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食の風景

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「食の風景」とは、食に纏わる美味しいお話から、料理のあれこれを、時に脱線しながら、思うままに腕を揮っては語っております。レシピは無いけれど、今日も美味しいご飯を一緒に食べませんか。
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#春

食の風景「そら豆と海原へ繰り出す晩」

外を歩くと若い葉の匂いがどこからともなく香って来るようになりました。今日は、季節に一度は味わっておきたいお豆さん「空豆」の登場です。絵本に「そらまめくんのベッド」というものがありますが、そらまめくんのベッドは他の豆たちの憧れです。たしかに、豆界隈では一番ふわふわの綿が詰まった、大きくてまるでベッドのような皮をお持ちです。ですがその外皮は食べられません。鮮度の良いものはあの綿も食べられるんだそうですが、食べた事はありません。お味が気になりますが今日は全て外します。生の状態でも若

食の風景×手紙小品「お花見弁当」

 今年の春が来る前に、こんな手紙を書きました。春が来たら、重箱へ好物がぎゅっと詰まったお花見弁当を作りたいなと思っていたのです。それを桜の下へ持ち寄って、ゆっくりお花見なんてできたら――とは参りませんでしたけれど、お台所へ立てば、いつだってお弁当は作れますっ!  と云う訳で、お弁当だけは作ってみました。 「お花見弁当御献立」 お赤飯 そら豆と竹の子の炊き込みご飯 ほうれん草と春大根、人参の酢和え 焼き麩よもぎ田楽 だし巻き卵 里芋と蛸の煮っころがし 塩ふりそら豆  もち

食の風景「夕食に満開の桜を散らす日」

 家族のお土産でさくらのマカロニがわが家へやって参りました。せっかくですから今年の桜が見頃な内に料理して、食卓に満開の桜を咲かせようと思います。さて何を作ろうか。スープですと、着色に使われているビーツの色が出ますとパッケージに書いてあります。ふむふむそれも素敵だなあ。けれど今夜は鶏肉と新じゃが芋の酢煮込みを作る予定です。それなら春キャベツの外葉の柔らかそうな方を選り分けて、サラダを作ろう。そしてそこに桜を散らしましょう。  と云う訳で、今夜はコンロが大盛況。次々鍋を入れ替え

食の風景「スパゲッティラプソディ」

お台所へ常備されている食品って何があるでしょうか。昨今、災害時に備えて、一定量の食品を備蓄しておき、使った分だけ買い足すというローリングストックが勧められ、世間にも広く周知されてきました。わが家でも非常食ノートを作り、水と食料を管理して十年以上になります。わが家の場合、長期保存できる食品は一階の台所ではなく、二階で管理しています。ノートを台所へ置いて、それで在庫と賞味期限を把握しています。では台所で管理する食品で日持ちのするものは何が在るだろうと思い浮かべますと、コーンやトマ

食の風景「間にあった豆ごはん」

春の嵐吹き荒れて、先日漸く葉の綻び始めたぐみの芽が、早速世の洗礼を受けて居ります。季節の移り変わりを日ごと実感するこの頃です。 今日は買い物へ行きました。野菜売り場は季節商品が次々登場しては私たちを楽しませてくれますから、できるだけじっくり歩きます。そら豆、菜の花、法蓮草、春キャベツ、新じゃが芋、新玉ねぎ、それにブロッコリーもお買い得です。どれも初々しくて美味しそうです。この中から料理できる分だけを選ぶなんてと、すっかり迷ってしまいます。そんな中、和歌山県産うすい豆が、二袋

食の風景「里芋とほうれん草、人参の炊き合わせ」

三月の初めの頃のお話です。自家製里芋が残り少なになって参りました。寂しいけれど、美味しい内に味わいたくもあり、更に今年も植えるのか、だとしたら残しておかなければなりません。保管の箱の中を見詰めては、ううん唸っております。 さて今日の里芋は、優しい味の炊き合わせに致しましょう。法蓮草は湯掻いて、水洗いして、絞って、適当な大きさに切っておきます。人参と里芋を蒸し茹でにします。さっき法蓮草を茹でた湯がありますから、そこへぽいぽい入れてしまいます。食材が水面から少し顔出す位の水量で

食の風景「春を告げる朝ごはん」

 ふわりと目が覚めた。昨日まではお布団から抜け出すのが億劫に思っていた部屋の中が、なんだかほんのり暖かい。三月も十日を数えて、急に春が近寄ってきたみたい。  気持ち良く目覚めた朝は、家事もいつもより捗る。日々、ついつい家事に追われてしまって、忙しない朝ごはんになりがちだったけれど、今朝は久し振りに、好きな器に、好きな物を盛り付けて頂こうかなと思う。  作り置きのスープには焼き餅を入れよう。それも二つ。このお餅は家族で作ったわが家のお餅。まん丸でふにふにで、焦げ茶の焼き色が食

食の風景「ほうれん草の白和えはうら若い春のお味」

茹で上がりの法蓮草。もう美味しい予感がしますね。葉は目の覚める様な深い緑色湛えた見事なグラデーション、根元は鮮やかな紅色をしています。全く奇麗なお色です。一回目は外の植え物に上げるのでバケツの中で、土を落とす様に隅々まで丁寧に洗います。二回目はシンクで、葉から根元まで水道水をかけて仕上げすすぎのイメージで洗います。出来ればこの時のお水もボールなどへ取っておいて、後で水遣りに使います。根の底の汚れが酷い場合、そこだけ薄く切り落として、後は全て頂きます。今日の法蓮草は鮮度が良

食の風景「菜の花の胡麻和え」

季節のお野菜が食べたいな、何が良いかな。そうだ、菜の花にしよう。 と云う訳で、 和えます。 胡麻は丁度袋を開けたてのものでしたから、すり鉢でする程に香ばしい香りがしてきます。食欲をそそる香りです。ぱちぱちと胡麻粒の弾ける音も、五感を楽しませてくれます。火傷させる程度に茹でた菜の花をざっくり二三センチ程に刻み、塩のみで味付け。そこにすった胡麻を足して菜箸でさっくり混ぜて、仕上げに粒の胡麻をかければ、完成です。 小鉢は仏さんへ、お味見どうぞと御供します。 菜の花、すこし

「食の風景・春キャベツと小やりいか、アンチョビソースで」

春キャベツ。冬のがお姉さまなら春のはお嬢さんか、坊やかな。甘くて柔らかくてジューシー。鉄のフライパンを熱して春キャベツを蒸し焼きにします。ヘラで1、2回返すだけ。程よく焦げ目がついて、香ばしい匂いが台所へ立ち昇ります。皿へ引き上げて、今度は小やりいかを焼きます。身の色があっという間に白くなります。春キャベツの上へ盛り付けて、今日はブラックペッパーのみ振りかけておきます。 アンチョビをオイルごとガラスの器へ移して解します。小やりいかを炒めた後水分がフライパンへ残りました。いか

「食の風景・子持ちカレイの煮付け」

 スーパーの鮮魚売り場も、釜揚げしらす、ホタルイカ、新物ワカメ・・と春を彩る海のものが多彩になって来ました。美味しそうなものがいっぱいで何食べようと迷ってしまいます。  今晩はこれ!北海道産子持ち赤カレイの煮付けです。売り場で見かけて、奇麗な身と卵、皮の色に鮮度の良さを感じまして、これを煮付けで食べたいと思ったのです。  卵は火を入れるのが難しいですね。身の方には早く火が入りますが、大きな卵はしっかり火に掛けておかないと中まで火が通りません。今回は一際大きな卵でしたので、

「食の風景・春キャベツと舞茸のお味噌汁」

 春野菜の美味しい季節ですね。味噌汁の具はわかめと麩だけ。という場合が多いのですが、品数を減らしても栄養満点なお料理を用意しようと思うと、汁物を具沢山にします。  この日は美味しそうな春キャベツに出会ったので、舞茸とねぎを足して、信州の合わせ味噌で味噌汁を作りました。何と言っても葉が柔らかく、繊維も解れやすい。そして噛み締める甘さ。舞茸の触感が絶妙です。いつもの汁椀ではなくて、思わず一回り大きな器で頂きました。  春の野菜が市場にも沢山出揃っていますね。もっと色々紹介でき

「食の風景・お赤飯」

 春のお彼岸だけれど、春分の日は仕事日で、今年もおはぎを作れそうにない。でも、それならせめて、お赤飯炊きたいなあ・・・と云う事で。  作るぞう!  もち米3合に、小豆50gでよいところ60g用意。豆が好き。朝もっちもちのお赤飯を炊きたいので前日の夜にもち米を洗い、しかも漬けます。なにしろおはぎが作れなかった残念が籠ってますから。餅への未練がありますからね、餅にする気か!と云う程柔らかくしたくて。普通に炊くのなら、当日洗ってざるにあげて3時間くらいで炊けば良いと思います。