食の風景「あの日のコロッケ」―掌編―
コロッケと聞いて思い浮かべる光景ってどんな時間だろう。今ではコンビニへ行けば大体レジ横のショーケースに並んでいるけれど、思い出すのは、なぜか懐かしい方。例えば――あの日のコロッケ。簡素な紙の袋へ入ったあつあつを頬張った、夕日の中で過ごした時間。
仕事帰りに近所のスーパーへ立ち寄って、立派なサイズの新じゃが芋を見つけた。男爵だ。ごろごろごつごつ、見るからに美味しそうな男爵を眺めていたら、口の中が旨い想像でいっぱいになった。頭の中ではもう美味しいのが出来上がっている。
「よ