方が目的のアプローチに対しての効果は高い。
ですが、アスリートは競技練習もありトレーニングに割く時間は限られています。したがってあれもこれもと全部に取り組むわけにはいきません。
なので効率よくベースを作って(筋力、筋肥大)
競技特異的なトレーニングに移行するのが良いでしょう。かといってもベースを維持するための努力は必要だったり、必要とされる筋力レベルが高い競技もあるので一概には言えませんが。。。
「動き」を改善、向上させるために
「動き」というのも解像度が低い言葉ではありますが、今回のnoteではスポーツなどの競技動作の中で効率的な、効果的な動きと規定します。
そのためには適切な関節角度、姿勢が大切。
「姿勢」も難しい言葉ですよね。
日常でよい姿勢と競技の中でいい姿勢は違うはずです。(もちろん競技によっても違います)
実動作に負荷をかける
否定的な意見の方も少なくないでしょう
ストレングスの視点で見ればそりゃそうです。そもそもなんでウェイトトレーニングを行うのか基本に立ち戻って考えた方がいい。
でもスキル(身体操作)の感覚を掴むためにボディイメージを獲得するために負荷方向やタイミングが把握した上で取り組むならいい気付きを与えてくれるものかと思います。(通常のトレーニングとは違ったものですが)
過負荷をかけていくってイメージではありません。
ただトレーニングは漸増的に負荷を掛けるという原理原則は重量や回数だけでなく動きの質の向上という意味でも捉えています。
動きの質に着目して取り組むのも面白いかと思います。動きに関して指導できるトレーナーが少ない問題はありますが。
日常動作の改善などの機能改善を謳っている人が競技能力の向上に関して指導できるわけではありません。
「パワーポジションを作ろう」のレベルで思考停止していると競技動作の分析は難しいかもしれません。
動作の質の中で適切なタイミングで適切な筋力を発揮する、というものがあります。最初は無駄に力が入り過ぎていたり、逆に抜けていたり。
これも適切なタイミングや筋力発揮に近付けるためには適度な脱力を伴う必要があります。
姿勢制御、姿勢保持で過緊張する。
コツを掴んで力みを抜いていくとロスが減り動きの硬さも減ります。
力を抜くためには
筋肉をイメージするだけで筋収縮は起こると言われています。力を入れるスイッチはあっても抜くスイッチはない模様。
適切な脱力感の中で筋力発揮する必要があります。
そのために何をしたらいいのかについては、また今度。
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