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折り鶴お千

あらすじ:神田明神の境内近くで古美術鑑定と称して、いかがわしい商売をしている連中がいた。首領は熊沢と言い、若い娘・お千も彼らに食い物にされていた。熊沢に養われている少年・宗吉は、あまりの仕打ちに耐えかね、お千とともに熊沢一味から逃げ出そうとするが・・・。 

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溝口健二監督作品だけあって愛する男の為に身を堕とし、尽くす女を情緒豊かに作り上げている。私的に心に深く刻まれたシーンがある。それは、勉学に励む宗吉の為に金を稼がねばならず、体を売るお千。売春をした罪で警察に捕まり、連れて行かれるお千を追う宗吉。その宗吉に『私の魂をあげる』と言い、口で着物の胸元に忍ばせた折鶴を投げるシーンである(お千は、後ろに両の手を縄でかけられている)。お千にとって『自由』の象徴が折鶴であり、心であった。その己の象徴である折鶴を投げることによって、お千の辿る顛末を観客は窺い知ることができる。この折鶴を投げるシーンは、後世に残る名シーンであると言って良い。しかし、この『折鶴お千』をはじめ、『滝の白糸』や『残菊物語』等、溝口監督の初期の作品はそれぞれ内容が違うとはいっても女の辿る顛末は同じなのだな、と感じた。

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