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「ESG経営を強くする『コーポレートガバナンスの実践』」を読んで

先日「ESG経営を強くする『コーポレートガバナンスの実践』(松田千恵子著)」という本を読みました。この本から得た学びや印象に残った文章をここに書き残しておきたいと思います。

株主が知りたい情報

株主が知りたい情報は、①企業実績(=会計報告)、②内部基盤(=内部統制報告書)、③将来戦略(=経営戦略)の三つ。

取締役の役割

取締役の役割は、経営者(=業務の執行を行う人)取り締まる(=監督する)こと。取締役はDirector、執行役はOfficerと訳される。

日本のガバナンス形態

日本では、企業が三つのガバナンス形態(①監査役会設置会社、②監査等委員会設置会社、③指名委員会等設置会社)から自由に選択可能。③のみ執行と監督が分離。①と②では取締役会が執行と監督を兼務。

政策保有株式の問題点

政策保有株式の問題点は次のとおり。

  • 純粋な株主よりも、本来の利害が別にある”疑似”株主(=契約上の利害関係がある株主、例えば銀行や取引先など)との利害を優先して、純粋な株主の利益に反する経営判断を行う恐れがあること。

  • 政策保有株式によって資本コストを上回るリターンを得ていない可能性があること。

  • 事業投資への機会損失が発生している可能性があること。つまり、株式投資であれば投資家自身でできるのであり、投資家が企業に期待することは、株式投資では得られないリターンを事業投資により稼ぎ出すこと。

資本政策について投資家が知りたいこと

資本政策について投資家が知りたいことは次の二点。どちらもトレードオフの関係にあり、投資家としては企業がどちらをどの程度優先させるのかという戦略上の方針を知りたいと考えている。

  • 成長 or 還元

  • 負債 or 資本

株主は企業に成長を期待しており、成長が望めるなら、配当(還元)はせずに、企業内で人材や事業等に再投資し、更なる成長を期待している。

「配当を行う」ということは、「成長機会がもうない」ということを意味している。

株主の権利

株主の権利は二つある。

  • 自益権:株主自身の利益のために認められた権利で、「剰余金配当請求権(=配当をもらう権利)」と「残余財産分配請求権(=倒産時に保有財産を売却して得たお金の山分けにに預かれる権利)」がある。

  • 共益権:会社の経営に参加する権利で、「議決権」や「代表訴訟提起権」、「役員等の解任請求権」がある。

経営者の役割・仕事とは何か

ステークホルダーと意見交換や対話をすることは良いことだが、最終的に企業の重要課題を抽出し、それに対処するのは経営者の仕事である。

投資家が嫌う企業の投資

投資家が嫌う企業の投資は、①現預金、②有価証券、③不動産、④事業の多角化の四つ。①~③は、投資家自身でできるもの。④を嫌う理由は、企業が多角化してしまうと、つまり事業ポートフォリオを作ってしまうと、投資家自身が投資ポートフォリオを組むのが難しくなるからです。ポートフォリオを組むことが難しくなるということは、リスク分散が難しくなることを意味します。

投資家に事業の多角化を評価されるためには?

事業の多角化が投資家に許容されるためには、以下のいずれかの条件を満たす必要がある。一つは、事業間でシナジーが実現していること。もう一つは、企業が株主よりも投資家能力に優れて、より高いリターンを生むポートフォリオ管理を行えていること。つまり、多角化企業に求められるものは、コングロマリット・プレミアムを生んでいるかどうかという点です。多角化企業の本社の実態は、投資家と同じ。

債権者が多角化企業を好む理由は、そのことがリスク分散に繋がるからです。投資家/株主と債権者では、企業に求めるものが異なることの一例。

全社戦略と事業戦略の違い

全社戦略と事業戦略の違いは何か。前者は、複数の事業を持っている企業が、どの事業にいつどのように(優先順位付けして)経営資源を配分するのかという意思決定を行うこと。意思決定はファイナンスの知識を駆使して行う。後者は、市場や競合、自社の強み・弱みなどを分析して、儲かる道筋を考えること。事業戦略はマーケティングの知識が必要となる。

参考文献

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