見出し画像

茗荷谷くん #7

画像1

どんなに新しいものも、
どんなに大事にしていたものも、
時が経てば少しずつ
形が変わったり、
色がくすんだりする。

それは哀しくあり、
それでいて愛しくあるものだと思う。

この街は、
そういうことも含めて素直だ。

画像2

それからもう少し歩いた先で
駅の上にまたがる橋を通った。

網の間から線路を覗いたら
沢山の石が敷かれていた。

地下に敷かれた石とは違う。
陽の光と、雨と雪とを浴び続けて
少しずつ形を変えてきた、
哀しくも愛しい、
ここに居る石たちだけの物語。

ここには、沢山の物語がある。
あなたもまた、
ここで物語を作る1人であることを、

そしてあわよくば
それは私との物語であってほしいと
私が願っているなんて、
知らない。

彼は何も言わず、紅茶を買った。

画像3

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?