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ポチャ、ニュプ、パリッ「睡蓮の池」を体感しながら『モネ 連作の情景』に誘う “Active Slate”

ソニー広報部 Tomです。
1月28日まで東京・上野の森美術館で開催中の『モネ 連作の情景』。
1874年に第1回印象派展がパリで開催されて150年目の節目を記念し、60点以上の展示作品すべてがモネ作品のみ“100%モネ”づくしの贅沢な展覧会です。
印象派を代表する画家のひとり、クロード・モネ(1840-1926)は、日本でも大人気で、先月12月25日に来場者数30万人を突破し、1月12日からは閉館時間を1時間延長するほど、連日大盛況です。

この『モネ 連作の情景』で、来場者を驚かせているのが、「睡蓮の葉の上を歩いてみよう」と銘打った、入場してすぐの場所にある「睡蓮の池」を体験できるゾーンです。※東京会場のみの展示です
セーヌ川流域ジヴェルニーにあるモネの自宅の光溢れる庭園が、壁面に映し出され、足元には庭園にある睡蓮の池をイメージした映像が床一面に広がっています。その睡蓮の上を歩いていくと、歩みに合わせて、葉や水面がポチャニュプッと沈むのを足裏で感じたり、睡蓮がゆらゆらと揺れたり、水紋ができるのを見たり、ピタピタと水の揺らぐ音が聞こえたりします。(拙いムービーですみません:Tom)

まさに、触覚・視覚・聴覚など全身で感じながら、モネの世界に誘うプロムナードとなっています。この「睡蓮の池」体験ゾーン、実は、触覚提示技術(ハプティクス)を利用してソニーが開発したインタラクティブな床型ハプティクス“Active Slate” (アクティブ スレート)です。
"Active Slate”の展示を担当された横山 諒さんと青木 泰憲さんにお話しを伺い、睡蓮の池に備わったソニーのハプティクスに迫ってみます。

技術開発研究所 横山 諒さんとソニー・ミュージックエンタテインメント 青木 泰憲さん

「睡蓮の池」体験ゾーンとは?

ー この「睡蓮の池」で使用されているソニーの技術について教えてください。
青木さん:“Active Slate“です。

ー 踏み込んだときにポチャやパリッといった音が聞こえます…その名のとおり、機能的に反応するスレート(Slate:石板)ですね?
青木さん:踏み込んだことを検知して、“Active Slate”から振動や音響を出して表現しています。

ー 同じ場所を踏み直すと、どうなりますか?
横山さん:踏み込み方に応じて、違う反応をします。

「睡蓮の池」体験ゾーンにある案内

ー 裸足で体験したほうが、より反応が分かりやすいのでしょうか?
青木さん:今回の“Active Slate”は、靴を履いた状態に最適化しているのと、靴を履いたままでも体験できることが魅力と考えています。

 ー もっと広い「睡蓮の池」にもできますか?
青木さん:はい、広さは無制限です。
 
ー 「睡蓮の池」の下には、どんな装置が入っているのですか?
青木さん:残念ながら、正確な仕組みや大きさなどはお答えできませんが、センサーと振動を発生させるアクチュエータという部品が仕込まれています。


“Active Slate”で使用されているハプティクスとは?

ーハプティクスとは、どんなものですか?
横山さん:人が触覚的に感じるあらゆることを、擬似的に再現する技術です。「触覚提示技術」とも呼ばれます。触覚提示技術(英: haptic technology)は、利用者に力・振動・動き・温度・痛み・重さなどの感覚をフィードバックします。視覚におけるコンピュータグラフィックスと同じ役割を皮膚感覚で果たすと言えば、イメージしやすいでしょうか。
少し専門的になりますが、ハプティクスを使って、微妙に制御された触覚を伴う仮想オブジェクトを作ることができ、それによって人間の触覚がどのように働くのかという研究が可能になりました。そういったオブジェクトで、それまで困難だった人間の触覚機能を体系的に精査できるようになりました。それにより、触覚とその背後にある脳機能がどのように働くのかを理解することに貢献しています。
 
ー ハプティクスはソニーが開発したのですか?
横山さん:いいえ、ハプティクスは幅広く研究が行われている分野です。ソニーはその技術を取り入れて、ソニーとしてできることを研究チームが考えています。
振動分野を例にすると、従来の単なるブルブル、ブーブーといった表現に留まらず、「睡蓮の池」のように、ポチャッといった、よりリアルだなと感じさせるような表現ができるようになりました。
 

モネと言ったら「睡蓮」、展示のクライマックスは「睡蓮」の連作です。
(※プレス用取材日に主催者許諾のもと撮影)

ー ハプティクスを活かして、どのように“Active Slate”が誕生したのでしょうか?
横山さん:手ぶらで体験できる触覚提示デバイスは作れないだろうか?と、デバイス自体を環境に埋め込むことで、体験者の負荷を低減させるために研究開発をスタートしたのがHaptic Floorです。チームで培ってきた信号処理技術とノウハウを駆使して、繊細で臨場感の高い感触を全身に届けることを実現しました。そのHaptic Floorに、インタラクティブ性をもたせたのが、“Active Slate”です。
人の足の裏は、私たちが想像しているよりも敏感に、足が触れた部分のテクスチャ(質感)の変化を感じ取ることができます。床が水たまりや砂浜に変わったかのように感じさせる技術も研究開発しています。人の歩行に合わせて、多彩な振動フィードバックを実現するために、数少ないセンサーで微細な踏み込みの変化を検知する技術が搭載されており、まさに空間を超越したような体験が可能となっています。
今回の「睡蓮の池」体験ゾーンは、青木さんはじめソニー・ミュージックエンタテインメントの皆さんによるテクニカルディレクションや共創によって、2日半という短時間で設営できました。

ジヴェルニーの「水の庭」に立つモネの写真(1905年)

― これまでにもハプティクスが、ソニーグループの商品に用いられたことはありますか?
横山さん:ソニーのビジネスだけではなく、ソニーグループの幅広いビジネスに貢献できるよう技術開発を進めてきました。スマートフォンXperia™の一部の過去モデルでは、私たちの開発した技術を元にした振動生成アルゴリズムが搭載されています。
また、プロフェッショナル/業務用向け製品でも、ソニーPCLが手掛けている、ロケーション・ベースド・エンタテインメントに対して、Haptic FloorやHaptic Vestなどで技術貢献しています。

ソニーのハプティクスについて詳しくは、下記でもご覧いただけます。
ソニーグループポータルサイト:R&D Activities「ソニーのハプティクス技術

会期終了まで一週間余りですが、『モネ 連作の情景』(東京)に行かれる際は、“Active Slate”で「睡蓮の池」をぜひ体感してください!


広報部内一のアート好きということで白羽の矢が立ち、今回記事の担当に。好きな画家は、タマラ・ド・レンピッカ、ミケランジェロ・カラヴァッジオ、ピーテル・ブリューゲル(父)、アンドリュー・ワイエス、リチャード・エステス、フランシス・ベーコン、ルネ・マグリット、フリーダ・カーロ、ヨハネス・フェルメール…続く。
執筆:広報部 Tom

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