ハタブ

エッセイ『その胸オレにかしてくれ』をnoteにて連載中。 今を生きる30代の視点から瑞々しく日常を切り取る。

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エッセイ『その胸オレにかしてくれ』をnoteにて連載中。 今を生きる30代の視点から瑞々しく日常を切り取る。

最近の記事

別れた後

パートナーぐるみで友だち付合いをしていて、彼の方が計画を立てるのも得意でお酒の場も好きだった。別れた後に約束した海水浴にも誘われず、SNSにあげられる楽しそうな元パートナーや友だちの写真に深く傷ついた。自分もそこにいたはずなのに、自分だけがいない写真を見つめる。そんな投稿はその後も何度も続いた。SNSの投稿自体は自由にしていいものだから、それを恨んだりはしていないけれど、だからと言って納得することもできずいた。行き場のない気持ちは結局胸に抱えておくしかなかった。その胸のしこり

    • あやまらせ癖

      昔働いていた職場で、ある人に対していつも謝っているなと思ったことがある。いや、謝されているなと思ったことがある。どちらでもいいようなことをわざわざ指摘したり、過去の仕事のあれこれを引っ張り出してきて、私にとって具合の悪い話をしたり。仕方がなく「自分も悪かった」という感じで困り笑顔を作ってみる。そうするとスクリーンショットや過去のエビデンスを突きつけてきて、ほらあの時のこれだよと言ってくる。正直すごく嫌な気持ちになる。ひょっとして今も自分は同じようなミスをしていて、それを指摘し

      • 「今が一番若いんだから」と言われても... 4/4

        終わりに 老若と関係ない所で老若で判断されることへの違和感を述べてきたが、男性として生活している自分ですらそう感じるのであれば、女性として生活している人々はどうだろうと考えてみる。女性は美醜ならず老若も厳しく判断されている。姉にはあった「そろそろそういう歳だから」というお見合い話など来たこともないし、言いたくはないがどこかで聞いた「薹(とう)が立った」なんて言葉も私は言われたことがない(耳にしていないだけかも知れないが)。この言葉はもともと植物や実が食べ頃を過ぎたさまを例える

        • 「今が一番若いんだから」と言われても... 3/4

          「若さ」とはなんだろう。若さとは未熟さと可能性と捉えられている。これからなんでも出来て、何にでもなれるような可能性。だから「今が一番若いんだから」という言葉の後にはポジティブな言葉が付随し、そこには指導的意味合いが込められている。無限の可能性…果たしてそうだろうか。生まれた時点である程度の可能性は決められてしまっている。人は生まれながらに不平等であるから平等に近づける努力が必要とされるし、平等などないから平等を目指していかなければならない。生まれた瞬間から引かれたスタートライ

          「今が一番若いんだから」と言われても... 2/4

          「今が一番若いんだから」の後にはポジティブな言葉が付随するようになっている。つまり励ましに使われる。しかし、疲弊している時に若さという言葉を用いて励まされることは更なる疲労を人に与えることにならないだろうか。 もうなんだか色々疲れてしまった時に「まだ若いんだからそんなこと言わないで頑張ろう」なんて言われてしまっては、どっと疲れてしまう。励ましよりも労いが必要な時に、相手から励ましを手渡され、その苦労や疲労を老若で片付けられてしまう。その強引性にどっと気持ちが重くなる。もちろ

          「今が一番若いんだから」と言われても... 2/4

          「今が一番若いんだから」と言われても... 1/4

          今が一番若いんだから!という言葉。ある一定の時期から流行り出したような気がする。しかしそれが一体いつだったかは分からない。気がつけば身の回りにあった。よく耳にするようになったのは30代に突入してからだったと思う。もしかすると流行りなどではなく、ずっと前から存在するありふれた言葉で、世代が違っていたから耳にしなかっただけなのかもしれない。 今が一番若いんだから!という言葉の後にはポジティブな言葉が続く。今が一番若いんだからこれに挑戦しなきゃ!とか、そういった風に。 今が一番

          「今が一番若いんだから」と言われても... 1/4

          無意識のレッテル

           ダイビングの資格取得のための実技が終わり、伊豆急行線の川奈駅へワゴンで送ってもらった。特に用事もないので観光もせずそのまま帰ることにした。12:06の熱海行きに乗る。熱海から新幹線こだまに乗る手もあるのだが普通電車で向かうのとでは倍ほどの運賃の差があったので、節約のために普通電車で帰ることにした。「黒船電車」と名付けられた、窓が大きく切り取られた海を一望できるつくりなっている電車に乗り込む。特別料金でも必要なのかと調べたが、通常料金で乗れる電車だった。 約3時間の旅が始まっ

          無意識のレッテル

          「いや、違う」と言われて思ったこと

          「いや、違う」「ううん、違う」という風にバッサリとした切り返しをされる。返す言葉もなくじっと相手の発言に耳を傾ける。そうすると、私の発言と全く異なるわけではなく、半分くらい合っているじゃん!ということが多い。もちろんどの程度を合っているとし、間違っているとするかの体感も人それぞれなのだが、完全一致検索に引っ掛からないものたちは全て「違う」と分類されることに違和感とキツさを感じてしまう。 確かに、物事に白黒がつけばわかりやすいなと思う。性格診断のフローチャートのように「あなた

          「いや、違う」と言われて思ったこと

          ケンカを見た日

          木曜日の夜。リモートワークを終えて最寄りのバス停から中野駅へ行こうとしたところ、発車直前のバスを見つけて飛び乗った。中野駅北口側のバス停から改札までは一直線にたどりつける。バスを降りて、なだらかなアスファルトの坂を登ると今度は下りエスカレーターがあり、それがそのまま中野駅北口改札へと続いている。下りエスカレーターへの入り口にはちょっとしたスペースがある。そこでスーツを着た男性が、Tシャツを着た若者の胸ぐらを掴んで怒鳴っているのを見かけた。正確にはノイズキャンセリングイヤホンで

          ケンカを見た日

          ものを捨てたら見えてきた

          今の部屋に越してきた時は、てんやわんやだった。7年間生活を共にしたパートナーとのカップル解消。そのショックの中、大急ぎで部屋決めと引越し。せっせと荷造りをして友達に引越しを手伝ってもらった。突然のお願いを快く引き受けてくれた事を今でも感謝している。 ものの取捨をする時間はなかった。ウォーターサーバの補充用の水の空き段ボールと、イケアの袋にガンガンものを詰めて荷造りをした。3LDKから1Kへ間取りが変わるのだが私物は減っていない。当然、新居は荷物で溢れかえってしまっていた。

          ものを捨てたら見えてきた

          夢について考えたこと

          あなたの将来の夢は何ですか?こんな質問を何度されただろう。 聞かれ、作文にしろと言うものだから、何とかそれを探さねばならず、何にしようかな…と夢を探しに行った人も少なくはないと思う。 とは言いつつも、私には昔から確固たる将来の夢があった。自慢げに言っているように見えると思うが、半分はそうで、半分はそうでない。 将来の夢。家庭以外の生活空間で、そんな質問をされた一番古い記憶は、幼稚園児の頃だったかと思う。 先生が、掲示物として園児たちの将来の夢を張り出すか何かで、外遊びの時間

          夢について考えたこと

          十数年かけて見つけたのがそれかい?

          見た目とは裏腹にフライパンのように暑い砂浜。 色褪せたキャラクターサンダルを置いて、幼い素足を浜に二つのせてみる。これくらいの熱さなら大丈夫かな?と思い潮風に向かって歩いていく。とき、すでに遅し。 ガラス玉のように熱された砂粒が、一歩進むごとにじわじわと足裏に侵入してくる。気づいた時には浜のど真ん中、引き返すも進むも一緒だ。 ええい!ままよ!と波打ち際めがめて、その潔さとは似ても似つかないぴょこぴょこ歩きで私は逞しく惨めに突き進むのだ。 リモートワークの推奨もなくなり、満員

          十数年かけて見つけたのがそれかい?

          絶対に成功しないと思って行動し続けていた話 (幼稚園編)

          とにかく人見知りで怖がりだった。 母の元を離れると、家から出ると、必ず最悪なことが起きて、ひとりでそれと戦わなければいけないと思っていた。 幼稚園の体験入園の日だったと思う。 母はこのまま僕をここに残し、こっそりと帰ってしまう。 それを子ども特有の勘で分かっていた。目の前のオモチャで、保育士の先生たちが僕の注意を引こうとする。が、ここで屈してしまえば、絶対に母は僕を置いて帰ってしまう!と、母にぴったりと粘着質に貼り付いていた。しかし、おもちゃの誘惑は思った以上に強く、母に

          絶対に成功しないと思って行動し続けていた話 (幼稚園編)

          友達だった話

          このエッセイは雑誌・ウェブメディア掲載と書籍化を目標に執筆しております。みなさんのシェアやいいねが励みになります。 何より、今こうして読んでくださったことが何より嬉しいです!! 川へ行くことになった。 秋川渓谷へは新宿からホリデイ秋川に乗って一時間。そこからバスで10~15分ほどで到着するが、タクシーに乗り込んでしまえば、ひとりあたり700円。バスが来るまでカンカン照りの中で待つのも大変だ、ということで迷わず私たちはタクシーに乗り込むことにした。 元パートナーとの共通の

          友達だった話

          私にも、みんなにも、おつかれさまって言ってあげたい。

          ここ数日、明らかに自分の処理能力が落ちているのを体感していた。 はきはきとしゃべる人の声は問題ないのだが、マスクなどで相手の声量が伝わりにくい時、空いてはいない店の中にいる時など、いつもはぎりぎりでキャッチしていた言葉がうまく拾えず、聞き返すことが多くなった。 あんまり何度も話の腰を折るのも嫌なので、拾い集めた断片的な言葉から会話をつなげていると、一人だけとんでもない僻地にぽつんと突っ立っている。とっくに終わった話題を話し始めたり、または見当違いの返答をしていたりする。

          私にも、みんなにも、おつかれさまって言ってあげたい。

          SNSも友達も恋人も怖くなった話

          ※プライバシーの関係上、一部構成上重要でない部分の設定を変更しております。 仕事も恋人も失って 一身上の都合でコロナ禍にフリーランスとなった。 パートナーと二人暮らしなら家賃も折半で何とかやっていけるし、何より恋人と住んでいるだけでなんとなく気持ちが落ち着いて安心だと思っていた。 その直後に、7年間一緒だったパートナーに別れを告げられた。 1年ちょっと前の話。 7年の関係は、あっけなく気持ちの変化というもので終わってしまった。長い間一緒にいたせいか、その友達のほとんど

          SNSも友達も恋人も怖くなった話