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<短編>ヒーローの苦悩の隣で

昨日は頭痛がして何も書けませんでした。
毎日更新がまたもや開いてしまった今日、ちょっと頭を使う形での文章を綴りたいと思います。
完全撮って出しならぬ
ええ、今書いたホヤホヤさんです。
今日は <短編>ヒーローの苦悩の隣で をちょっと書いてみました。

そんなのいらないよという方はまた明日。


読んでやってもいいよという方ぜひ



ヒーローの苦悩の隣で

君を見かける様になったのは昨年の同じ頃の春だった。
僕は鮮明にその日のことを覚えている。
桜の花びらが落ちるある日の朝だった。

僕はいつもの様に憂鬱な朝を迎えていた。ここのところずっと人の目が気になって仕方ない。それは僕がヒーローでもないのにヒーローとされてしまったからだ。
今までは普通に挨拶ができていた近所のおばちゃんたちとの挨拶さえ、その後の井戸端会議で自分のことを話されているのではないかと思うとどうも面と向かって挨拶ができない。
自分がヒーローになるだけならともかく、僕がヒーローになる代わりに僕の祖父はダークヒーローまでいかないにしても孫の未来を変えてしまったおじいちゃんになってしまったのだから。

とにかく、憂鬱な1日の始まりである朝は僕にとってはとても気が重いものだった。なんだったら朝が始まって欲しくないくらいだ。

そんな中いつもの様に大学に行くため自転車で30分かけて着いた駅のホームで君と出会った。
朝早くのホームには普段はほとんど人がいなく、特に僕がいつも電車を待つ所は人がいなかった。
その日までは。

いつも僕が電車を待っていた場所はホームの外に大きな桜の木がある場所で、いつもの様に重い足取りでその場所に向かうとそこには君がいた。
桜の花が静かにひらひらと落ちてくる下にまるでその花びらが見えないかの様に君は立っていた。

この辺では見かけない制服で、そんなに大きくない街で同じくらいの年代の人間ならばほとんど顔見知りのこの町で、見かけない顔だった。

後から分かったことなのだけれど君は東京から事情があって一時的に親戚の家に居候している1つ年下の女の子だった。
凛とした顔立ちの君がいつもは僕以外の人がいない場所に立っていたから僕は気になったのではない。

僕が気になってしまったのは

君が泣いていたから。

でも悲しい顔をするわけでもなく、ただ涙がスーッと顔をつたう感じで、声をかけることは人と関わりたくないと思う前の僕でも憚れただろう。
そして、その横顔は凛としていて悲しい顔ではなかったからか僕は不謹慎にも美しいと思ってしまった。

結局、僕はその後君と1年近く何も言葉を交わさず、毎朝同じ場所で会うことになる。小さな町の噂に君が僕と同じ様に標的にされながらも君はそれ以来涙をしたこともなければ、むしろ楽しそうに見えて僕は羨ましかった。
でもそれは違っていた。
君は君で僕を見て頑張っていたのだと僕は昨日の手紙で知った。

「東京に帰るんです。母と一緒に暮らすことになって。1年あなたは何も思わなかったかもしれないけれど、ありがとうございました。」

そういって僕にくれた手紙。

そこには君が辛かった1年、それでも毎日何も会話を交わさないながらもホームで一緒になる僕と、ある意味「会う」のが習慣になっていたこと。
僕の噂を聞いて、みんなそれぞれの事情があっても頑張っているんだと思っていたこと。
ありがとう、頑張ってください、私も頑張りますという言葉と一緒に添えられていた。

僕には何もできなかったし、僕はまだ抜け出られてないのだけれど君のこの言葉でほんの少しだけ、僕も前に出ようと思えた。
ありがとう。


僕も近いうちこの町を出ようと思う。


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「僕の中の神様」を読んでくださっている方はもしかしたら気が付いたかもしれませんが主人公のanotherストーリーです。

書いて出しは難しいですねー

よかったら本編もぜひ


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