マガジンのカバー画像

短歌・詩・俳句

169
短歌・詩・猫を中心とした川柳などを掲載しています。
運営しているクリエイター

2021年1月の記事一覧

置き手紙

「置き手紙」

家に帰ると
灯りが消えていた
鍵で玄関を開けるが
中には人気がない

とりあえず俺をさがす

と言っても
2DKの小さなアパートだ
こっちの部屋にいなければ
あっちの部屋しかない

だが、あっちの部屋にも
俺はいない

トイレかもしれない

しかしトイレには白い便座が鎮座しているだけで
俺がいた形跡はない

こたつの中か?
押し入れか?
まさか冷蔵庫?

せっかく帰ってきたのに

もっとみる
あしたを見に行く

あしたを見に行く

『恋:1』

月の地図リュックサックに押し込んで僕と「あした」を見に行かないか

二人で月を見上げながら、こんな言葉で愛をささやいてみる・・。 

「プロポーズに使いたければ、1000円でこの歌をレンタルしてあげる」という馬鹿な冗談を授業で言ってみたのですが、何の反応もありませんでした。

まあ、当然のことでしょうね。

傘クマ

傘クマ

今日も雨。

学校の校門に、シロクマのぬいぐるみが落ちていました。
水たまりにうつぶせになって。

ランニングに来た野球部の生徒が、
可愛そうに思ったのでしょう。
拾って校門の塀の上に座らせて行きました。

でも、しょぼしょぼと雨は降り、
シロクマはしょぼしょぼと濡れていました。

すると、
通りかかったテニス部の女子部員が
校門の鉄扉に傘を括り付け、
雨が当たらないようにしてあげました。

「笠

もっとみる
なくしちまったこと

なくしちまったこと

飛行機雲まっすぐに引く空があり なくしちまったことがいっぱい

少年のころ見た空は青く輝いていました。
青い空にまっすぐに尾を引く飛行機雲のように、
少年の心はまっすぐです。

あれから僕らはたくさんのことを得た代わりに、
何か忘れ物をしてきたように、
なくしてしまったことがたくさんあるような気もします。

「まっすぐ」であることは何故か寂しいことでもある、そんな気がします。

捨てられないもの

捨てられないもの

今回のツーリングをもって、十年間使ったバイクのグローブ(手袋)を引退させようかと考えるに至りました。

これがその右手。

そして、これが左手。

今回、急にこうなったわけではありませんが、なんとなく愛着が湧いて捨てきれずにいました。

でも、さすがに終わりのようです。

ちょっと寂しかったりしています。よくがんばった!

・・・なんとなく捨てられないもの、いっぱいありませんか?

捨てられず持ち

もっとみる
僕は僕であらねばならぬ

僕は僕であらねばならぬ

くぬぎの葉 踏みゆきながら ざくざくと 僕は僕であらねばならぬ

湯たんぽと猫

湯たんぽと猫

【猫川柳】

湯たんぽと猫とまるまる 星の夜 ここ数年、寄る年波に、夜はカミさんが湯たんぽを入れてくれるようになりました。温かいのですが、酒を飲んで正体なく眠る僕は、低温火傷で病院通いとなりました。

そう言えば体に傷を発見しても、いつどこでつけたものやら分からぬことが多くなり、毎日会っている部活の部員を前にその名前を失念することもしばしばです。心優しい部員たちは心得ていて、指をさすと「○○です」

もっとみる
百円ショップ

百円ショップ

なんとなく寂しくなってしまった日には
百円ショップに行くといい

いかにもちゃちで
いかにも安物なんだが

圧倒的な物の数
ごちゃごちゃと賑やかに
いかにも楽しそうに並んでいる

ほうきや洗濯バサミ
ペットフードに文房具
鼻めがねとかパンツとか
茶碗、スプーン、手品の道具
お菓子におもちゃ、植木鉢・・

「おお、こんなものがあったのか」とか
「おお、こんなものが百円か」とか
そんな些細な感動に

もっとみる

一本の楡のように

ある時は一本の楡 どうしても どうしても 譲れないことがある

教室という四角い箱

教室という四角い箱

教室といふ 四角い箱は ごとごとと ごとごとと 煮らるるおでん

教室には実にさまざまな生徒がいます。
ゆえに、毎日、実にさまざまなことが起こります。

40人の個性と、感情と、あふれ出るエネルギーも矛盾も。
笑いも哀しみも、たまには怒りも。
みんなごちゃごちゃになって
ひとつの四角い「教室」という空間に雑居しています。

コンビニのレジ横の「おでん」を見ながら「似ている」と思ってみました。

ねこの背中

ねこの背中



ひなたぼっこの ねこの背中と ねこの耳

【猫川柳】 皆さま、本年もあたたかくお過ごしください。

18歳の僕がいた風景

18歳の僕がいた風景

人いきれのする駅の通路
流れゆく人混みにけおされながら
突然 わけもなく
叫びたくなったことはないか

凡俗であることが許せず
見栄と欲に汚れた会話から
おのれの小さな魂を
守ってみたいと思ったことはないか

そしておのれの卑小な感性に
無性に腹立たしくなったことは
ないか
  - なかったか

僕らは忘れてはならない
僕らが僕ら自身であろうとした
その憂鬱を

人と睦むよりは
独りうつむいて歩む

もっとみる