東京沿い街くん

東京の街を、大好きなあの人にしてみた。時間と、そこに住む人と、暮らしの中で変わり続ける「東京」の街をテーマに、写真を撮り続けている足達奈穂と、同テーマで文筆している早川遥菜が共同制作する連載。第一回目は「茗荷谷くん」です。

茗荷谷くん #7

どんなに新しいものも、 どんなに大事にしていたものも、 時が経てば少しずつ 形が変わったり、 色がくすんだりする。 それは哀しくあり、 それでいて愛しくあるものだと…

茗荷谷くん #6

色のない街にももうすぐ春が来る。 それとも、もう来てしまったのだろうか。 淡くて脆い桃色の花びらを、 わたしは、今年も、 見ることができるだろうか。 真っ赤な電車が…

茗荷谷くん #5

先を行ってしまうあなたの 坂の下の方で不思議そうに私を見つめているその目が、 わたしの不安を吸い取っていく。 いつもは届かない背丈も 坂があなたを美しい上目づ…

茗荷谷くん #4

で、どこにいきたいの。 毛布の奥から、私に問いかける声がした。 (どこに行きたいわけではなくて、) (あなたと一緒に居たいだけ、) そうなのだ、 毛布にうずくまるあ…

茗荷谷くん #3

玄関は大抵の場合開いている。今日もゆっくりとドアノブを回すと、ゴーっと、換気扇が回る音が聞こえてきた。玄関からかすかに見えるベッドの膨らみが、 あなたが寝ている…

茗荷谷くん #2

小さなアパートに向かう。 坂を下って、それからまた坂を上って、 ぐにゃりとした先にちょこんと行儀よく立っている、綺麗というわけでもない、 色気のない建物の方へ。 慣…