憧れの深夜特急でチェンマイへ。《夫婦世界一紀14日目》
力道山の試合を街頭テレビで見る光景のよう。彼らが見ているのはムエタイ。国技にされているだけあってすごい注目度。ただし、みんなスマホをいじりながら時折見る程度、歓声は上がらない。
バンコクで滞在するのは今日が最後だった。チェンマイ行きの電車の出発時刻は22:00。まさに深夜特急。飛行機でも行けるのに敢えて寝台特急を選んだのには訳があった。沢木耕太郎さんの深夜特急を読んで体を熱くしたのは19歳の時のこと。本には行動を生み出す力があると思う。こうやって僕が旅に出たのはよしもとばななさんのサウスポイント×沢木さんの深夜特急に違いない。
宿は早々と追い出されたので、10時間近く暇を持て余すことになった。今まで僕とフウロが観光していたところは、バンコクの端っこ。鉄道を乗る場所はサイアムというところにあって、中心街だった。フウロのお目当てはバンコクのアニメイト。店長は英語もタイ語も話せないのに赴任になった日本人だ。
たまたま遊びに行った時間に出くわし、一緒に写真を撮らせてもらう。アニメイトに置いてある商品はほとんどが日本のアニメのグッズだ。繁盛しているが、お客さんに日本人は僕たちしかいなかった。タイの中野ブロードウェイこと(勝手に)MEGA PLAZA然り、タイのオタクは結構進んでいる。
間取りを見ると、BLコーナーが結構いいところに陣取っていた。嘘かまことか、タイは男性の同性愛率が非常に高いので有名だ。ガチムチ系というよりも、みんなお化粧していて可愛らしい。母親に対する敬愛のあまり、みんなお母さんになりたいらしい。ほんとかな。
男性同士が腕組みして歩く姿はよく見かけるが、同性愛が盛んだということを一番感じたのは、スマホの中だった。twitterで流れてくるディスプレイバナーが軒並みBL読み放題のサイトの広告なのだ。男性とターゲティングされるだけでBLを勧められるとは。なんだか平和でいい。
駅のホームで待っていると、盛り盛りの化粧をした男性の3人グループが隣に座った。チラチラと僕を見ている。距離が近い。フウロからよく「ゲイにモテそうな体をしている」と言われるけれど、初めてそういう目線を感じた。いざ目線を浴びると怖いものだ。積極的にフウロに話かけて、既婚者であることをアピールしていると、やがて3人組は去っていった。
電車に乗り込むと、僕のベッドに黒くて小さいガサガサした物体が布団の中に潜り込んでいくのが見えた。汗がたらりと出たが、ここで寝るしかないのだと言い聞かせて勢いよくベッドに乗り込んだ。
目が覚めたらチェンマイだ。
ここから先は
ものづくり夫婦世界一周紀
2018年8月19日から12月9日までの114日間。 5大陸11カ国を巡る夫婦世界一周旅行。 その日、何を思っていたかを一年後に毎日連載し…
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?