見出し画像

清作の妻

あらすじ:お兼は貧しい家に育ち、家の為に呉服屋隠居の囲われ女となる。隠居から貰ったお金を両親に渡すお兼。その金持ちな男へは愛は無く、抱かれることが苦痛であった。ある日、隠居は心臓発作で死んだ為、母と故郷の村へと帰るが、金持ちの男に囲われていたという過去がある為、村八分となる。愛に飢えていたお兼は、運命の出会いをする。村一番の好青年、清作である。二人は恋に落ち、村中の反対を押し切り結婚をする。しかし、折りしも日露戦争が勃発。清作にも召集令状が届く。今まで天涯孤独であったお兼は夫を失うことを恐れ、ある恐ろしい行動にでる・・・・。 

画像1

増村保造監督作品は何本か観ているが、その中で私的に一番好きな作品である。脚本を担当した新藤兼人氏の反戦色の強さと、増村監督が得意とする男女の情念が深く交わって今までにない戦争映画へと仕上がっている。 若尾文子氏は、演じる役柄が凄惨な状況へと追い込まれると俄然本領を発揮する。彼女の一番の魅力は瞳だ。怒りや悲しみ、愛する男への執念を目に宿して感情露に演じるため、観ている側の心を突き刺すのだ。お兼が起こした恐ろしい行動も若尾文子氏の壮絶な演技により説得力を持つ。そして、お兼の愛を受け止め、昇華するという難しい役どころを田村高廣氏が好演している。今作品は、男女の究極の愛を描いた増村監督の真骨頂ともいえる名作である。


この記事が参加している募集

#映画感想文

67,333件

日々観た映画の感想を綴っております。お勧めの作品のみ紹介していこうと思っております。