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自然 【詩】

自然は私を認めてはくれない
否定してもくれない
自然は私に何もしない
ただ風が吹き荒び、陽が昇り、夜になるだけだ

だから私も自然に対して何もできない
自然の中でただじっと立っていることしかできない
冷たい風を頬に感じて、空を見上げること以外に何もできない

人は人を認めてくれる
「あなたが好きだ。」と
嫌いになってくれる
「お前が嫌いだ。」と

その数が多いか少ないかで
認められたような気になる
否定されたような気にもなる

あの時の栄光が無意味なものになった気になってしまう
あの時の屈辱を晴らせたような気になってしまう

中途半端に理性があるもんだから
他人の言葉を信じ込んで
私の世界に取り入れてしまう

あれが好きだ、嫌いだ
価値がある、ない
いろんなものに対して
いろんな評価が飛び交う

「自然が好きだ。」
私がそう言うと
「ポエマーだ」「自分に酔っている」「変わっている」
これにも色んなラベルをべたべたと貼られる

他人の好き勝手な感情を投げつけられる自分すらも
自然は庇ってはくれない
それでも私は自然が好きだ

ただ海がある
ただ川が流れる
雪が冷たい
空気が澄んでいる
お日様が温かい

ふとした日常の中で
それがとても愛おしいと感じる

自然は私がどのような感情を抱こうと
人の心のように
決して変わることはない

私が自然に対して「嫌いだ。」と言おうとも
自然は素知らぬ顔で
毎日毎日変わらずに太陽を昇らせる、沈ませる

ただそこにあって
全てを受け止めて
全てを受け流す

自然を愛する人は孤独だ
肯定も否定もしてもらえないからである

承認を求める人も孤独だ
人からの評価などいとも簡単にくるりと変わってしまうからである

どんな人だって孤独だ

確かなのは評価ではなく
好きだという自分の感情だ
好きなものを好きだと思う瞬間を大切にしたい

私は自然のようになりたい
押し付けたり、他人を評価する事のない
自然に

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