プレゼン資料は視認性の高さが大切だ
某メディア企業「新規事業支援プロジェクト」の次回打合せにむけ、角刈り氏(上司)の作ったゴミ提案書を再編集するヒルズ氏。ストレスフルな環境の中、見るからにお嬢様だがチームで唯一戦力になりそうなアナリスト、通称お嬢氏が出勤、ようやく役者が揃うのであった。(前回)
いきなりだが、私ことヒルズ氏は眠い。
なにせ昨日は結局、ほぼ徹夜。
なぁ、今日は、
いや、今日も、愚痴から始めていいか?
◆帰らない上司
「資料チェックは俺がする」ーー。
普通、上司であれば当然の発言だが、角刈り氏の発言となると受け取り方が変わってくる。角刈り氏、残念ながら実力がない。奴のレビューが資料レベルを上げることはないだろう。
無駄だ。と思うものの新入りの私はやむなく了承。結果、無駄という言葉の意味を再認識することになる。
図形に影をつけろ、この文字のフォントはMSゴシック、矢印の先は大きく云々。さらに夜10時にもなって「うち、パワポのフォーマット決まってるんだよね」だと? あれはキレそうだったな。資料作成マニュアルの有無(*)を聞いた時「自由に作っていいよ」と言ったのは誰だ。
追い打ちをかけたのが、新人Boy氏の極めて低いパワポ・エクセル能力(*2)。
一体何を買われて採用されたのか。唯一の戦力はお嬢氏だ。シンクタンク出身らしく、調査能力とスライド作成能力はなかなかのもの。
夜11時、新人Boy氏を夜食買い出し要員に変更。
夜12時、角刈り氏、オフィスで爆睡。
結果、資料はお嬢氏と私で仕上げることになった。腹立たしい。
しかし、何はともあれ社長with佳乃氏レビューの時間だ。移動しようか。
◆資料は机いっぱいに
「そうじゃないんだ!」
社長の怒号が飛ぶ。
「こんな小さな資料が読めると思うか!」
怒鳴る社長を恍惚とした表情で眺める佳乃氏。オラオラ系が好きなのか?
お前、、、幸せになれよ。なぜか同情の念が沸いてくる。
さて、社長が気にしているのは視認性の問題か。レビュー用は紙でと言われたので印刷したが、確かにA4に2スライドは小さかったか。
「いいか、相手はすでに60歳越えだぞ」
って、、、うん? 相手?
まてまて、角刈り氏からは「打合せはモニターでプレゼン形式」と聞いていたが、紙なの? お嬢、新人Boy、そして私の3名が一斉に角刈り氏を見る。蟻でもいるのだろうか、角刈り氏、机をじっと見つめ表情に変化はない。
まあいい。重役向けは紙ってのはよくある話だ。ではA3に印刷して持っていくと、、、
「机いっぱいに広げられるようにするんだ! わかったな!?」
机、 いっぱい?
どういうことだ?
角刈り氏を再度見る。神妙な顔で頷いている。いや頷くところじゃないぞ、机いっぱいに資料が広がるって、どんな世界線だ?
「佳乃さん、ヒルズ君まだ知らないから指導してあげて。爆乳総務さんもちゃんと見ておくように」
佳乃氏の眼光が鋭くなった。
◆コンサル流資料印刷
結局、印刷の指示だけを受け取り社長レビューが終了した。机いっぱいに広がる資料作成を教えてくれるとのことで、佳乃氏の席へ移動する。どうやらこの会社では、総務も資料作成、印刷の手伝いをするらしい。
狭いスペースに新人Boy氏、爆乳総務、お嬢、そして私が並ぶ。一体何が始まるのだ、Kinko'sにでも頼むのか。
「では、まずポスター印刷を選択します」
!?
君はパワポのポスター印刷機能をご存知か?家庭用プリンターでは大判のポスターが印刷できない。よって、分割印刷をしてあとはノリで張ってよろしくってやつだ。文化祭くらいでしか使わないと思っていたのだが。
勢いよく印刷を始める佳乃氏。奴隷のようにプリンターに走る新人Boy氏。
「次は、カッターとノリを用意します」
本気なのか?
それ、本気なのか?
大体、誰も中身チェックしてないんだぜ?
お嬢が横で静かに目を閉じ、悟りを開きはじめる。いや、立ったまま寝ているのか? 頼む、君だけが頼りなんだ、戻ってきてくれ現実に。
どこを切って張ればいいかわからない新人Boy氏に代わり、爆乳総務が素早く仕上げていく。さすがの佳乃氏も何も言えない。有能総務と改名したいところだが、今日も目立つ爆乳ぶり、すべてにおいて突き抜けている。
印刷する佳乃氏、走る新人Boy氏、高速で貼りつける爆乳総務、悟るお嬢、静観する私。
こうして、資料という名のつぎはぎポスターが完成した。
(次へ)
(*)資料作成に命がけのコンサル会社では、資料作成マニュアルが整備されていることが多い。なんなら資料自動作成ソフトが導入されている場合も
(*2)パワポ、エクセルのショートカット暗記はアナリストの第一歩、大量に業務が回ってくるため高速で処理できないと戦力にならない
Twitter: @soremaide
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