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予感

2022・1月追記:こちらのカケラから新作ができました。
詳しくはこちらから


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77回目の連番。新しい小説のカケラのショートショートの日。前回書いたときは企画書をなんていっていたのですが「全く」できておりません。方向性は定まってきているものの、核の「テーマ」まだきっちり絞り切れていないのもあり・・。
多分以前講座で教わったことで考えるとまだ大枠すぎて甘い。(気がする)というわけで今日ももう一編(次回は企画書・・だといいのですが)読み切り型、でも設定は一緒のショートショートをお送りします。

予感

その日はなんだか途中からクウの様子がおかしかった。
子守りAIのクウがまるで私に子守りされるかのようによく喋り、あちこち引っ張って歩かされたと思ったら今度は帰りたいと言い出したのだ。
「もうそろそろ帰りませんか?」
「え、まだ出てきたばっかりよ?」
「お腹すいちゃって」
「何いってんの?いつからお腹すくようになったわけ?」
「すくときはすくんです」
「・・あーそう」
私はクウを横目で見た。

AIのくせにお腹すくのかい。
冗談も程々にして欲しい。

「そういう顔は可愛くありません」
「はー、そうですねー可愛くなくて結構です」
「ねえ、帰りましょうよー」
「もう少し買い物してからね、クウがあちこち引っ張るから買い物するところにたどり着かないんじゃないー」
クウがため息まじりにいう。
「・・アオイは最近鈍感ですね」
こういうところだけは人間っぽくて本当に嫌だ。
「そう?」
「もう少し子供の頃は周りのことが見えていたように思います」
「丸くなったっていって欲しいわ」
「鈍感になった方がいいところと敏感でいいところがあると思うんですよねえ」
「・・そこにある花は綺麗よ?」
「・・そういう話ではないです」
そういいながらクウが花を摘んだ。
ここで私も流石に何かがおかしいと思った。クウが花を摘むということは通常しない。
AIは非常時でなければ他者を傷つけないように設定されているからだ。

何かがおかしい
そう思って私はクウの手元を見た。クウが花を胸に寄せる。
クウの胸の真ん中が赤くなっているのが私の目に入った。非常ランプだ。
子守りAIが守らなければいけない子供に危険が迫っていることを知らせるものだった。私は子供ではないけれど、クウは私のために存在しているAIだ。
AIは普段と違う状況を事細かに察知する。
人間では察知できない微量の煙などの匂いから始まり、心拍数や呼吸が異常に高い人がずっと近くにいることなどにも反応する。

『葵、クウの胸が赤いときはね、何か身に危険が迫っていることが多いから、できるだけその場所から離れるのよ、そしてそれを理解したことを伝える合言葉をクウと手を繋いで言ってね』

幼い頃私が祖母から何度も聞かされたことを思い出す。

合言葉、そうか・・だからか。お腹すいていると言っていたのは。
私はクウの手を握る。
「そうだね、わかる、<お腹すいたね>」
幼い頃から食べることが好きだった私と、食う(クウ)の合言葉を私が発するとクウがにこっとして手を握り返す。クウの手が温かい。同時にクウの非常ランプが消える。
常時ずっと非常ランプが付いていると逆に危険なこともあるからだ。子守りAIはもうだいぶ前から使われなくなっていて、クウは私を守るためにいるのだということを知らない人も多く、知られない方がいいことも多いため非常時であることが伝わったら消灯するのだ。
代わりに非常事態が収まるまではクウの手は温かいままだ。

クウの伝えたいことはわかった。
危険?ここで?
AIの誤動作?
いや、その可能性は低い・・仮にクウの誤動作だとしても、誤動作でない可能性がある以上、対処しないと。
何が危険?どうすればいい?

私は歩きながら深呼吸をした。
『困ったときはクウとお話しなさい』祖母の言葉を思い出す。

「帰ろうかね?」
「んー一度そこのお店に入ってもいいですか?」
もうここはクウに任せるしかない。
私はお店に入った。
すると見知った顔があった。治だった。
「あれー葵さんじゃないですかー?買い物ですか?」
いつもと変わらない、優しい笑顔に緊張が少し緩む。
「えっとー」私が返事に詰まっているとクウが
「オサムさん、うちでご飯とかどうですか?」
「えー!?」
私がびっくりして止める間もなく、治は「いいよー、一緒に行こう」と笑顔で答えた。
その目が一瞬私の背中の遠くを睨むように見たのを私もクウも見逃さなかった。


後書き

前回もこんなことを書いていたのですが

“自分で始めといてなんなんですけど一つ一つを完結させながらでも続き物って結構難しいということに続けてみて気がつきました。 でもやってみないとわからない、し、おかげで見えてきているものもあるもので。 ”

本当にこれは単発ではなくなってきたな・・という・・これ単発で読んだ人の感想だったり続きで見ているよっていう方の感想だったり、いただけるとめっちゃ嬉しいです。
キボウのカケラが100までいったらちょっと一旦仕切り直しをしたいなあと思ってはいるのですが。。


ーーー本を出版しました!!ーーーー
そんなわたしの私の処女作。
「僕の中の神様」
秋の一冊にどうですか?
Kindleunlimitedなら無料で読めます。
この小説の中の主人公はいろんな幼少期の記憶を覚えている少年
インドに仕事でいった日本人である主人公が奮闘する話です。
普通の会社員の主人公が、ビジネスでインドに滞在し犬を拾ったことをきっかけに、インドの日常に横たわる人々の深層意識やカスタムに触れていきます。
多様性とは生きるとはなんなのか。
NewsPicksでも紹介されました。

なんと、るろうに剣心の大友監督と、ドラゴン桜の編集などもされている佐渡島さんからも書評をいただきました。


https://newspicks.com/news/5788735/body/

Kindleunlimitedでは無料でお読みいただけます。




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