オススメ映画を紹介するよ! 今泉力哉監督作品にはまる編
半年前には名前も知らなかった今泉力哉監督の作品をひたすら追いかけています。ということで、今回もネトフリやアマプラで見た映画を紹介します。
はじめに〜街の上で
今泉力哉監督を初めて知ったのは「愛がなんだ」。それが滅茶苦茶面白くて、次に見たのが「街の上で」です。コレですっかりハマってしまいました。詳しくは別記事でたっぷり書いてしまったので、そちらをご覧ください。
何はなくとも城定イハ。中盤のワンカメ長回し恋バナをここまで面白く撮れるんだと、度肝を抜かれました。他作品でもここぞというところで長回しを使ってきます。他にも今泉監督作品の特徴があるのですが、最後に触れてみます。そして本作の主役でもある若葉竜也(以下敬称略)はたびたび今泉作品に登場します。その辺りも踏まえながら、他作品を紹介していきます。
愛がなんだ
マモちゃん(成田凌)がクズ男、そんな彼に依存しちゃうテルコ(岸井ゆきの)もダメ女。でも2人の時間は幸せそうなんだよね。テルコの親友葉子(深川麻衣)は一見まともそうに見えるけど、
彼女を慕うナカハラくん(若葉竜也)を下僕のように扱っている。さらにマモちゃんが第一印象最悪のすみれ(江口のりこ)を連れてくる。流石に怒りを覚えたテルコが突然思いの丈をぶちまけるラップは必見。
何故かテルコとマモちゃんとすみれとナカハラくんが旅行に行くことになり、この辺りから物語は変化を見せていきます。そして後半の見どころ、葉子から離れることを決意したナカハラくんが、テルコにそれを伝える場面。惚れた男の情けなさと、それでも別れを決意した表情、「幸せになりたいっすね」の一言が胸を打ちます。若葉竜也凄い。
例によって言葉では伝わらないので、是非本編見てください。恋愛の楽しさよりも、もどかしさ、じれったさ、苦さを思い起こさせてくれる作品です。
あ、巨匠岡野陽一がチョイ役で出演しています。見つけられるかな?
ちひろさん
やっぱり有村架純の癒し度は半端じゃなかったです。実は一番孤独を抱えているちひろが、ゆっくりと周囲の孤独な人々を繋いでいく。リアルだけれど、ファンタジーに溢れています。
今回若葉竜也は唯一ちひろと体の関係を持つ男役です。「街の上で」や「愛がなんだ」とは真逆の、「男」を感じさせる役柄でした。
ちひろが癒し、繋いでいく人の中で、最も印象に残ったのはオカジ。べっちん(長澤樹)との初対面時に「そこは話すと長くなるんで」と言うところは可愛らしいし、マコトの家で焼きそば食べながら泣くところは予測していたとは言え、コチラも泣かされました。
他の方のレビューで、「月」がモチーフになっていることが言及されていました。そうしてみると、ちひろさんはかぐや姫なんですよね。いつの間にか彼女に吸い寄せられた人々が、ちょっと次へのステップを踏み出せた後、ちひろさんはお月見の宴を最後に消えていきます。天上に帰って行ったかぐや姫のように。そう言えば、「同じ星の人」とも言っていたっけ。
あの頃。
松浦亜弥やハロプロに魅せられた剱(松坂桃李)が、仲間たちと送る青春時代。時が流れそれぞれの居場所が違っても、あるいは亡くなる人がいても、「あの頃」の思いに生かされている、そんなストーリーでしょうか。
正直、悪ノリ過ぎるステージパフォーマンスにはちょっと引いたし、中田青渚aka城定イハの魅力も今回はイマイチでした。若葉竜也はグループのリーダー的存在でステージを回す役割ということで、また違う雰囲気の役柄です。役者さんって凄いですね。
退屈な日々にさようならを
世間的には無名の役者さんを多く起用した作品。また基本的にコメディタッチの恋愛ストーリーが多い今泉力哉監督にしては、殺人や自死も取り扱った重めの展開です。監督が経験した東日本大震災での体験をベースにしているらしく、たとえ死んでいてもそれを残された人が知らなければ、生きていることになるのだろうか、という命題がテーマになっているようです。もちろんその根底には、「愛する人の死」があり、大きな括りで言えば、ラブストーリーと言えるでしょう。
売れない癖に自信だけはある映画監督が嫌なヤツだけに滑稽であったり、ある女性たちが解放される時のダンスがファンタジックであったり、後半の次郎にまつわる人々がその真相を知る場面の緊張感だっりなど、見どころはたくさんあります。しかしやっぱり言及しておかなくてはならないのは主題歌も歌うカネコアヤノの扱いでしょうか。ゲスい映画監督に、面と向かって「胸揺れるほどないでしょ」って言わせてしまう場面では、「今泉監督鬼畜か!」って思いました。(カネコアヤノ さんライブで見たことあります。素敵な方です)
こっぴどい猫
そもそも「モト冬樹生誕60周年記念映画」を作る必要があるのか、というところなんですが、モト冬樹は非常に真面目に、いい演技をしています。思慮深く、思いやりもあり、言葉にも重みのある作家、父親、先輩です。今泉監督は事前にモト冬樹と飲む機会を設定したようで、まさに当て書きの良さが出ています。
すごく狭い範囲で物語が展開し、登場人物も「知り合いの知り合い」くらいだし、その中での多角形恋愛が、アンジャッシュのコントレベルですれ違ったりしていく様が面白いです。ここで都合良すぎるって思っちゃう人は、そういう舞台演劇なんだとリセットするといいかもしれません。
後半のモト冬樹のブチ切れっぷりは人としてどうかとも思いますが、わちゃわちゃした見せ場でもありますね。そして最後の決め台詞が「よしっ!」。
途中第四の壁が今泉監督自身によって崩されます。そこも見どころです。
かそけきサンカヨウ
志田彩良が主演。優しい父親役は井浦新。陽は高校生ながら夕飯作ったり、家事をこなしている。そこに突然父親が「再婚したい」と告げ、再婚相手の女性、その幼い娘との新しい生活が始まります。ただでさえ不安定な年頃なのに、新しい家族を迎え入れることの難しさを、志田彩良は淡々とした表情で演じています。家族がギクシャクしていくストーリーなのかな、とも思いますが、菊池亜希子演じる再婚相手は見るからに優しいいい人。当然陽も良い関係を築いていこうとします。しかし、幼い妹のちょっとしたイタズラに厳しくあたってしまいます。基本的に今泉監督の登場人物は、体温低め、血圧低めな感じてゲキオコになることはほとんどありません。そんな中で静けさが際立っていた陽の激しい衝動が印象に残りました。
主題歌は崎山蒼志くん。大昔のパンダ音楽祭で崎山蒼志、カネコアヤノ 、眉村ちあきならびのライブを見ました。今泉監督、眉村ちあきを是非主題歌に!
終わりに
今泉力哉監督作品の特徴としては、まず固定カメラ長回しがありますよね。「街の上で」だけではなく、「かそけきサンカヨウ」などでも効果的に使われています。そうした長回しでの自然な会話、冗長になる一歩手前の「間」、クローズアップでの表情などを駆使して、ほとんど事件が起こらなくても物語の先を見続けたいと思わせることができる稀有な監督だと思います。
また、「退屈な日々にさようならを」「こっぴどい猫」「かそけきサンカヨウ」では冒頭部分に何を言ってるのか分かりづらい会話シーンを挿入し、後にストーリーの中に組み込まれていくという手法も使われています。「退屈な日々にさようならを」のユンボ前での3人の女性に寄る会話は後半で生きてくるし、そこだけでも魅力的なシーンです。
多作なのも今泉監督の強みでしょうか。まだまだ見ていない作品多いですし、日々新作情報(永野芽郁!)が流れてくる状況です。ハリウッド的派手さは皆無ですが、今泉力哉監督作品でゆったりと心地よい時間を味わってみてください。
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