語られなかった言葉たちへ


二人で行ったあの海辺の街 

「こんな季節外れに来たって」と旅館の女将さんは口を尖らせたけれど

澄んだ風に煽られる松の林が青空に眩しかったね

「今度は夏にいらっしゃい」その言葉は遂に果たされることはなかったけれど

あの夏の花火大会

電車が遅れて結局私一人で見たあの大輪の花

たくさんの人で賑わったあの会場ではもう行われなくて

結局2人で花火 見られなかったね

2人で話した色んな夢 2人で見た色んな景色

もう その言葉は行先を失ってしまった

行き場を失った想いも言葉も 今となっては 私の中にだって居場所はない

ならば

ここに居場所を作ろう

紡いで 紡いで 紡がれた言葉たちが電子の海を漂い、いつか消えていくように

語られなかった言葉たちへ鎮魂歌を歌おう。

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