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思い出の摩耗

それなりの期間で音楽を続けていると、その時間なりに、多くの新しい曲に出会う。一方で、元々自分の中でひっかりのある曲を演奏することもあり、そんなときは、曲の持つ重みが一層増す。

スピッツ「空も飛べるはず」。スピッツは好きな曲が比較的多いのだが、きちんと追っているファンの皆様と比べるとあまりも俄か。好きを公言するには勇気がいる。

母親が妊娠中によく聞いていたらしく、私がスピッツの話をする度に、「お腹にいる頃から聴いてたからだね」と言われてきた。マタニティ英語教育ならぬ、マタニティスピッツ教育。

ほんとにそんなことあるのか??真偽は定かでないが、昔から刷り込まれてきた言葉の力は大きいもので、そこまで詳しくないのにも関わらず、スピッツは特別なアーティストだ。

高校の部活を引退するときに弾いたのが、「空も飛べるはず」。共に引退する同期全員と弾いた、思い出の曲だ。派手さの欠片もなかった高校生活での、数少ない輝きだ。

ところで、思い出が過去になった以後での「思い出の曲」との関わり方は、人によってかなり違うのではないか。

私は、出来ることなら聴きたくない。聴けば聴くほど、劣化していく気がする。それに、感傷を噛み締めていたら前に進めない。

演奏したのは5年も前のことで、記憶が朧気になってきている。認めたくないことだが、絶対に忘れないと思っていたとしても、時間には抗えないし、もしかしたら、このまま忘れてしまうのかもしれない。

でも相変わらず、「空も飛べるはず」をあまり聴きたくない自分がいて、少し安心した。

30-DAY SONG CHALLNGE:Day20「自分にとってたくさんの意味がある曲」

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