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【オープン社内報#11】文化複合施設をつくる(の前に)

*この文章は日販グループ、「ひらく」のメンバーに向けて書いたものですが、オープン社内報としてnoteに掲載しています。

今日のテーマは「文化複合施設をつくる(の前に)」です。

 いつも考えていることがあります。それは、文化とは何か、です。文化を担うメディアを商売とする僕たちでさえ、文化をきちんと言語化するのはとても難しいことだと感じていますし、僕はふだんから「文化的」というワードを安易に口に出さないようにしています。社会学や文化人類学を学んできた人でない限り、この「文化とはなにか」「文化度が高いとはどういう状態か」を考え、言語化するのはとても難しいこと。

 でも、まずは自分なりに言葉にすることが手がかりになりますから、さっそくはじめてみましょう。で、ですね、いきなりですがこちらの記事をご覧ください。

 全国の自治体と企業をつなぐ公共R不動産のHPに「逆プロポーザル」記事を掲載いただきました。ふつう自治体が行うプロポーザルとは、自治体側に動機があり、それを実現するための民間活用として公募要項が出ます。「新しい図書館をつくる」「まちづくり計画を策定する」などです。

 対してこの逆プロポーザルは、「僕たちはこれがつくりたい。これができる」という企業側の立候補に対して、自治体が「それならウチでやってもいいよ、やろう!」と手を挙げるというもの。この順番で企業と自治体がマッチングすることで、オーダーメイドで物件や構想を検討することができます。過去はイベントとしてやっていましたが、今回からウェブ連載の形に変更となり、僕たちがその第一回目として掲載いただけることとなりました。

 僕たちの提案の大きな軸は「地域にひらかれた文化複合施設をつくりたい」というもの。地域に/ひらかれた/文化/複合/施設、です。自分が提案しておいてなんですが、僕はそれがどんな場所なのか、まだイメージできていません。なぜなら、手を挙げてくださる地域ごとにまったくアウトプットが変わるからです。

 そもそも、まちには様々な設備・施設がプリセットされています。図書館や公民館といった市民活動や支える施設。学校などの教育施設は基本的な教養を学ぶため。美術館などの芸術鑑賞を提供する場。病院やケアサービスなど生きる前提としての砦の施設(先日、腎結石で夜中の救急外来へ。ほんとうに本当に痛かった。夜中に対応してくれるお医者さま、ありがとうございました)。

 まちには様々な役割の施設や特性があり、それらを有用に活用しているとき、市民にとってそこは「住みよいまち」となるはずです。渋谷区の住民と熱海に住む人では、まちの使い方が違うはず(ですよね)。

 記事の中では出ていませんが、僕が大切にしていきたいのが「特定のコンテンツに依らない場所にすること」「集う人たちが知識の多寡によるマウンティングが行われないこと」です。何か新しいものに出会うことと、それを深めていくことは、実はまったく違う筋肉を使います。

 僕はカルチャーが大好きですが、仕事として「特定のカルチャーを趣味化できるように楽しめる施設」をつくることにはあまり興味がありません。それよりも「面白がるチカラ」そのものを習慣化できたり、自分のご機嫌が自分で取れるような機会がセットされている場所をつくることを目指しています。(もちろん、それが結果的にカルチャーを紹介するものになることもあります。)

 例えば、セロニアス・モンクのファンと阪神タイガースのファンは嗜好が違うだけで、そこに優劣はありませんよね。それは「海辺のカフカ」に出てくる甲村記念図書館のように、文化芸術活動への深い尊敬と知識のひけらかしをしない姿勢が両立している状況であるべきで、少し前に書いてきた「モチベーションインフラ構想」や「マイクロコンプレックス」などの考え方もここに収斂されていきます。

 簡単に方程式化すると、こうなりそうです。

めいめいが好奇心の種を見つけられるためのたくさんの選択肢を用意すること

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それを面白がるための手法が提供され、サポート環境やコミュニティがあること(記事中ではそれを「インタープリター」と書いています)

=「自分なりの文化度が高い状態」を保てる。

  というのが僕の仮説です。今回実現したい文化複合施設ではこの方程式を実装していきたいと思います。まち全体を俯瞰して「文化度の高い街を作ろう」なんて上から目線はせず、地べたの目線をもってこのプロジェクトを進めていきたいです。

 最後にお願いとなりますが、全国のエリアマーケッターのみなさんをはじめ、自治体とやりとりがある方や、「この街のこの場所、こんな使われ方すればいいのに」という想いのある方、ぜひこの記事を紹介していただいたり、僕になにか情報をいただければ幸いです。日販グループのリソースを活用すれば、すごく良い場所ができるはずだと信じています。

 最後まで読んでいただきありがとうございます。
 今日もがんばりましょう。

染谷

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今週の「うれしい」

近所を散歩していたら、ふわっとキンモクセイの香り。月見バーガーは2回食べたしキンモクセイも薫るし、いよいよ秋ですね。枯れる前はずいぶん甘ったるくなっちゃうので、いまくらいの香りが本当に最高です。

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