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トゥヴァがそこにあった。 《夫婦世界一周紀 3日目》

「トゥヴァって知ってる?」

大学生3年の頃だったと思う。

妻のフウロが目を輝かせて僕に伝えたその国を聞いて、まず僕はフウロの間違いを正したのだ。

「多分、それキューバのことだよ。もしくはトンガ。」

僕は自他共に認める国旗オタクで、よくフウロにアンチグアバーブーダって知ってる?とか、セントビンセントおよびグレナディーン諸島が世界の国名で一番長いとか自慢していた。

しかし「トゥヴァ」は知らなかった。

聞けば聞くほど謎めいた国だった。

・高音と低音を同時に出す喉歌ホーメイの発祥の地
・ロシアとモンゴルに挟まれている
・ここに行くには個人機をチャーターすべし

いつかここに行きたい言ったフウロに「絶対に行きたいね」と言いながらも、一生かけても行けないだろうなと思ったことがつい昨日のことに思える。

あの時のフウロに言ってあげたい。

2018年の8月21日に、僕たちは本当にトゥヴァに行くんだよと。

ノヴォシビルスクからトゥヴァへ

興奮冷めやらぬまま目覚め、そそくさと窓にそばに立て掛けておいた紙を確認した。

そこにはちゃんと紙がある。夢ではないのだ。

息を飲みながら、ロシアの地で刻印を済ませる。

日本から持ってきた筆ペンで、各国の名前と作成日を記すのだ。

2018 8/21。今日は世界ではじめて紙を作った記念の日だ。

息つく間もなく、チェックアウトする。

Wi-Fiが繋がらずに困ったことを除けば、素晴らしいホテルだった。

旅慣れしていない体をしっかりと休ませてくれるふかふかのベッドに、心地よい風。

後に知ることになるが、ロシアで泊まったこの宿は世界一周中の滞在先でもトップ3に入るほどの快適な宿だった。

余裕を持ってトルマチョーヴォ空港へと向かう。

僕たちの乗る航空便はNordStarというシベリアの方しか就航していないマイナー会社だった。

電光掲示板にトゥヴァの行き先を示すKyzyl(クズル)の表示が出て、心臓が高鳴った。

本当に行くのだ。トゥヴァに行ってしまうのだ。

これでもかというほど現実に、すぐそばにあるのに、なぜか感覚はぼんやりとしていた。

急いで感覚を拾い集めないと感動の仕方を忘れてしまいそうだ。

そんなふわふわした気分は、NordStarの機体を見た途端に吹き飛んだ。

《300円で連載中:こちらから》「ものづくり夫婦世界一周旅行紀」は、一年前の今日世界を旅してきた僕たち夫婦の旅エッセイです。2018年8月19日から2019年12月9日までの114日間の記録をほぼ毎日連載します。一度購入して頂くと連載を全て読むことができます。
マガジンはこちら:https://note.mu/sosaku/m/maa929d234011

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外に出ることが出来ない今、旅をできること自体に価値が生まれつつあります。僕たちが見てまわった世界はもうないかもしれないけれど、僕らが家にいる時にも世界は存在していて、今日もトゥヴァだってニウエだってある。いつか全てが終わった時に、あそこに行きたいと思ってくれる人が一人でも増えたらいいなと思って、価格を改訂しました。 無料で公開したかったのですが有料マガジンを変更することが出来なかったので、最安値の100円に設定しています。

2018年8月19日から12月9日までの114日間。 5大陸11カ国を巡る夫婦世界一周旅行。 その日、何を思っていたかを一年後に毎日連載し…

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