人気のない愛着不全|しかし、愛着障害より10倍過酷

立身出世の物語は人気があります。少年マンガは、下から成りあがっていく物語に人気があります。そういう定番に乗っかっているのが愛着障害です。ドラマにもしやすい。人生は過酷なのですが、当事者はそれどころではないのですが、他人から見たら目を離せない。

それに比べて、愛着不全は散々な描かれようです。なぜなら脚本を書く人の力量が相当要求されるからです。力のある人でないと、つまり村上春樹くらいでないと、愛着不全な人は描けません。

たぶん愛着不全なのですが、それを認めることにとても抵抗があります。 こういう気持ちの相談者さんっていますか? どうして認めたくないのでしょうか…

高間しのぶの「質問箱」より

※今回の記事はラジオでも視聴できます。テキストを見ながらどうぞ▼

※この記事は、Twitterの質問箱に来た質問を深掘りして回答したものです。

■愛着不全はカッコ悪い?

愛着不全を認めたくない気持ちの相談者さんは多いです。批判覚悟で言うと、愛着不全は「人気」がありません。理由は、愛着不全の言動を見ていると、メンヘラに直結するからイヤなのではないでしょうか。

しかしそれは、人々が、相談者含めて、表面的な印象操作を(無意識的に)行っているに過ぎません。

どういう操作か?それは「愛着障害はカワイソウだね」という印象操作です。これは治療者側にも、そのような印象がある節(ふし)があります。
ですから、愛着不全の方が、愛着障害の方に対して、そんな負い目(?)を持っているのも不思議ではありません。愛着不全はカッコ悪いと思っています。

■愛着の治療を登山に例えると

愛着障害と愛着不全、この2つを治療過程を登山に例えると、

  • 愛着障害は、1回のエベレスト登山

  • 愛着不全は、富士登山100回(ときどき冬山あり)

こんなふうに言えそうです。

◇登山の過酷さの違い

ここでエベレストと富士山登山の違いを大まかにご紹介しておきます。

エベレスト登頂は、3週間ほどかけてゆっくり登っていきます。天候の過酷さもありますが、体を高山に慣らすために、ある程度登ったら、また下山して、また登ってを繰り返して、ベースキャンプを少しづつ上げていきます。こうやって体を高山に慣らしていきます。これを怠ると、深刻な高山病になって、肺や脳機能が低下し、死に至ります。高山病とは、悪寒や嘔吐ばかりでなく、意識障害による幻覚も現れます。発狂状態になって転落死することも少なくありません。

また下山も気を抜けません。登頂の歓びで気が抜けて遭難者が続出する「デスゾーン」と呼ばれるポイントもあるくらいです。(世界第二位の峰であるK2のほうが技術的には難しいと言われています)

一方、富士登山は、7時間(一般的な吉田ルート)で登頂に付きます。下りは4時間です。登りの山小屋も完備しています。これは夏山の場合で、冬山期(9月~翌年6月末まで)は閉山します。氷に閉ざされ強風が吹く死の世界になります。

■愛着不全の治癒は、愛着障害より10倍過酷

こんな感じなので、エベレストのほうがカッコいい印象があるのではないでしょうか。しかし、富士登山は100回なので、時間もかかりますよね。途中で止めたくなる愛着不全の方の心情も十分に理解できます。

エベレストは、生きて帰れるかどうかわかりません。登っても下山中に遭難する人は少なくありません。デスゾーンも待ち構えており、発狂寸前まで追い詰められてしまうのは、愛着障害の人のリスクそのものです。

デスゾーンや発狂という表現は比ゆであり、治療過程ではそれだけ死に近い稜線を歩いているということです。発狂リスクは、母親へのファンタジーが崩壊するときに一番高まります。

一方、富士登山は夏山だと簡単かもしれませんが、場合によっては軽い高山病にもなる高さです。意外な盲点のある登山です。それを100回繰り返し、ときどき冬山もある、となると、愛着不全登山も並大抵な気持ちではできません。途中で止めたくなるでしょう。

同行するシェルパ(カウンセラー)も、愛着障害、愛着不全、どちらにしても、それ相応の力量が必要です。それがないと、愛着障害の場合は発狂リスクが、愛着不全の場合はカウンセリングの中断が増大します。

登山する時間をみると、エベレストは70時間、富士山は7時間ですね。けれど、富士山は、100回登山ですので、700時間ということになります。つまり、愛着障害が治癒するまでの時間から換算すると、愛着不全の治癒は10倍の時間がかかることになります。実際、治療者の体感としては、そのくらい治療に費やしている感覚はあります。

治療者からしても、愛着不全のほうが愛着障害よりも10倍消耗するのは、実感としてはあるでしょう。

■まとめ

  • 愛着不全が人気がないのは、単なる気のせいにすぎない。マスコミの愛着不全を描く力量不足も大きい。

  • 愛着障害は1回のエベレスト登山、愛着不全は100回の富士登山。

  • 愛着障害は発狂リスク、愛着不全は中断の可能性があります。

  • だからシェルパ(カウンセラー)は、熟練の人でないと務まらない。

◇ラジオおやすみカフェ:興味が薄れる時代⇒少年マンガ(小6)。野球(高2)…詳細はラジオをお聴きください。

■他の助けを求めるのもいいでしょう

もし、あなたのカウンセラー(シェルパ)の力量が足りないと思う場合は、別のカウンセラーを探しましょう。あなたにとって良いカウンセラーはあなたの一生の財産になります。あなたのカウンセリングがうまくいきますように。

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