一枚の手漉き紙の向こうに <夫婦世界一周紀39日目>
スリランカを去る前に使えるものは使っておきたい。「一本の鉛筆の向こうに」のオマージュは多分一生使えない。なんか長くなっちゃったけど。
僕とフウロは旅行中に世界で出会った素材を使って紙を作る「トラベルズペーパー」というプロジェクトをやっている。短い滞在期間の中で限られた道具と場所で紙を作ってさらに映像まで作ってしまうなかなか鬼畜なプロジェクトだ。
実はスリランカではずっと前に紙を作っていた。ウナワチュナに行く前、キャンディでスレイシュとツアーに行った日の午前中に。とにかくバタバタと作っていたし、その後もイベント目白押しで紹介もしていなかった。もうスリランカも終盤。コロンボでの最大の目的だったカレーも食べてしまって、紹介するものがないのだ。思い出したように紙のことを書こうと思う。
今回の原料は全部で4つ。
原料① 答案用紙
スリランカの国民食サモサに使われている包装紙は小学生の答案用紙だ。学校の古紙で作られた古紙が全国のサモサ売りに配られるシステムって、冷静に考えるとかなりすごいと思う。スリランカは社会活動推進国とも言われている。
原料② キングココナッツのおひげ
そういえば食べました。キングココナッツって大きさだけじゃなく、味もキングと評判なんだけど、僕はココナッツが好きな人と嫌いな人の違いは「初めて食べたやつの品質」じゃないかと思う。あたりはびっくりするほど美味しいが、はずれにあたるともう食べたいとは思わない。僕は人生初めてのココナッツではずれを引いたが、その後も何回か食べる機会があったのでココナッツはうまいものと知っている。でもキングココナッツとのお見合いは大失敗。二度と飲まない。
原料③ ウッドアップルのタネ
10年放置された軟式ボールは表面がひび割れてサイズも一回り小さくなり細かくヒビが入っているが、まさにそんな感じの果物だ。中身は梅干しがぎゅうぎゅうに入っているような感じ。香りも梅干しに近いし、思い出しただけで唾液が溢れるレベルの酸味。牛乳に混ぜて飲むとブォアブォアになるので、砂糖を混ぜて飲むのがスリランカ流なんだとか。タネがぎっしり入っていたので、このタネを紙に漉き込むことにした。
原料④ スリランカの紅茶
ベタだけど紅茶。スリランカは意外に紅茶を飲まない。もともとスリランカはコーヒーを栽培していて、紅茶を育てる文化も飲む文化もなかった。でもコーヒーの木の病気が全国に広まって全滅してしまったのだそう。ちなみにスリランカのコーヒーはめちゃくちゃ不味かったらしい。現地の人が言っていたから間違いないだろう。スリランカに侵略したイギリス人はコーヒー畑に紅茶を植えた。適度に高所があって栽培に最適だったからだ。スリランカの人にはコーヒーが全滅して路頭に迷うところを紅茶産業に救われたので、イギリスに対しての憎しみはほとんど無いらしい。スリランカでたくさん紅茶を買った。美味しかったけど、すっきりしすぎていて物足りなかった。というあ味に覚えがあったのだ。目を隠されてリプトンとスリランカティーの利き茶をしたらわからない。当たり前だ。リプトンの茶葉もスリランカの同じ畑で育っている。
紙がじっくりと乾いている姿が一番好きだ。この静寂がクモやらスレイシュやらに邪魔されたのが悔しい。でもなんとか4ヶ国目の紙づくりを終えた。僕もフウロも世界で紙を作るということに対しての自信がつき始めていた。
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ものづくり夫婦世界一周紀
2018年8月19日から12月9日までの114日間。 5大陸11カ国を巡る夫婦世界一周旅行。 その日、何を思っていたかを一年後に毎日連載し…
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