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「二拠点居住」実践者に聞く 地方で事業を起こすということ

今回ご紹介する奥村裕之さんは、2019年に大館に「嫁ターン」で移住し、大館でスリー株式会社を立ち上げ、VR/AR事業や、デジタルマーケティング支援を行っています。
そんな奥村さん、大館に生活の拠点を起きながら、大館と東京それぞれで事業を行う、まさに「2拠点居住」の実践者でもあります!2拠点居住するなかでの「おおだて暮らし」についてや、大館で事業を起こすメリットなど、インタビューしてみました!

<インタビュアー>
  大館市商工課地域おこし協力隊 三澤雄太
  大館市商工課地域おこし協力隊 三澤舞

大館(秋田)⇔東京の2拠点生活での働き方について

舞:さっそくですが、大館に移住してきたのはいつですか?
奥村:妻が2019年8月で、私が9月ですね。
雄太:9月に移住して、大館ではいつ起業したのでしょうか?
奥村:起業したのは2019年の4月ですね。
雄太:起業した後に移住したのですね!移住前に起業というのは珍しいパターンかもしれませんね!
奥村:もともと私が代表の会社を東京に持っていて、その会社の事業を売却して、大館に新しく会社を作りました。
雄太:事業を売却…めっちゃかっこいい響き…!
舞:(笑)ちなみに、売却した事業はどんな事業だったのでしょうか?
奥村:VR事業です。事業を売却し、売却先の会社の取締役に就任しました。やっぱり、東京は東京の会社が求められるし、秋田は秋田の…っていうのがあると思うので、東京に拠点は残しておきたかったです。
雄太:なるほど。それで2拠点居住を実現したわけですね!
舞:「事業は東京、住居は秋田」という選択もあったと思いますが、仕事の場所としても秋田を考えるきっかけは何かあったのでしょうか?
奥村:良い質問ですね!(笑)もともと、Webマーケティング支援の仕事がたくさんあったので、正直場所はどこでも良かったっていうのはあります。当時は、月に一回、東京と秋田を行き来する予定だったので、もっとお客さんと密に関われるかなと思っていましたが、いろいろ予定が変わっちゃいましたね。
雄太:行き来ができないと。やはり、新型コロナウィルスの影響もあるのでしょうか?
奥村:はい。コロナもありますが、あとは事業の方向性の転換も大きかったです。
雄太:事業の方向性の転換ですか。具体的にはどのような?
奥村:事業としてはもともとWebマーケティングをメインにやっていたのですが、正直、自分じゃなくてもできる領域が増えてきて、価値が発揮しにくくなってきているなと感じていて。なので、いまはWebマーケティングはちょっと引いて、VR事業に資源を集中して、伸ばしていこうかなというところです。

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秋田県鹿角市花輪にある「旧関善酒店」にて。写真はVR撮影の下見の様子。

雄太:なるほど。確かに、「VRといえば奥村さん」のイメージはあります!新聞などのメディアでも取り上げられていますよね!
奥村:おかげさまで、これまでメディアにも色々と取り上げていただけました。秋田に住んでいて思うのは、逆輸入みたいなのがけっこういいなと思っていて。

大館で作り、外で勝負する。

舞:逆輸入ですか。詳しく教えてください!
奥村:はい。例えば、東京ではなかなか実績作りが難しいものでも、秋田では関係のなかで実績を作らさせてもらえる事が多くて。"新聞に載りました" "こんな建物のVRを撮りました"っていうのを東京に持っていくと、お客様にもいい反応がもらえるんです。秋田で実績を積ませていただきながら、事業を通して地域にも貢献して、それを実績として東京に持っていくっていうのはアリなんじゃないかなと、最近は思ってます。
舞:なるほど!それは面白いですね!2拠点ならではの視点かもしれません。ちなみに、東京で受けがよかった仕事はなにかありますか?

秋田犬の里

秋田犬の里の3DVRウォークスルー(参照:秋田犬ツーリズムWebサイト特集記事「おうちでVR秋北巡り」より)

奥村:やっぱり、秋田犬の里ですね。東京だと秋田犬関係は喜んでもらえます。あとドローンの映像とか。私の場合、取引先として建設会社が多いので、大館樹海ドーム(ニプロハチ公ドーム)も受けがいいです。
雄太:確かに、樹海ドームは建設業界の視点でもとても価値がありそうですね!その他にも大館といえば、秋田犬・曲げわっぱなど、全国区のものもいろいろありますしね!…そうそう、ちょっと気になるというか、聞きたいことが…
奥村:せっかくなので、なんでも聞いてください(笑)
雄太:地方は東京に比べて基本的にプレイヤーが少ないじゃないですか。「何をやるにも人探しから始まる」というか、、”この人できるかな~?”と思いつつ声をかける感じになってしまったりするんじゃないかなと。その辺りはどうですか?
奥村:秋田にもたくさんできる人はいます!結局は"人"なので、どのような方向性に持っていくか、っていう人プロデューサー的な人が1人いれば、高いクオリティまで持っていく事が可能だと私は思っています。地方だと、いい意味ですごいハイクオリティを求められてるわけでもないし、それくらいでちょうどいいのではと、個人的にと思います。
雄太:なるほど。人としての信頼の中で、しっかり方向性を導いていく人さえいれば大丈夫だとお考えなのですね。
奥村:あと、事業をすすめる上で、東京ではあまり補助金とか助成金を使ったことがなくて、商工会議所ってすごく遠い存在でした。ごく稀にいい補助金があるときに行くだけというか。秋田では商工会議所との関係が濃いというのもあり、補助金を活用した開発もしやすいと思います。秋田で開発して、それを全国に売っていく!ということです。
雄太:まさに、その循環がうまく行けば、補助金で地域が潤う構図にもなりそうで、今後の展開も楽しみです!

大館での暮らしについて

舞:働き方について伺いましたが、今度は奥村さんの暮らし方についても伺いたいと思います。
奥村:現在は妻の実家で同居していますが、秋田に来てからプライベートがすごい充実していて、マジで楽しいです。こんな楽しいのかなっていうくらい楽しいから、今が幸せだなって思います。

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大館市から車で1時間の十和田湖での一コマ。プライベートの充実が大館での暮らしの充実にもつながっている。

雄太:それは良いですね!楽しいな!充実してるな!っていうのは、具体的にどんな要素がありますか?
奥村:東京と対比するわけではないけれど、生活コストがかからないのに、美味しい野菜も食べれるし、ご飯も作ってくれるし、たまにご飯を作れば喜んでくれるし、子どもと遊んでくれるし。私はあんまりこだわりがないタイプの人間だから、やってくれるのはうれしい。で、お風呂一番風呂みたいな。「あざす!」って(笑)、それだけで幸せです。子供が一生懸命やってくれて、家族が健康であればいいやって。それが叶ってます。東京だとそれが叶わないから、家にいたら妻が全部作らなきゃいけなし、家賃も毎月たくさんかかるし。そういう気持ち的な安心ができたのは良かったです。
舞:奥さんとしてもかなりストレスが軽減されますよね。
奥村:そんな気はしますね。すごく生活自体はいいのかな。何不自由なく。大館でよかったなと思っていて、全国出張に行くと感動する景色もたくさんあるけれど、近くにそういうのがあり過ぎたりすると逆に感動って薄れちゃうじゃないですか。そういう意味で、大館は近くに空港もあるし、住むにはちょうどいいなと思っています。
舞:そういう見方もおもしろいですね。
奥村:ただ、やっぱりたまには外に出ていったほうが楽しいよなとは思うので、だからこそ、仕事頑張れよ自分って(笑)

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沖縄県某所での撮影風景。全国的にもまだまだ少数の貴重な「VR人材」として、秋田県外でも活躍している。

舞:大館の第一印象はありますか?
奥村:初めて大館に来たのは7年前ですが、そのときは20代前半だったので、田舎に住みたいとも思っていなかったし「田舎だなー」「秋田犬だなー」って感じでした。正直、どこも一緒じゃないけど、よくある田舎の一つでしかなかったかなと思います。ただ、東北は私の親戚が住んでいたこともあって、住むなら東北かなという思いもありました。
雄太:そこから、5年前に大館に移住しようと思ったきっかけなどはあったのでしょうか?
奥村:子どもが生まれたので、東京で暮らすよりも田舎で暮らした方が幸せだと思って移住を決断しました。東京にいるときも、出社が義務ではなくほとんどカフェで仕事をしていたので、それだったら東京にいる意味なくね?と(笑)
舞:東京の生活に慣れてると、こっちの生活は不便に感じませんでしたか?
奥村:パソコンだけあれば生きていけるし、歩いて数分でコンビニもあるし、なんにも変わらず生きていけるなーと。朝、空港に行けば、東京で午後イチの打合せにも参加できるので、だから大館はちょうどいいなと思っています。
舞:子どもの教育環境とかは気になりませんでしたか?
奥村:”私立に”とかのこだわりもないし、大館の教育も良いらしいと聞いているので、高校くらいまでは自力で頑張れよじゃないけど、そういう意味で、いろんな経験したほうがいいんじゃないかなと思ってます。
雄太:大館の生活で困ることはありますか?
奥村:ショッピングモールがない、と妻が言っております(笑)雪が大変とは思うけど、それくらいかなぁ?大変なこと…ないなー…。空港も駐車場無料だしね(笑)
雄太:最後に、将来的にどんな暮らしがしたいですか?
奥村:時間が空いたときは釣り行ってみたりとか、SUPしてみたりとか、自然を使った遊びをしてみたいですね。それを家族でしたい。自然を見るだけじゃなくて、体験したいなと思ってます。首都圏の都会的な暮らしもいいですが、子育てを軸に考えると圧倒的にこっちの暮らしのほうがほうが幸せを感じる瞬間は多いと感じています。
雄太:ありがとうございました。

おわりに

出産を期に奥様の地元である大館市に移住してきた奥村さん。”パソコンだけあれば生きていける"という言葉がありましたが、場所を選ばず仕事ができる下地があるなかで、大館という"気持ち的な安心"が得られる場所を生活の拠点にしたということが伺えました。
取材時、奥村さんから「足るを知る者を富む」という言葉を教えていただきました。"満足することを知っている者は、たとえ貧しくとも精神的には豊かで、幸福である"という意味なのだそう。
奥村さんの働き方・暮らし方は、「豊かさは、東京にすまなくても追求できるんだ!」ということの実践でもあるように思えました。
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