「別に君を植えてないのに」
今年は連作不向きな君の為に、涙を呑んで、敢えて、植えなかったんだ。ただ、最後の里芋食べようとした時、これは無理だね、食べられないねってのを三つくらい、いつも里芋を植えてる元ティンパニの器へ放ったんだよね。ごみ袋には、捨てられなかったからさ。勿体ない気がしてね。
そうしたらね、遅ればせながらも、にょきにょき、日に日に、すくすく、伸びて来るやないですか。
「え?あれ、うん、育つね。すくすく、育っとりますね。君、あれでしょ、里芋でしょ」
こうしてわたしの頭の中では日々香水の歌が流れ始めたんだよ。
「別に君を植えてないのに♪」って。本当の歌詞をよく知らないけど、確かにあのメロディが流れて来るよ。
慌てて栄養土買ってティンパニに足したよ。そしたらどうだい、一層伸びるじゃないか。よっぽど相性が良かったのかな。今まで見た事無いような大きな葉になってね。育てる積りで植えた数年、こんなに立派な伸び伸びした葉を見たのは、最初の年だけだったかも知れないな。もしかしてその時以上かも知れないな。周囲の畑で目にするのと何ら遜色ない大きな、大トトロの傘みたいな葉ですよ。
望外。と云うより、予想外。
けどね、実を云うと、ティンパニに放った時に、万が一、万が一にもこのどうにもならないような里芋から芽が出てきでもしたら、芽が出る方が上の方がいいよね、とは思ったのよ。ほら、里芋って、お尻と頭が逆になるからさ。それで、放ったと云いつつ、一応ね、発芽する方を上にして、あと、多少土に埋めるように放ったよね。
打算じゃん。
それにしてもよく出て来たなあ。何だかここまで大きく育つと秋の収穫とかちらちら頭を過ぎり始めるよねえ。おせちに使えるのかしらとか、どうにも期待を、期待しちゃ駄目だけど、期待してしまいそうだよねえ。まあ、もう半分、いや、三割くらいは期待してるよねえ~
さてこの先何が起こるでしょうか。気になったそこのあなた!
続報を待たれよ!!
令和三年八月下旬 いち
そして続編の記事がこちらです。
お読み頂きありがとうございます。「あなたに届け物語」お楽しみ頂けたなら幸いにございます。