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新しい八百屋のかたちを届けるために。言葉を丁寧に紐解いて見つけた「らしさ」の表現とは|Behind the SJ Works

南青山に店舗を構える槇村野菜笑店まきむらやさいしょうてん。ソニックジャムのご近所さんであり、以前からお付き合いをさせていただいている会社です。

レストランやケータリングなどの事業を営む槇村野菜笑店は、実は八百屋さん。しかしながら、これまでのコーポレートサイトではレストランとしての側面が強く、八百屋であることや事業を展開している理由などを伝えることができていませんでした。

起業から10年の節目となるタイミングで、会社の意志や価値をあらためて見つめ直し、世に発信していく。そのための一歩となるコーポレートサイトのリニューアルと販促用ポストカードの制作をソニックジャムで行いました。

今回は、槇村野菜笑店の価値をどう定め、どのような設計で打ち出していったかについて、プロジェクトを担当したUI/UX事業部 デザイナー 中田なかた ひなの、マーケティング事業部 ディレクター 池田 祐菜いけだ ゆうなの話を交えながらお届けします。

左から店主の槇村 賢哉さん、ディレクター池田、デザイナー中田。


八百屋の可能性と野菜の魅力を伝えたい


槇村野菜笑店の店主であり代表を務める槇村 賢哉まきむら かつやさん(以下、槇村さん)。野菜についての豊富な知識を持っていることはもちろん、野菜を心から愛し、こだわり続ける八百屋さんです。

農家さんのもとへ足繁く通い、土にこだわり愛情をかけて育てられた「とびきり美味しい野菜」の虜になった槇村さん。そんな野菜をただ販売するだけでなく、より美味しく愉しんで食べてもらうための手段として、レストランやケータリングなどの事業を展開しています。

仕入れて販売するだけでは発生してしまう食材ロスも、これらの事業を通じて限りなくゼロに。野菜を愛するからこそ、八百屋という枠を超えた取り組みを行っています。

レストランではメニューで使用している野菜の販売も。八百屋ならではの取り組みです。


課題は「他との違い」が見えないこと


八百屋でありながらさまざまなアプローチをし続ける槇村野菜笑店ですが、リニューアル前の一番の課題は「他との違い」が見えないことでした。

ひとつめは、レストランやケータリングなどの事業が前面に出ており八百屋であることがうまく表現できていなかったこと。ふたつめは、槇村野菜笑店の「特別な野菜」というものが何であるかを伝えられていなかったこと。

「野菜にこだわったレストラン」や「特別な野菜=無農薬・無添加」というイメージが先行してしまっており、これでは他との違いはもちろん、槇村野菜笑店の取り組みや価値を伝えることができません。

槇村さんが直接農家さんに赴き選び抜いた、とっておきの野菜。

槇村野菜笑店の唯一無二の魅力や価値をどのように定義し、どのように伝えていくべきなのか。それが今回のプロジェクトでもっとも重要視したポイントです。


槇村野菜笑店「らしさ」を見つめ直す


ヒアリングを進めるなかで槇村さん自身から出てきた「特別な野菜」「NEO八百屋」というワード。槇村野菜笑店らしさを定義する上で、この2つの言葉をしっかりと深掘りすることが重要だと考えました。

また、これらの言葉だけでなく、ビジョンや野菜に対する想い、ひいては店主である槇村さん自身が一体どういう人間なのか?というところも含め、プロジェクトメンバーで議論を重ねていきました。

コンセプトワーク資料の一部。クラウドファイルを活用しプロジェクトメンバーで同時に作業・議論をしながら設計を進めることで、ミーティング時以外でも密な連携が可能に。

「特別な野菜」と言われても何がそんなに違うのか、はじめの方は理解できませんでした。実際に槇村さんにお会いしてお話を聞いたり、レストランで食事することで理解できた部分が大きかったです。きっとユーザーも同じ気持ちなのだろうと思い、どうしたら伝わるのか、何が一番刺さるのか、初心の感覚を忘れずに考えることを意識しました。(中田)

1. “槇村さんが”選んだ野菜こそが「特別」

私たちは最終的に「特別な野菜」とは「”槇村さんが”選んだ野菜」だと定義しました。
店主である槇村さんが日本各地の農家さんをまわり、自然を知り尽くした農家さんによって、土壌にこだわり、そして愛情をかけて育てられた野菜を選び抜く。「槇村さんに売って欲しい」という農家さんがいるほどです。

槇村さんと農家のみなさん。

そんなとびきりに美味しい野菜を、一番美味しい時期に、一番美味しい調理法で食べさせてくれる(購入者に教えてくれる)。この体験全てこそが、槇村野菜笑店が提供する「特別な野菜」なのです。

レストランで、玉ねぎをトロトロにして味付けは塩のみ、という玉ねぎのスープを頂いた時が一番衝撃的でした。「本当に塩だけ?!」と今でも疑いたくなるほど、味がしっかりしていてとにかく美味しくて。素材の味を活かす、ということがどういうことなのか、その「素材の味」自体がしっかりとある野菜が選び抜かれているんだと実感しました。(池田)

2. 「八百屋である」というアイデンティティ

もうひとつ、槇村野菜笑店を語る上で重要なことは「八百屋である」ということです。
八百屋としてこだわり選び抜いた野菜を、さまざまな形を通して提供することで、食材ロスも最小限に抑える。そのために常に方法を探究し、進化しつづける槇村野菜笑店。
事業の形はさまざまですが、そこには「野菜の素晴らしさを伝える」という意志と「八百屋である」というプライドが常に存在しています。

コンセプトワーク資料の一部。言葉の意味を丁寧に定義し、どのような伝え方をすればユーザーに届くのか順を追って考えていきます。

サイトを訪れた人に対して「八百屋なんだ」という驚きと読後感を与えるということも、槇村野菜笑店らしさを表現する上で重要なポイントだと考えました。


確信を持ってお店に来てもらうための設計


槇村野菜笑店らしさや伝えたい価値が定まったところで、ユーザーの体験フローを設計していきます。
今の事業領域から、ターゲットは大きく2つ、一般ユーザー(レストラン/野菜購入)と法人(ケータリング/卸)に分けてペルソナを策定。それぞれどういったインサイトを持ち、どのようなアプローチをすることで予約/購入/問い合わせに繋がるかを検討します。

設計資料の一部。一気に作り込まずにラフな状態で議論をして精度を上げていきます。

(店舗の立地や、ディナーは完全予約制であること、普通のレストランやケータリングではなく「野菜にこだわっている」という特色などから)なんとなくで「予約しよう!」とはなりにくいだろうと考えました。そのため、ここなら美味しい野菜が食べられる、という確信を持った上で予約ができる体験フローの設計が必要でした。(中田)


意外性で「八百屋」を印象づけるためのクリエイティブ


らしさ・価値の定義や全体の設計を行なった上で、最終的にクリエイティブへ落とし込んでいきます。
一般的に「八百屋」というと明るい印象で、一方で南青山にある店舗は大人っぽくシックな印象です。この2つのイメージのギャップを効果的に使うことで意外性を打ち出したいと考えました。

“明るくて親しみやすい→シックな店舗”のギャップなのか、”シックでかっこいい→実は八百屋”のギャップなのか、どちらの方がより効果的か議論を重ねた結果、より「八百屋だったんだ」という驚きが残る後者を採用しました。

メインビジュアル動画は、「槇村さんが選んだ野菜」がお客さまに届くまでの流れを演出。槇村さんの笑顔で人柄を印象づけます。
全体のトーンは店舗のイメージに近いシックなものに。農家さんとの関わりを見せながら槇村さんのことを知ってもらった後に事業を見せる流れで構成されています。

かっこよさが際立ちすぎて入りづらく感じてしまうことは避けたいと思いました。「かっこいい(シック)」と「親しみやすさ」の塩梅は悩ましかったですが、店舗に合わせた間接照明のような表現や、写真の色味(料理や野菜のカラフルさ)、槇村さんの明るい人柄が伝わる動画や写真でバランスをとるように意識しました。(中田)


今後の運用を見据えた提案


今回のコーポレートサイトは、ノーコードツールのSTUDIOを使用して制作しています。
常に新しい挑戦をし続け、事業を展開し続けている槇村野菜笑店の変化スピードを考えると、その変化に対応できるようなサイトであることも重要な点でした。槇村さんご自身で更新ができ、発信したいことをタイムラグを出さずに発信し続けられることを鑑みた上での選定です。

ソニックジャムが常に伴走し続けることも理想的ですが、このようにクライアントの希望や要件に合わせて最適な提案・制作をすることも大切であると考えています。


今回初めて撮影からサイト制作まで一貫してやらせてもらって、槙村さんと直接お話しながら一緒に作り上げられたことがとてもいい経験になりました。
メインビジュアルの映像やページ内の写真にも注目してみてほしいです。槙村さんの熱いブログもぜひ読んでみてください!何より「美味しそう!行ってみたい!」と思ってもらえたら嬉しいです。(中田)

中田さんと何度もディスカッションを重ね、悩み抜いた"槇村さんらしさ"をTOPに込めました。物語のように槇村さんの人物像や"特別な野菜とは?"の解をここに込めたので、その魅力が少しでも多くの方に伝われば幸いです。
お店で配布されるショップカードも一緒に作ったのですが、Webサイトのデザインとリンクしていて個人的にお気に入りです♪(池田)




マガジン「Behind the SJ Works」ではソニックジャムが担当したクライアントワークの過程や裏側をご紹介しています。


ソニックジャムでは、WEBサイト制作を通してお客様のブランドの本当の価値を理解し、かたちにすることを得意としています。
以下のような課題の解決をサポートいたします。

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