茗荷谷くん #7
どんなに新しいものも、
どんなに大事にしていたものも、
時が経てば少しずつ
形が変わったり、
色がくすんだりする。
それは哀しくあり、
それでいて愛しくあるものだと思う。
この街は、
そういうことも含めて素直だ。
それからもう少し歩いた先で
駅の上にまたがる橋を通った。
網の間から線路を覗いたら
沢山の石が敷かれていた。
地下に敷かれた石とは違う。
陽の光と、雨と雪とを浴び続けて
少しずつ形を変えてきた、
哀しくも愛しい、
ここに居る石たちだけの物語。
ここには、沢山の物語がある。
あなたもまた、
ここで物語を作る1人であることを、
そしてあわよくば
それは私との物語であってほしいと
私が願っているなんて、
知らない。
彼は何も言わず、紅茶を買った。
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