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映画レビュー

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2019年11月の記事一覧

パンズ・ラビリンス

1944年のスペイン内戦下を舞台に現実と迷宮の狭間で3つの試練を乗り越える少女の成長を描くダーク・ファンタジー。ギレルモ・デル・トロ監督がメガホンをとり、ファシズムという厳しい現実から逃れるため、架空の世界に入り込む少女を通じて人間性の本質に鋭く切り込む。イマジネーションあふれる壮大な視覚技術を駆使して生まれたクリーチャーや深く考察されたテーマに根ざした巧みな演出が衝撃的。 あらすじ:1944年のスペイン内戦で父を亡くし、独裁主義の恐ろしい大尉と再婚してしまった母と暮らす

アイリッシュマン

あらすじ:全米トラック運転手組合「チームスター」のリーダー、ジミー・ホッファの不審な失踪と殺人事件。その容疑は、彼の右腕で友人の凄腕のヒットマンであり、伝説的な裏社会のボス:ラッセル・ブファリーノに仕えていたシーランにかけられる。第2次世界大戦後の混沌としたアメリカ裏社会で、ある殺し屋が見た無法者たちの壮絶な生き様が描かれる。 今作品の原作は、ノンフィクション「I Heard You Paint Houses」。ロバート・デ・ニーロがマーティン・スコセッシ監督に持ち込んで実

薬指の標本

『博士の愛した数式』の原作者としても知られる芥川賞作家の小川洋子による同名小説を、フランス人監督のディアーヌ・ベルトランが映画化。 あらすじ:炭酸飲料工場で働いていた際に薬指の先を切り落としてしまった21歳の少女イリスは、事故をきっかけに仕事を辞め、知人のいない港町へ引っ越した。そして、森の中にある古びた3階建ての建物の標本室で、ミステリアスな雰囲気の標本技術士とともに働き始めるが……。 この作品の少女は、不思議の国に迷い込んだアリスのようだ。 標本技術士の男に見つめ

ボヘミアン・ラプソディ

今作品の全世界興行成績が5億ドル(約550億円)を突破。日本国内は公開4週目で33億円を突破。音楽伝記映画で大ヒットとなっている。とはいっても今作品の完成を迎えるまでの道のりは険しい。キャストやスタッフ間での意見の相違でブライアン・シンガー監督が撮影途中で降板。撮影終了の二週間前に代理監督で再起用されたデクスチャー・フレッチャー監督の元で撮影を再開し、作品を完成させた。 今作品がこれほどまでに観客の心を鷲掴みにするのか・・・。フレディー・マーキュリーを演じるラミ・マリックは

孤高の血

あらすじ:昭和が終わろうとしている昭和63年、広島の呉原市(架空の都市)で2つの暴力団が長年に渡り対立し、ある金融マンの失踪事件をきっかけにその緊張状態は爆発寸前まで加熱する。 今作品を昨日鑑賞。申し訳ありませんがお勧めできない作品です💦理由は二点。俳優が熱演しているのはわかるのですが、演技が上手いだけで中身に気迫がない。そして、残虐シーンは多々あるのですがリアルに見えない。白石監督の演出力の問題ですね💦 日本の任侠映画の代表格といえば深作欣二監督である。「県警対組織暴力

人斬り

あらすじ:身分制のために出世が見込めない世の中で、くすぶった生活を続けていた青年岡田以蔵は、ある日、土佐勤王党首の武市半平太より吉田東洋暗殺視察の命を受ける。上洛後、半平太の手足となり数々の破壊・殺戮の実行役となった以蔵は坂本龍馬と出会う。龍馬は以蔵に人斬りをやめるよう忠告するのだが…。 五社英雄監督作品であり、勝新太郎氏が岡田以蔵を演じている。頭よりも先に剣が動く、以蔵。 数々の天誅シーンの勝新太郎の目は狂気爛漫である。 勝新太郎氏の熱演も凄まじいのだが、それ以上に印象

清作の妻

あらすじ:お兼は貧しい家に育ち、家の為に呉服屋隠居の囲われ女となる。隠居から貰ったお金を両親に渡すお兼。その金持ちな男へは愛は無く、抱かれることが苦痛であった。ある日、隠居は心臓発作で死んだ為、母と故郷の村へと帰るが、金持ちの男に囲われていたという過去がある為、村八分となる。愛に飢えていたお兼は、運命の出会いをする。村一番の好青年、清作である。二人は恋に落ち、村中の反対を押し切り結婚をする。しかし、折りしも日露戦争が勃発。清作にも召集令状が届く。今まで天涯孤独であったお兼は夫

菊豆 (チュイトウ)

あらすじ:年老いた夫の折檻を逃れ、彼の甥との不倫に走る菊豆。夫は自分が子を作る能力を失ったため、その腹いせに妻に辛く当たったのだが、図らずも甥との間に息子が生まれ、卒中で半身不随になった夫ではあったが、物心ついた少年をつかまえ、自らを“父”と呼ばせようとする……。 チャン・イーモウ監督作品は何本か観ましたが、一番好きな作品。原作では農家だったが、映像的な効果を狙って染物屋に変更されたとのこと。今作品の人物の心理描写に小道具が効果的に使われており唸らされる。コン・リーは期待通

人生フルーツ

あらすじ:自身が設計を任された名古屋近郊のベッドタウン、高蔵寺ニュータウンに夫婦で50年間暮らす90歳の夫・修一さんと、敷地内の雑木林で育てた野菜や果物で得意の料理を手がける87歳の妻・英子さんの津端夫婦。敗戦から高度成長期を経て、現在に至るまでの津端夫婦の生活から、日本人があきらめてしまった、本当の豊かさを見つめなおす。 『食は命』 『ときをためて、こつこつ、ゆっくり』 津端夫妻を通して人生のきらめきがみえる作品。丁寧に、ちゃんと生きないといけないと心の襟を正してくれ

ヒッチコック/トリュフォー

解説:フランソワ・トリュフォーによるアルフレッド・ヒッチコックへのインタビューを収録し、「映画の教科書」として長年にわたって読み継がれている「定本 映画術 ヒッチコック/トリュフォー」を題材にしたドキュメンタリー。インタビューが行われた1962年当時のヒッチコックとトリュフォーの貴重な音声テープをはじめ、ヒッチコックを敬愛する10人の名監督たちにインタビューを敢行し、時代を超越したヒッチコックの映画術を新たな視点でひも解いていく。 トリュフォーは、『定本 映画術 ヒッチコッ

この世界の片隅に

あらすじ:昭和19年、故郷の広島市江波から20キロ離れた呉に18歳で嫁いできた女性すずは、戦争によって様々なものが欠乏する中で、家族の毎日の食卓を作るために工夫を凝らしていた。しかし戦争が進むにつれ、日本海軍の拠点である呉は空襲の標的となり、すずの身近なものも次々と失われていく。それでもなお、前を向いて日々の暮らしを営み続けるすずだったが……。 今作品は、能年怜奈から「のん」に改名後の復帰作ということで注目していた。そして映画の内容も非常に良く、鑑賞後の映画の余韻がしばらく

近松物語

「大経師昔暦」を原作に、愛に結ばれた男女が不義密通の罪で刑場に引かれていくまでを描いた作品。 溝口健二監督作品でいつも思うことは、なんと昔の日本とは生きにくい国だということだ。今作品の舞台となる江戸時代は、妻は夫以外の男と不倫した場合、「不義密通」という罪で当事者である妻と男は死罪とし、 更に被害者の夫には現場で妻と男を殺害しても無罪という報復権が認められている。因みに主人の妻との密通では、 男は引き廻しのうえ獄門とし女は死罪に、 また養父と密通した養女や父娘・母子・兄弟姉

アイ、トーニャ

あらすじ:貧しい家庭にて、幼いころから厳しく育てられたトーニャ・ハーディング。その才能と努力でアメリカ人初のトリプルアクセルを成功させ、92年アルベールビル、94年リレハンメルと二度のオリンピック代表選手となった。しかし、彼女の夫であったジェフ・ギルーリーの友人がトーニャのライバルであるナンシー・ケリガンを襲撃したことで、彼女のスケート人生の転落が始まる。 トーニャ・ハーディング事件のゴシップ騒動は、当時日本でも大々的に取り上げられていたので覚えている。スケート靴の紐が切れ

REC/レック2

あらすじ:完全隔離された伝染病の発生源であるアパート。医師と警官隊がヘルメットにCCDカメラを装着し、感染の深層部であるアパートの最上階に向かう。しかし、次々に仲間たちが感染。閉鎖されたアパートの中で凶暴化した仲間におびえ、精神的に追い詰められながら、彼らはあるものを目にする。 今作品は、『REC/レック』の終盤から物語が始まる。前作では、アパートで伝染病が発生し、住人やその住人を救うために派遣された消防士たちが伝染病に感染してゾンビと化すパニックムービーであった。映像は