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近松物語

「大経師昔暦」を原作に、愛に結ばれた男女が不義密通の罪で刑場に引かれていくまでを描いた作品。

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溝口健二監督作品でいつも思うことは、なんと昔の日本とは生きにくい国だということだ。今作品の舞台となる江戸時代は、妻は夫以外の男と不倫した場合、「不義密通」という罪で当事者である妻と男は死罪とし、 更に被害者の夫には現場で妻と男を殺害しても無罪という報復権が認められている。因みに主人の妻との密通では、 男は引き廻しのうえ獄門とし女は死罪に、 また養父と密通した養女や父娘・母子・兄弟姉妹などの場合には畜生姦として全て死罪とされるという時代でした。今作品は、その江戸時代を舞台にして、その時代での歪な格差社会を浮き彫りとしつつ男と女の愛の逃避行を浄瑠璃の如く描いています。この封建社会だった江戸時代は、武士が支配者であり、男尊女卑がまかり通っていた時代です。その為女性は地位が低く、自分の意志で結婚できない時代でありました。その時代背景で描かれる男女の情念は、なんと美しくことか。そして男の一途な想いを打ち明けられた後、女の男と生きることへの執着が何と説得力のあることか・・・。溝口監督が描く「男女の愛」は、心の深いところへ水が流れるが如く染み渡る


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