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2013年にUnity Japanに入社した頃【2010年代のUnityイベントマネージャー回顧録 vol.9】

6/11に電ファミニコゲーマーさんから元Unityの大前広樹さんと現Unity Japanメンバーの方々とのインタビュー記事が公開されました。記事で語られている(独立愚連隊時代からのw)元Unity Japan社員としてはなかなかフラットな目で読めないのですが、面白い記事になっているんじゃないかと思います。

思い出深いエピソードも散見されたので、今回は公開して差し支えのない範囲で、記事を読んで思い出した話などを書いてみようと思います。

僕のUnity Japan入社

僕がUnity Japanに入社したのは2013年の1月で、記事にある5人の初期メンバーにフィールドエンジニアやアドボケイトとして活躍されていく山村さん、ユニティちゃんの生みの親の1人でもありユニティちゃんシェーダーやProject TCC等の開発に携わる小林さんとほぼ同タイミングで入社した8人目でした。

2013年当時のUnity Japanオフィス

電ファミさんの記事でも触れられているとおり、当時のソフトウェアとしてのUnityの普及はまだ黎明期~勃興期といった感じで、今でこそ何千人のスタッフがいますが、当時の社員数は全世界で300~400人くらい、そのほとんどはデンマークのコペンハーゲンオフィスという構成でした。

僕がUnityに入ったきっかけは非常に些細なことで……、2009年から開始した自転車世界一周の旅を2012年に終え、帰国して就活をしていた時に、Unity Japan初期メンバーの1人でセガ時代の同僚であった伊藤 周さんがTwitterで僕のことをツイートしていたんですね。

確か「会社を辞めて旅に出ると聞いた時は人生棒に振る気かと思ったけど、ブログ書いて頑張ってんな~」といった一言でした(僕は既に帰国していましたが、ブログではまだ旅行中の話を書いていました)。

たまたまそのツイートを見かけて、DMで実はいま就活してるんですよと声をかけたら「ちょっと昼メシでも食べながら話さない?」と誘われました。当時の伊藤さんの職場、つまりUnity Japanのオフィスは六本木一丁目駅で、僕が住んでいた地域の最寄り駅から電車で1本だったのもあり、翌日さっそくご飯を食べに行ったところ、Unityのイベントの仕事をする人を探しているという話をされました。

六本木一丁目のアーク森ビル

「ゲーム開発やプランナーの経験があって、イベントの運営や企画や制作進行まわりを担当できる人を探してるんだよね。やらない?」

折しも自分の旅行終了記念のトークライブイベントを企画・準備している真っ最中だったので「いいじゃん、話を通しておくから面接に来てよ」と誘われたのが確か金曜日。翌月曜日にリクルートスーツを着て面接に赴いたというわけです。

リクルートスーツを着て出社したのは後にも先にもこの時だけでした

面接は会議室ではなくオフィス内の執務スペースで行われ、伊藤さんが後ろに控える形で豊田 信夫さん、大前 広樹さん、高橋 啓治郎さん、田中 洋平さんと初期メンバー全員 対 ぼく1人という、今思うと凄まじいメンバーでの面接でした。

面接を受けた場所

電ファミさんの記事にも書かれていて笑ってしまうのですが、これは僕も言われました。

じつは、Unity Japan立ち上げ時の2012年ごろにはここまで長く続く会社になるとは思ってもいなかったんです。

高橋さんを誘ったときにも「この会社は3年くらいでなくなると思うけど、来ない?」っていう話をしてたんですよ(笑)。𥱋瀨さんにも似たような話をしたような気がします。

出典:電ファミニコゲーマー

3年じゃなくて「半年くらいでいきなりなくなるかもしれないけどそれでもいい?」と3回は言われましたねw 実際に吹けば飛んでしまうような規模でしたし、本社やアジア各地の支社も組織体制の変化が続けられていたので、本当にいつなくなってもおかしくないような時代が数年は続きました。

Unite Japanとインディーズゲームフェス

最初の大きな仕事は、技術カンファレンスのUnite Japan 2013を開催せよというものでした。1月入社でUniteの話を切り出されたのが1月下旬頃、イベント開催は4月中旬でWebはおろか会場も運営会社も白紙の状態という、今思うと凄まじいブン投げ……じゃなかったスピード感でのプロジェクト進行でした。

Unite Japan 2013の会場となったベルサール汐留。参加者数は約850名/日で3トラック制、2日間
イベント運営会社さんやPR関係の方にも大変お世話になりました

Unite Japan 2013が終わって少し経ち、TGS(東京ゲームショウ)でインディーゲームのイベントを企画・開催せよという話が持ち上がったのが6月末頃だったと記憶しています。

「TGSでインディーのブースを初めて作るんだけど、どうすればいいか分からない」と相談されたのがきっかけでした。

話を聞いてみたら、インディーゲームを並べるだけの形をイメージしていて、「それじゃお客さん来ないんじゃない?」「うちで良ければ引き受けます」という流れで関わるようになったのですが……その内容で揉めて大変でした。

出典:電ファミニコゲーマー

記事の「うちで良ければ引き受けます」には苦笑いというか……w

TGSは9月なので準備期間は3ヶ月足らず、予算も企画内容も白紙の状態で、Unite後の他の仕事に手をつけつつ、間に(僕にとっては初の)GTMFやCEDECの出展活動があるという中での、これも中々に凄まじい無茶振り……じゃなかったスピード感でのプロジェクト進行で、まあ一言で言えば大変でしたw 進行中のことはあんまり覚えていないです。

2013年当時は「インディーゲーム」という言葉もまだ輪郭がふわふわしていた時期でしたし、ゲーム実況カルチャーも黎明期~勃興期で、企業側が実況プレイヤーに依頼する形の、俗に言う「企業案件」やガイドラインといった概念もほとんどなく、お客さんに対してもご協力いただく関係各位の皆さんに対してもどう対峙・説明していくのがベストなのか模索する中でのプロジェクト進行でした。今思うと的外れな企画もあったと思いますがすみません、ご容赦ください!

なんとか企画概要書を作って、ご協力いただけるイベント運営会社、実況プレイヤーの方々やマネジメントをされている事務所、ご出演いただく著名なクリエイターの方々やゲーム開発・IT系の企業様に相談やご挨拶をしつつ、イベント内容やWebを固めていきました。

念のため書いておくと、さも自分が全部やりましたみたいな形で書いていますが、大前さんをはじめUnity Japanのメンバーほとんどに何かしらの形でご協力いただいていました。文字通り全員野球ですね。

Unityとしては「Unityを使うとすぐにゲームが作れる」ことを知ってもらいたくて、「料理の鉄人」のオマージュで「ゲームの鉄人」という企画も重ねて実施しました。

60分で2本のゲームを作り、品評者に体験してもらい勝者を決めるという企画なんですが……

出典:電ファミニコゲーマー

「ゲームの鉄人」も面白い企画でしたねw これは書いて差し支えないと思うので書きますが、ご協力いただいた会社がオートデスク株式会社さんなんですよね。うろ覚えなんですがUnityチーム VS オートデスクチーム、みたいな演出で実施したと記憶しています。

UnityとオートデスクがTGSでゲーム実況プレイヤーと一緒にステージで即興ゲーム開発対決をする、ってもう二度と実現しないんじゃないかと思います……あったら今でも面白いと思うんだけどな~。まあ、これが記事でも言われている「大前 広樹さんの会社」ならでは感だったのではないでしょうか。

その時に参考にしたのがマクドナルドの藤田田【※】方式でした。ブランドと理念だけは一緒。でもあとはこちら側でやる。これが一番いいやり方だと思って、ほぼ独立愚連隊みたいに動いていました。

※藤田田氏:日本マクドナルド、日本トイザらスの創業者。米国マクドナルドから日本展開の話を持ちかけられたとき、「社長は日本側が務めて米国側は経営に一切口を出さない」「米国からの命令は一切受け付けない」といった条件を提示した。

出典:電ファミニコゲーマー

当時の映像はミニDVか何かで記録が残っていたような……。Unity Japanオフィスの倉庫かキャビネットの奥深くに眠っているかもしれません。

こういうイベントの記録は、ゲームやコンテンツと違って記録がほとんど残らないのでちょっと淋しいものがあります(そう思ってこのnoteではおじさん回顧録のような話を記録していければと思っていますw)

2014年の「現代用語の基礎知識」に掲載された注目語

少し先の未来

……と、まあ入社1年目から大変だったのですが、Uniteもインディーズゲームフェスも大前さんから提示された1つの方針があって、それは「少し先の未来を見せるコンテンツにする」ということです。

今はまだ輪郭の定まっていない技術やカルチャーなんだけど、1年後か数年後には当たり前になっていくかもしれないものを、いち早く取り入れてやってみようぜ!お客さんにワクワクしてもらおうぜ!ということは、事あるごとに繰り返し仰られていました。そういう意味ではすごくゲーム開発の現場的な思想が根底にあったかなと思います。

まあ、その後を考えれば本当にラッキーな入社だったと思います。あの日、たまたま伊藤さんのツイートを見かけて、たまたまDMしたことで僕の人生は大きく変わっていったと思いますし、人生の転機というのはそういうものなんだろうなとも。

(記事協力:谷川 敬章)


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