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語られなかった言葉たちへ
二人で行ったあの海辺の街
「こんな季節外れに来たって」と旅館の女将さんは口を尖らせたけれど
澄んだ風に煽られる松の林が青空に眩しかったね
「今度は夏にいらっしゃい」その言葉は遂に果たされることはなかったけれど
あの夏の花火大会
電車が遅れて結局私一人で見たあの大輪の花
たくさんの人で賑わったあの会場ではもう行われなくて
結局2人で花火 見られなかったね
2人で話した色んな夢 2人
想い草
思い返せば
君は君の好きなものを懸命に私に伝えてくれていた
思い返せば
遠い地で別れる時 君の瞳は曇っていた
思い返せば
私の好きなものをからかったりしなかった
思い返せば
思い返せば
あの日 君は何を言いかけていたのだろう
誰かに訊かれて
「年下も好きだよ」
と 背中に君の気配を感じながら言ったあの声は
震えていなかっただろうか
どんな顔をして君は聞いたのだろうか
待宵時に
笑わなきゃ 笑っていなければ
正気に返ったら飲み込まれてしまう