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保育実習中に泣きたくなった瞬間の話

僕は今保育士として仕事をしている。
当然学生時代には数多くの実習を経験した。
その中で、自ら考えた活動(制作や運動遊び)を実習生が仕切り行う『部分実習』というものがあった。

僕はとある実習先の保育園で『ぶんぶんごま』というものを子どもたちと作った。5歳児の子どもたちは苦戦しながらも、こまを完成させ回し方を練習し楽しそうに遊んでくれた。
だが、予定していた時間より40分オーバーした。
子どもたちが行う工程が多過ぎた事が時間がオーバーしてしまった最大の原因だった。
改善点はしっかりと理解し次回からの実習に活かそうと思えたのも、その保育園の先生方が良かった所はしっかりと肯定してくださったからこそである。

実習生は落ち込むものだ。
初めて行く環境。周り全員が知らない人。そんな中で学校で教えられた良い実習生であらなければならない。そんなプレッシャーの中でうまく行くことの方が少ない。
でも、途中で止める事は許されない。だから必死で自分を立て直すのだ。
実習中、SNSで励ましの言葉を募集する同級生もいた。自分のストレスをつぶやく人。実習後に嫌だった事を友だちと分かち合う人。とにかく遊ぶ人。
皆んな必死だった。次に迎える実習に向けて必死で自分のメンタルを持ち上げようとしていた。

僕は実習に対してはかなり前向きな方ではあったが、そんな僕にもすごく辛かった思い出がある。

とある実習先の園でいつも通り部分実習をさせてもらう事になった。
僕は画用紙と新聞紙とお花紙を使ってフルーツを作る制作を考えていた。
計画書を書き担当の先生(A先生)と打ち合わせをして、GOサインをもらい準備に取り掛かった。

準備はかなり大変で、母や姉に協力してもらいなんとか間に合った。
本番は明後日、その前に一度園長先生に活動内容を見てもらうことになった。
僕は準備したものを持っていき一通りの流れを説明した。
すると「この活動は園の方針とは違うから別のものを考えてください」と言われた。
僕はすぐに理解する事が出来なかった。
「この人は何を言っているんだ。打ち合わせして
A先生にGOサインはもらったぞ」
僕はそんな事を思いA先生の方を見ると、そこには園長先生の言葉に頷くA先生がいた。

僕は絶望に近い感情を抱いた。帰りの電車で涙が溢れそうになった。電車に揺られながら母や姉にどう説明しようか、他の活動内容は用意してあったが計画書も書き直し、準備物もゼロからやり直し。
どうしたらいいのかわからなくなり、全てを投げ出そうとした。そんな時、以前ぶんぶんごまの活動をした園の先生方の言葉を思い出した。
「子どもたちと楽しく活動をしていた姿が素敵でしたよ!」

僕はこの時、もう一度ぶんぶんごまの活動をしようと決めた。
これまで、一度行った活動はもうやらずに、毎回新しい事をしなければならないとなぜか決め付けていたが、一度行ったものをブラッシュアップして行ったって良いじゃないかと思い改善点を踏まえ計画書を書いた。
その翌日にはもう本番。
もちろん準備はとてつもなく大変だった。
一晩で準備しなければならないと母に話すと母はまた準備を手伝ってくれた。徐々に希望が見えてきた。絶対に見返してやると思った。
必ず良い活動にしてA先生や園長先生に僕の底力を見せてやると思い必死で準備した。

そして当日。
活動は盛り上がった。時間はピッタリ。
その日1日子どもたちはぶんぶんごまに夢中になっていたのを、今でも覚えている。
その後の反省会で園長先生とA先生に更なる改善点を言われたが、正直何も覚えていない。
その時の僕は早く母に活動の成功を伝えたくて仕方なかった。
この時は本当に辛かったが、この経験は確実に僕の力になっている。

人間生きていれば必ず壁にぶち当たる事がある。でもそんな時、一回止まってもいいじゃないか。
後ろを向いて泣いたっていいじゃないか。
誰かに頼って助けてもらってもいいじゃないか。
人間はそれほど強くない。
強そうに見える人にもきっと弱さがある。
止まって後ろを見た時、僕はこれまでの僕の足跡を見た。
友だちと沢山遊んだあの日。家族と楽しく食事をした時間。辛くて投げ出したあの日。何かを成し遂げたあの日。
その全てが今の僕になっている。その全てが僕の力になっている。だからきっとなんとかなる。

これが僕のこれまでの経験から得た、辛い時の進み方だ。
僕はこれかも進んでいく。僕の進み方で。

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