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わすれもの 【詩】

上手くはいかなかったけど、不器用なりにここまでなんとか生きてきた。
そしたらいつの間にかお行儀よくいることが身についていた。
謝って、へらへらして、持ち上げて、同調して…

本音丸出しで、疑う事を知らない正直の塊であった頃の自分が懐かしい。
でもその自分は今も私の中で生きていて、時々「やってるかい?」と顔を出してくれる。
久しぶりだね、子供の頃の自分。
相変わらずいい笑顔で悔しいよ。

「どうしてあんなことされたのにあいつに怒らないの?ガツンと言ってやろうよ!」
「悲しいよぉ!えーーーん!」
「どうして楽しいのに騒がないの?一緒に遊ぼうよ!」
無邪気で、どこまでも素直で、真っ直ぐで。
屈託のない笑顔のまま話しかけてくる。

そうだね。
どうしてだろうね。
私にもわからないんだ。
でもごめんね。
どうやら社会とやらでは君のままでは生きてはいけないみたいなんだ。
ずっと待っててくれたんだね。
ありがとうね。
教えて、君は今幸せかい?

「幸せ…?んー、わかんない!でも…」
でも?
「楽しい!」

あぁ、そうか。
私は幸せばかりを考えていて
楽しいを忘れていた。
あれもこれも、全てはそこから始まってきたんだった。

「急に泣いてどうしたのさ、ポケモンごっこする…?」
あぁ、しよう。
ポケモンごっこをしよう。
たくさんしよう。
気の済むまで、疲れるまでしよう。
そしたらご飯を食べてお風呂に入って
お布団に入っておやすみしようね。

「うん!」

どうして自分のまま生きたいのに、
誰かになる事を頑張ろうとするのだろう。
どうして幸せになりたいのに、
楽しいを置き去りにしてしまうのだろう。
子供の自分はよだれを垂らして幸せそうな顔で眠っている。

今日は会いに来てくれてありがとうね。
おやすみ。

またね。

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