淳子おばあちゃま

父方の祖母は随分昔の今日亡くなった。

私は当時大学生で家を出ており、父からの突然の電話で知った。

父は電話口で恐らく努めて冷静に事実を伝えたのだと思う。

自分の母親が亡くなったというのになんとも他人事のような、困ったような、とても客観的な口調で言った。

「おばあちゃまの亡くなんなさったもんね。」

「え?どういうこと?」

「あー・・・自殺なさったとよ。」

急いで実家へ戻ったけれど、私はお座敷に横たえられた祖母の顔を見るのが怖く、躊躇して嫌だと泣いてしまった。

祖母は庭の物置小屋で首を吊った。

庭には警察官が数名と母が居た。

看取り以外で人が自宅で亡くなった場合、事件性の有無を確認するために必ず警察の検証が行われる。

第一発見者は母だった。

庭に居る母の元へ行く。
母は私を見るなり言った。

「自殺だなんてみっともない。あんた、絶対外で言っちゃ駄目よ。脳出血っていうことにしてあるんだから。分かったわね。」

それだけ言うと母は険しい顔をして警察官を見ていた。

私は・・・困惑した。

悲しみなど微塵も感じない母の態度。

母と祖母に血のつながりは無い
それでも同じ屋根の下に長く暮らせば何かしらの感情が湧かないだろうか。

祖母が亡くなって以降、母は同じことを何度も言うようになった。

「おばあちゃまは私に一番感謝してたんだから!お父さんでもお父さんの弟夫婦でもなく、私にいつもありがとうって言ってたんだから!」

祖母と血の繋がった者に対する気遣いなど全くない。

誰も何も言わないのに突然同じ言葉を言い出すその心理は何だろう。

母の心の内は私にはわからない。
ただ、私は母の祖母に対する態度を見てきた。

祖母の生前、亡くなった時、亡くなった後。

どの口が「私に感謝していた」と言うのだろう。

私は祖母に謝りたい。

「もうおばあちゃまなんか嫌い!」
私が最後に祖母に言った言葉。
帰省した時に何かあって放った言葉。

何があったのかは覚えていないけれど、自分が言った言葉は覚えている。

私がもっと優しい子だったら祖母は亡くならずにすんだかもしれない。

ごめんなさい。




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