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新規領域のUXリサーチで直面した4つの問題と改善

こんにちは。STORES でプロダクトマネージャーをしています、ソネダイスケです。1年ぶりの記事です。今回は新規領域におけるUXリサーチに関する実体験ベースでのお話をしたいと思います。

想定読者

  • これから新規領域のUXリサーチを行っていくPM・デザイナー・リサーチャーの方

  • とりあえずUXリサーチに興味ある人

この記事では 、今後PMやデザイナー、リサーチャーがUXリサーチをする際の参考になればと思い執筆しています。
もっとこうしたらいいよといったご意見やアドバイスも大歓迎といったスタンスで書いているのでコメント等もお待ちしています。

※記載する情報に関しては一部デフォルメしてお届けします。

それではレッツゴー。


STORES の現在地

まず、前提としてSTORES の現在地をお伝えします。
STORES ではJust for funをミッションとして、お店のデジタル化をまるっとサポートするために現在、5つのプロダクトを提供しています。

どのようなプロダクト開発においてもプロダクトディスカバリーが重要であるのは自明ですが、STORES でもプロダクトディスカバリーを重視する理由としては、以下の点があります。

・店舗ビジネスにおけるフロント業務をまるっとサポートしており、プロダクトとしてカバーすべき業務範囲が多い。
・既存オーナーさんは個人オーナーさんからエンタープライズのオーナーさんまで幅広く存在し、新規オーナーさんにおいても提供できるターゲットが幅広い。
・ターゲットの多様性により、各プロダクトおよび機能が持つユースケースも多岐にわたっている。

今後STORES が持つそれぞれのプロダクト間のクロスユースを促進しつつも、よりTAMを拡大していくために、既存オーナーさんに提供する価値を高める機能開発と並行して、新規領域に関するリサーチを進めています。

リサーチ時の4つの問題と解決策

リサーチを進めていく中で、一番重要となるのは顧客の声です(当たり前)。一次情報となる顧客を観察し、捉え、洞察に変換する精度が高くないとリサーチを成功に導くのは難しくなっていきます。
リサーチを進める中でもいくつかの問題が発生しましたが、本記事では4つに絞って原因、解決策とともに記載します。

1) ディスカバリーサイクルが回らない問題

起こったこと

  • リサーチクエスチョンの発生タイミングで設計→実施→分析のサイクルを回していたが、リズムが作れず迅速に仮説検証を進められない。

原因

  • 各メンバーが他業務を行いながらのプロジェクトであったため定期的な時間の確保が難しくなっていた。

  • いつまでに何を明らかにするかを明確にスケジューリングが行えていなかった。

やったこと

  • スプリントサイクルをもとに回す

    • 他メンバーの発案でリズムをつけるために開発サイクルのようにスプリントサイクルで進めました。プランニングとレトロスペクティブを同じmtg内で行ったり等細かい部分は変更していますが、思想はスクラム形式を取り入れています。Sprint Planningを含む具体的なリサーチサイクルの概念図は以下です。

実際のリサーチサイクルの概念図


2) リクルーティング難航問題

起こったこと

  • 既存対象者が少ない中でのリクルーティングに難航した。

  • SNSでの数百件のDMアタックや、オフィス周辺のターゲットオーナーさんにビラを配布したりしたが、インタビュー目標件数に到達しなかった。

原因

  • 関係性がないオーナーさんに趣旨をご説明した上でインタビューを受けていただくようお願いしたが、営業だと捉えられてしまった。

  • 対象オーナーさんは多忙な方が多く、金銭的なインセンティブのみではインタビューに繋がりずらかった。

やったこと

  • 取れる選択肢を活用する

    • 今回では社内の資産を活用しました。社内メンバーのご紹介やSTORES の他のプロダクトを利用しているオーナーさんへアプローチすることでターゲットとなる層へのリクルーティングが実現できました。(エフェクチュエーションの法則における、Bird in Handの原則を利用できた形となりました。)

  • 金銭的なインセンティブ以外の形でリクルーティングする

    • セールスに近い形で金銭的なインセンティブ以外の価値を訴求する形でリクルーティングを行いました。(正直あまり効果は得られなかったので訴求方法は改善していきたいです)

3) ユーザーから聞き出せない問題

起こったこと

  • 想定通りにインタビューが進まず、計画していたインタビューガイドとは異なった形で脱線する

  • 結果、表面的な所見しか得られない。

原因

  • 半構造的なインタビューに対して構造的に進めてしまう

  • あれも聞きたいこれも聞きたいと質問数が多くなってしまう

  • 沈黙を嫌ってインタビュアーが話しすぎる

  • 顧客に「行動」ではなく、「意見」を聞いてしまう

やったこと

  • どんなに作り込んでも質問は変わるので、順序を含めて「仮決め」でOKとする

    • 書籍: ユーザーの「心の声」を聴く技術でも記載されていますが、半構造的なユーザーインタビューではどれだけインタビューガイドを作り上げてもユーザーさんの反応によって質問は変わり得ます。そのため質問に関してはあくまで「仮決め」であるという形にしておくのが大事のスタンスで進めていきました。

  • リサーチクエスチョンだけはピン留めする。最大3つに絞った上で、関係者各所で認識を合わせる。

    • 一方焦点を絞ったリサーチクエスチョンだけはピン留めしておかないと脱線をしてしまいます。時間にもよりますが、1つのインタビューに対してをリサーチクエスチョンを3つにまとめられるくらいの分量で抑えるように考えていました。

    • また実際に自分が設計者だがインタビュアーでないことも考えられます。インタビュアーだとしても議事録は別の方にお願いすることもあります。そのような場合を考慮して、関係各所に対してリサーチクエスチョンの認識を合わせる工程は挟む必要があります。

  • 沈黙に怯えずに待つ。

    • インタビューにおいて沈黙の時間は怖いです。沈黙を打ち破るべくインタビュアーが話してしまいたくなります。ただユーザーさんが言葉を発してくれるのを待つのを怯えなければ、インタビュアー自らが話してしまうよりも間違いなくより良いインサイトを得ることができます。

      • どれだけ待つんだろうかと思う方もいるかと思いますが、以前羽山 祥樹さんのインタビュー動画を実際に見る機会があり、これだけ相手のことを待つんだと実感したことがありました。そこから意識するようになった実体験を踏まえると、インタビューが上手な方のインタビュー動画を見て真似することが1番の近道なのではと考えています。

  • 顧客の「行動」に注目してインタビューを進める。

    • インタビューに集中すればするほど「意見」と「行動」を分けてヒアリングすることが難しくなってきます。もちろん「意見」も大事ではありますが、ユーザーインタビューにおいては「行動」として表出する事実を観察することが最重要なため、「意見」ではなく「行動」に着目してインタビューを深掘って行くことが大切です。(10xの矢本さんのblogに書かれている以下の文章が好きなので引用として載せておきます。)

ユーザーは自分の欲しいものを正しく理解したり、言語化することはできない。 だからこそ観察からスタートすることが重要だ。

10xなプロダクトを創る

4) 分析が不十分問題

起こったこと

  • インタビュー結果から課題・提供価値の抽出が表層的な形に止まってしまう。

    • 出した課題・提供価値と一次情報であるインタビュー内容との紐付きが弱い

原因

  • その場の議事録をもとに分析を進めてしまう。記憶に残る知見をもとに分析を進めることで、重要な知見やニュアンスの一部が失われる。

  • バイアスの影響で、実態と異なる解釈が生じてしまう。

  • インタビューをすればインサイトを得られると思い込んでいる。

やったこと

  • 録音しているインタビューを発話録として書きおこし、一次情報をもとに話す。

    • 人間の認知機能の特性上、議事録を取る際にもバイアスがかかった形で書き起こされるため、マスタデータとなり得る発話録を書き起こしておくことが重要です。KA法を取り入れるのであれば尚更です。

    • 書き起こしには時間がかかるため、Whisper を使って自動化していました。

  • インタビューはインサイトの「ヒント」を得られる場であることを認識しておく。

    • インタビューをすればインサイトは落ちてくると考えがちですが、インタビューだけでは落ちてこないです(断言)。あくまでインサイトの「ヒント」が得られるだけであるというマインドセットを持つことでインタビューをやって終わりではなく、インタビューが仮説を検証するスタートラインであるという気持ちにさせてくれます。

まとめ: 基本に忠実に

UXリサーチに関しての4つの問題と改善点を記述しましたが、多くはにUXリサーチに関する書籍上に記載されており、基本と呼べるものに帰着しています。何より基本に忠実にインタビューを遂行することだけでも十分に難易度が高いと日々感じます。

一気に全部意識すると本末転倒になってしまうこともあるため、とりあえず以下を意識すると上手く進むのではと個人的には考えています。

・リサーチクエスチョンを「ピン留め📌」する
・顧客の「意見」ではなく「行動」を捉える
・インタビューはインサイトの「
💡ヒント」を得る場であることに留意する

インタビューに関しては「わかる」と「できる」に大きな差があり、毎回学びと反省が残るものではありますが、引き続きインタビューを続けてユーザーの解像度を高めていきたいと思います。

最後に

今回はリサーチにおけるN=1の進め方とインタビュー時に起こった実体験をお届けしました。
ここまで書いた中ですが、全てが上手くいったという実感があるわけではなく、これからも日々学び、より良い手法を取り入れていきつつ継続していきたいと思います。(Continuous Discovery Habitsにもあるように、何よりプロダクトディスカバリーを継続していくことが重要だと考えています。)

今後UXリサーチを行う方にとって何か実りになるものが本記事に1つでもあると幸いです。

【最後の最後】

恒例の採用宣伝です◎
24年以降はより「お店のまるっと」を実現するために、別々のプロダクトが連携しダイナミックに変容するフェーズになっていきます。事業としてもプロダクトとしても割と今が面白いフェーズにあるので興味ある方はカジュアル面談から応募お待ちしています〜。僕に連絡していただいても無問題です(FacebookでもXでも)。

それではまた〜。

※この記事はSTORES Advent Calendar 2023 の28日目の記事です。

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