三百三十話 態度違わない?

「ごきげんよう」「神のご加護を…」

朝の清冽な空気の中、女子生徒の挨拶がこだまする…。

学校の校門をくぐると、そこは身も心も清らかな乙女の園…。

そう、ここは神田ミカエル女学院…。

中庭の大天使ミカエル像が、通う女子生徒たちを守護している…。

天界の大天使ミカエルは、ここに通う女子生徒たちを見て何を思うか…?

その御心は、まさに神のみぞ知るということなのだろう…。

ここに三年間通えば、お淑やかなお嬢様になって卒業できるという…。

制服は翻さないように、静かに歩き…。

清廉潔白で文部両道、それでいて純粋無垢な心を持った乙女たち…。

この学院には、そういった生徒しか存在しないのです…。

否、今日から新たに校門をくぐった、たった一人の生徒を除いて。


訳あって、二週間の謹慎中だった私…。

その謹慎も二週間経ち、ようやく終わった。

二週間ぶりの学校に登校することに。

登校する前日に、登校前に理事長先生の元に行くように。

と、電話が前日あった。

朝早く起きて、学校に行く支度をする私たち。

無事?学校に着いて、理事長室に向かう…。

理事長室に行って、理事長先生の話を聞く。

理事長先生から天使のカードを託された私…。

クラスメイトに何か言われたらカードを見せればいいらしい。

それで、理事長先生の話は終わったらしい。


その時、理事長室のドアがノックされ…。

ドアの方を見ると、薔薇組担任の田中先生がいた…。

田中先生の顔、すごい久しぶりに見た…。

相変わらず、蒲公英の綿毛のような印象の先生。

「真島さん、それと鈴木さんですよね?教室に行きましょう」

私たちを田中先生が迎えに来てくれたらしい…。

私たちは理事長先生にお辞儀をして、理事長室を後にした…。


「真島さん、具合はどう?今日は大丈夫そう?」

田中先生が私の具合を心配してくれている。

私は春にこの学校に転入して…。

自己紹介の時、気絶して倒れてしまったのだ。

そのあと、ずっと保健室で授業をしていた。

「あ、はい!多分大丈夫だ思います」

私はいきなり聞かれたので上擦った声になってしまう。

隣で藍さんが、ぷぷっと笑っている。

うぅ、恥ずかしいよ…。

「真島さんが元気そうでよかった…」

田中先生も、嬉しそうであった…。

「担任の田中です。よろしくお願いしますね」

田中先生は主に藍さんの方に挨拶をした。

藍さんもよろしくお願いしますと言っている。

今回は自己紹介ちゃんとできますように…。


3人で歩いて、薔薇組を目指す…。

どうもクラス名が花の名前なのが違和感ある…。

ほどなくして、薔薇組に着いた…。

私は緊張でまた胃が痛くなってきた…。

田中先生はすぐに教室のドアを開けて中に入っていく…。

当然私も教室の中に入らなければ行けなくて…。

入った瞬間、クラスメイト全員が私の方を見ている。

「具合が悪くて保健室登校だった真島さんが、今日から復帰することになりました。皆さん仲良くしてあげてくださいね」

田中先生がそう説明してくれた。

クラスメイトは、まばらに拍手をしている。

そういえばそんな生徒いたなぁって顔をしている。

私はとりあえず、お辞儀をした。

「あと、こちらは転入生の鈴木藍さんです。まだわからないことが多いでしょうから、皆さんフォローしてあげてくださいね」

クラスメイトは今度はかなり拍手している。

うわぁ、かわいい!とかギャルだぁー!とか囁いている。

なんか、私の時と態度がかなり違わない?


拍手が鳴り止んだ…。

「あっしの名前は鈴木藍!見た目通りのギャルだけどよろしく!」

藍さんは勝手に自己紹介を始めた。

よろしく!の時に、ウィンクまでしている。

クラスメイトはまた割れんばかりの拍手喝采をしている。

藍さんって、すごい人気者だなぁ!?

やっぱり陽の者は最初から違いますなぁ…。

ようやく拍手がまた鳴り止んで…。

「じゃぁ、2人の席は窓際の後ろの席ね」

田中先生が窓際の二つの席を指差した。

藍さんが人気者のおかげで、私は自己紹介しなくて済んだ。

よかったぁ、本当によかった。

私は胸を撫で下ろした。


私は1番窓際の後ろの席で…。

その前の席が藍さんの席だった。

藍さんが近くの席でよかった。

ふと、隣の席を見ると眼鏡をかけた生徒がいる。

その生徒も私のことを見ているのだった。

ショートカットに眼鏡で真面目そうな生徒。

目が合ってしまったので、私はすぐに逸らした。

なんかこちらを睨んでいるように感じたのだけれど?

私、何も悪いことしてないよね?

まだこちらを見つめている気配がする…。

うぅ、なんか怖いよぉ…。

だからといって、藍さんに頼るわけにも行かず。

私はその視線に耐えるしかなかったのである…。

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