やさしさに包まれたなら
先日、学校からの帰り道でのこと。
その日はずっと雨が降っていたのに、帰る時間になってぴたりと雨が止んだ。
分厚い雲の隙間から、太陽の光が照らしつけている。
雨が上がった時、植物についている露が光を受けて輝く様子はとても美しい。
道の脇に咲いている花、何気ない雑草…植物がキラキラとしている様子がたまらなく好きだ。
ふと、いつもの帰り道なのに、いつもとは違う「何か」を感じた。
甘くて、とても良い香りがする。きっと、花の香り…。
私はキョロキョロと香りの原因を探してみる。
そしてその香りは、道路脇に咲いていた白い花によるものだった。
その花は「クチナシ」だった。
今までクチナシの香りを意識して嗅いだことがなかったため、これほどまでに素敵な香りがするとは思ってもいなかった。
爽やかというよりも、甘くて、ふんわりとしていて…
うまく表現するのが難しいが、その花の優しい香りは私を虜にした。
その香りから離れてしまうことを残念に思いつつも、ずっとここにとどまるわけにもいかないので、私はその場を後にした。
クチナシの香り、クチナシの香り…と頭の中で何度も唱える。
妙に聞き覚えのあるフレーズだ。
なんだったかな…
雨上がりの庭で くちなしの香りの やさしさに包まれたなら
あ、これだ!
松任谷由美さんの「やさしさに包まれたなら」。
なるほど、と私はイヤホンをつけ、その曲を再生する。
音楽と、クチナシの香りと、雨上がりの帰り道の情景がひとつに重なって…
私は、ほんとうに「やさしさに包まれた」と感じた。
なんだか、目に映る全てのことがメッセージに見えてきた…ような気もする。
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