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締め切りを、延ばす

こんにちは、Soratoです。

今日は日常のタスクのペース配分について書いていきます。

締め切りを延ばす

私たちって日々の仕事に限らず、個人的な目標、やるべきことに大抵「〇〇日までにやろう」と期日をつけますよね。

タイトルにもした「締め切りを延ばす」は、一旦決めた期日に間に合わないと思ったとき、自分を鼓舞して締め切りに合わせるか、自分のペースに合わせて締め切りを伸ばすかの選択の話です。

例えば私はkindle本を書いてますが、今月末には完成させようと思ってたものの、月の半ばの段階で、「さすがに無理じゃね?」と感じた時、一日の作業量を倍にして月末に間に合わせるか、1~2カ月延ばせばいいと考えるかのどちらかです。

で、無論、今回の話は「迷わず、延ばす」です。

ワークマン式「しない経営」

私がこの発想を強く意識するようになったのは、「ワークマン式「しない経営」- 4000億円の空白市場を切り拓いた秘密 」という本を読んだのがきっかけでした。

著者の土屋哲雄さんは三井物産退社後にワークマンの専務に就任し、ワークマンプラスの立ち上げなどに関わった近年のワークマン快進撃の立役者となった方です。

同書によると、ワークマンでは「しない経営」を心掛けており、

1,社員のストレスになることはしない

2,ワークマンらしくないことはしない

3,価値を生まない無駄なことはしない

といった指針を掲げています。

今回の記事に関わるのは1の「社員のストレスになることはしない」で、具体的には以下のようなことがあげられます。

【仕事の期日は設定しない、ノルマも与えない】

・・・著者はこれまでの経験から、従業員は多大なノルマや納期のある仕事を抱えるとストレスでミスが多くなったり、短期目標に縛られて仕事がこじんまりすると感じていたため、ワークマンでは期日もノルマも課さないことにしました。無理に期日を設定すると、期日を守ることが目的となり、仕事の質が下がります。一方、期日がなければ社員は自分で工夫して必ずやり遂げます。実際、驚くことに、「いつでもいいですよ。時間がかかってもいいから、やってくださいね」と言っても、予定以上に時間がかかったケースはほとんどないそうです。

ただ、ときたま動揺するようなケースはあるようで、新規開店の店を視察しに行ったところ、「残業が多くなるのでオープン日を延期しました」と急に言われて焦ったこともあるそう。しかし、会社の方針として、「忙しかったら納期を遅らせろ」と言っている手前、「勇気ある決断だ」と誉めてしぶしぶ了承しました。

【社員の負担になるくらいなら決算も先延ばし】

・・・経理部門の社員に過度な負担をかけたり、監査法人を急かして雑な監査になる恐れもあるくらいなら決算も先延ばしします。アナリストや株主からの反発も考えましたが、トレードオフと考え覚悟しました。

【加盟店は対面販売しなくてOK。閉店後にレジも締めもなし。ノルマ もなし。社員は飲み会、社内行事もなし】

・・・加盟店で働く人が早く帰れるように余計な仕事は排除します。そのため、ワークマンの加盟店は契約更新率が異常に高く、家族経営で息子に引き継ぐというケースも多いそう。ただし、長い付き合いになる分、面接には相当力を入れます。

簡単にまとめると、「従業員を大切にした方が自然とパフォーマンスはあがる」という方針ですね。

私たち働く側にとっては非常に魅力的な方針です。

個人的には、本を読んでいて、「(既に市場で有利なポジションを築いている)ワークマンだからできるんじゃない?」と思った部分も正直あったのですが、

「疲れてミスも増えてパフォーマンスも下がるくらいなら、ノルマなんて捨てちまえ!」

という発想は短期目標ばかり追って長期的に疲弊していた私にはハッ!とさせられる衝撃的な内容でした。

(※以下はワークマンの本の内容ではありません)

一貫性の原理vs修正能力

多くの人は自分の決めた期日は必ず守ることが前提で、引き延ばすことに葛藤や罪悪感を感じると思います。

おそらくこの心理には、「一貫性の原理」という心理傾向が関わっています。

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一貫性の原理 

⇒一度態度決定したことは最後まで一貫してそれを貫こうとする無意識の心理傾向

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私たちは人に対してよく、「一度決めたんだったら最後までやりぬきなさい!」と激を入れることがありますが、無意識に、「一度態度決定したことは最後まで一貫して貫かなければならない」「コロコロ意見が変わる人はだらしない、ろくでもない」という前提を持ってるんですね。

しかし、一貫性の原理は常に正しく機能するわけではありません。

有名なサンクコスト効果の例で考えてみましょう。

例えばあなたが地域開発のプロジェクトを主導し、巨大なスタジアムを建設することになりました。

しかし、実際に取り組み始めてみると、予算が大幅にかさむことがわかり、コンサルタント会社からも来客数の見込みが甘すぎると指摘がはいります。

あなたの頭には一瞬、「ここでプロフェクトを打ち切った方が賢明か?」という考えがよぎりましたが、すでに1千万円の建設費を投じており、今更引くわけにもいきません。

無理に工事を進めましたが、最終的にもっと赤字が膨らんでしました。

客観的にみると、一度やってみて前提がずれていたんだから、計画自体を修正しなければならないとわかりますが、自分がその立場に置かれてみたら・・・と考えると、かなりの人がやっちゃうだろうなと感じますよね?

これは、私たちが日々抱えるタスクの期日にも言えることで、私たちは自分が立てた計画に取り組むとき、一度やってみて、「実際、無理じゃね?」と感じても、無理にでも自分を鼓舞して期日を守らなければならないと考えてしまいがちです。

しかし、私たちが立てる計画・期日は、大抵、「調子が悪い日があるかもしれない」「プライベートや仕事で予定外の問題ごとが起こるかもしれない」といったイレギュラーはまったく起こらない前提でたてられています。

その時々の自分の調子や他のスケジュールとの兼ね合いを考え、計画を柔軟に変えていくことも必要です。

もちろん、私たちは何でも自分の都合で期日を延ばせるわけではありませんが、仕事以外の自分で決めたノルマに関しては、長期的に見ると変更しても意外と大差はないことも多いと思います。

例1

週4でジムに通うと決めたものの、仕事が繁盛期に入り忙しくなるので、通えるかが不安だ

→一年スパンで見ると、2週間休んだところで大した影響はない。一旦仕事に集中して、また仕事が落ち着いたらジムに通えばいい

例2 (私の実体験)

kindle本を月末までに完成させると決めたものの、間に合う見込みがない

→長期的に見ると、完成が1~2か月延びたところで大した影響はない。焦ってクオリティの低い本を出すくらいなら、1~2か月延ばしてでも納得できるものを作った方がいい。私は実際に三冊kindle本を出してますが、三年前に出した本の出版日が2021年の6月だったか、2021年の8月だったかは今となってはどうでもいいです。むしろ、焦って質の低いものを出してしまうほうが後悔は大きいですね。

(念のため書いておきますが、私は執筆が本業ではありません)

例3

筋トレ中に身体に軽い違和感を覚え、本心では「今日はやめたほうがいいかも」と思ったものの、「継続を打ち切りたくない」「自分に負けたくない」という理由でトレーニングし、本格的に痛めて2~3週間休まなければならなくなった。

私も何度もやってる筋トレあるあるあるですが、これも計画を守ることに固執して馬鹿やっちゃったなーという典型ですね。

「やりぬく力」はもちろん美徳ですが、「柔軟に修正する力」も立派な能力です。

特に仕事が忙しくなったり、プライベートでごたごたが続いたときは、サブ的な活動は調整、延期、または一旦休止として、自分との約束を守れなかったことに罪悪感を抱く必要は一切ないと思います。

期日を伸ばすテクニック

最後にいくつか私なりに期日を伸ばす時に役立つ考え方も紹介しておきます。

1,無理しすぎるとアップダウンが激しくなる

・・・単純にペース配分の話です。私たちって全力で頑張ることに美徳を感じますが、「一日を100の力で頑張る→次の日も100の力で頑張る→更に次の日も100の力で頑張る」とやっていると、どこかで無理がたたってダウンしてしまいます。

100の力で頑張り続けて数か月ぶっ倒れるのと、余力を残した70の力で頑張り続けて、小休止を挟むのとでは合計の仕事量は大して変わらず、アップダウンも少なくるので、後者の方がおすすめです。

以前記事にしましたが、私たちの人生ってマラソンのように長い長距離レースなのに、毎日を全力ダッシュで駆け抜けぬけなければならないと思い込んでる人って多いので、思い当たる節があると感じた方は「70点の力で走り続ける」の記事も参考にしてください。

2,一番乗りに言うほどメリットはない

こちらは、「ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代」という本で学んだ目から鱗の知識。

私たちは即行動し、一番乗りのポジションをとることが勝利につながると考えがちですが、それは必ずしも正しくありません。

即行動とは正反対の「先延ばし」にはいくつものメリットが存在します。

まず、先延ばしにはクリエイティビティを高める効果が期待できます。

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無作為に2グループに分けた学生にキャンパス内のコンビニエンスストアの跡地に新しい事業を作るといった提案書作成の課題を課した。

その際、一方のグループには課題の途中で「マインスイーパ」「フリーセル」「ソリティア」といったコンピューターゲームをプレイしてもらい、課題を先延ばししてもらった。

結果、先延ばしグループの学生の方が、より独創的なアイデアを出し、第三者からも通常通り提案書を作成したグループと比べて28%創造性が高いと評価された。

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課題を先延ばしするというのは、あれこれ考える時間を作っているという面もあり、幅広く考えられるようになることでオリジナリティが増し、独創的なアイデアの創出につながります。

歴史的には、キング牧師の有名な公民権運動の演説は、原稿の執筆開始が前日の午後10時で、「私には夢がある」というフレーズはほぼ即興で作られました。

レオナルド・ダヴィンチもモナリザの作成を書いてはやめるを繰り返したあとに放置し、死ぬ直前にやっと完成させましたが、その間に行っていた光に関する実験などが絵の立体感を生み出し、クオリティを高めたと言われています。

もちろん、先延ばしがすべての場面で有効に機能するわけではありませんが、単純に、

「より考えたほうがアイデアが洗練される」

ケースって少なくないんですね。

また、もっと驚くべきが、一番乗りに思っているほどのメリットはないという研究です。

マーケティングの研究者、ピーター・ゴールダーらは先発企業と後発企業の状況を比較する調査を行いました。

先発企業とはいち早く行動したパイオニアであり、ある製品を一番最初に開発・販売した起業で、後発企業とは開発や発売の開始が遅く、先発企業が市場を形成したのを見届けてから参入した企業です。

30以上の異なるカテゴリで100以上のブランドを比較した結果、先発企業と後発企業には失敗の確率に大きな違いがみられました。

先発企業の失敗率は47%だったのに対して、後発企業が失敗する確率は、なんと、わずか8%でした。

先発企業がうまく行くケースがあるのは事実ですが、うまくいっていないケースもかなり多く、「先行者利益」に関しては、学術研究ではまだ意見が分かれている模様。

 家庭用ゲーム機の分野でも、世界で最初に発売されたのは、1972年の米マグナボックス社の「Odyssey」ですが、世界的にヒットしたのは、三年後に同ゲームの日本国内での販売権を取得し、使いやすいコントローラー、魅力的なキャラクターなどで革命を起こした任天堂のファミリーコンピューターです。

個人的に思いつく身近な例では、携帯サンドイッチパンのシェアを誇るランチパックはスナックサンドの方が先ですし、ポテトチップスもカルビーより小池屋の方が先です。

※スナックサンドが販売は10年先だがシェアは0.15%。ポテトチップスの販売は小池屋のほうが13年早い


画像引用元 「トクバイニュース どう違う?「ランチパック」VS「スナックサンド」そっくりパンを食べ比べ!

私たちは、一番乗りしたものの失敗した起業を問われてもあまり思いつきませんが、それは競争に敗れて消えていったからです。

悲しいかな、世の中には、

良いものであればあるほど、ソッコーでぱくられて改良される

という例もごまんとあるので、言われてみると納得の話ではないでしょうか?

著者のアダムグラントいわく、「オリジナルであるには先発者である必要はない。オリジナルとは他とは異なり、他よりも優れているという意味である」とのこと。

(特許やネットワーク効果が絡む場合などは別)

私の取り組んでるkindle本でも、斬新なアイデアをいち早く語っても、読者の大半は発行年度の比較はしないでしょうし、有名な作家さん以外は初めに誰が言ったかもほとんど気にされないと思います。

先延ばしすることで自分の書くテーマの本が出揃い、自分の知らなかった知識を補強でき、自分の主張の弱い面も把握できるのでデメリットばかりではないと思います。

あなたも仮に、家の生活圏内に元祖パンケーキのお店と、最近オープンしたリーズナブルでトッピングも多彩なおいしいパンケーキのお店があると考えたとき、「安くておいしいなら別に元祖じゃなくてよくない?」と思うのであれば、多少遅れても後でクオリティで挽回できると考えられるのではないでしょうか?

3,少し時間がかかっても納得のいくものを作ったほうがいい

締め切りがあることで力を出せる「締め切り効果」というのもありますが、「急いては事を仕損じる」ということわざもある通り、焦ってものごとを行うことで後で後悔することもよくあるものです。

特に私のように元々完璧主義傾向が強い人は、

「焦って中途半端なものを作って後で後悔するくらいなら、1,2か月伸ばしてでも納得のいくものを作った方が良い」

と考えると、意外と簡単に先延ばしできるんじゃないかと思います。

また、このくらい余裕を持って取り組んでいるほうが、長く執筆という作業を続けることができますね。

「長期的に見ると、無理なやり方は続かない」というのは、何かを長く継続している人ほど同意してくれる意見ではないでしょうか?

終わりに

と、今回は期日との付き合い方の話でした。

厳密には、「締め切り効果」「習慣化」といった他の観点からもみることができる問題なので絶対的な正解を導き出すことはできませんが、「一度決めた期日は必ず守らなければならない」という前提に縛られて疲労困憊してる人は多いと思います。

一貫性の原理に基づいて「正しいことをしている」という隠れた認識が関わっているので、「無理しすぎて逆に効率落ちてね?」と感じる方は、是非参考にしてみてください!

※私のフォロワー数で執筆の助言をするのはどうなんだろう?と思ったので一応kindleのキャプチャ貼っておきます。私はkindleメインで活動してます。(三冊目→一冊目→二冊目)

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